【ボルボ XC90ディーゼル 新型試乗】ボルボさん、やっぱりディーゼルでしょ!…中村孝仁
◆ついに登場したXC90ディーゼル
ボルボがコンパクトクロスオーバーモデルの『XC40』を日本導入した時、ボルボは今後徐々にディーゼル市場から撤退していくと言って、XC40の日本導入モデルにディーゼルは設定しないと明言した。
確かにどんどん排ガス規制が厳しくなっていくと、ディーゼル車の生き残り策は難しくなると同時に、お金(開発費)もかかる。それ以上に心配なのは、ニューモデルは次々と打ち出される規制策をクリアして来るだろうが、既存車はそれをクリアできない。数年後に日本市場で現行ディーゼル車が走行できるのか?ボルボはそこを一番心配しているようで、現実的に古いディーゼル車は東京などから締め出されているという事実がある。
確かに撤退するとは言ったものの、それは開発からの…という話で、ではそれがいつになるのかはボルボも明言していないし、現に60シリーズ以上のモデルには今もディーゼルの設定がある。要は今のところ一番小さなモデルにだけ、ディーゼルを設定していないというだけの話である。今回は一番大きな『XC90』にディーゼルを設定してきたわけだが、このクルマがデビューした時からそれは既にいずれ投入することが周知されていた。
◆ようやく煮詰まった新プラットフォームの味
XC90と言えば、ボルボが満を持して開発した初のモジュラー型プラットフォーム、「SPA」を初採用したモデルである。これが日本デビューを果たしたのは2016年で、すでに3年がたつ。実はこのSPAになったXC90に最初に試乗した時、その印象は決して良いものではなかったのである。まあ主としてそれは乗り心地であって、高級車にしてしかもエアサスを使っていながら微振動が絶え間なくボディに伝わってしまうのは、いかがなものかと思ったものである。
まさか、大枚はたいて作り上げた新しいプラットフォームがダメなわけはないので、当時は「思うにこいつはまだ煮詰め切れていない印象が漂っていた」と書いていた。その後『XC60』をはじめとした主力ボルボの各モデルがこのSPAを用いて開発され、3年たった今ではすっかり初期の印象とは違うものになっているから、明らかに煮詰めの問題であったといえる。
そして今回、新しい「D5」と呼ばれる最強のディーゼルエンジン搭載車を試乗するにあたり、素の…と言うか、エアサスを用いていない横置きリーフスプリングを採用したリアサスペンションを持つモデルにあえて試乗してみた。結論から言うと、この横置きのCFRP製リーフスプリングを用いたモデルは極めて乗り心地が良く、3年前に感じた微振動などは皆無である。つまりXC90は今、ようやく完成の域に達したと感じられるわけである。
◆ボルボさん、やっぱりディーゼルですよ
これまでXC90に設定されていたモデルはすべてガソリンモデル(PHEVも含む)であり、ディーゼルは今回が初。しかもD5と呼ばれるモデルはこれも日本のボルボ・ラインナップでは今回が初である。これ以外のディーゼルはすべて「D4」と呼ばれるもので、パフォーマンスは190ps、400Nmだったが、このD5は235ps、480Nmと図抜けたパフォーマンスを持つ。
それもこれも、2110kgという重い車重に対応する為なのだが、単にパワーを上げただけではなく、ご丁寧にも極低速でもターボラグを感じさせないように、ポンプにためた圧縮エアを強制的にターボに送り込んで、タービンの回転立ち上がりをアシストする「パワーパルス」なる機構も装備されている。ただし、こいつが作動するのは条件があって、ギアは1速もしくは2速、エンジン回転は2000rpm以下など色々制約がある。
まあ、発進加速も数値上は若干向上するとは言うものの、実際に試してみたところで、顕著に速っ!と感じる体のものではない。なので、そういうデバイスを装備してスムーズな加速が出来ますよというボルボらしい一種のおもてなしなのかな?と思った程度だ。
ただそうは言ってもこのエンジン、相当にパワフルだし、何より相当に静かである。まあ、メルセデスの決定的に静かな6気筒があるので、それと比べては可哀想だし、第一あちらは6気筒でこちらは4気筒だから、バランスの面でも不利。しかし、4気筒の中では秀逸な静けさを持っていることは間違いない。
この種のでっかくて重いクルマをガソリンで走らせると、ちょっと加速してアクセルを強めに踏もうものなら燃費が途端に悪化する。しかし、ディーゼルはまあそうした乗り方をすれば普段よりは悪いだろうが、基本的にはエネルギー変換効率がガソリン車より高いから、燃費は間違いなくガソリン車よりも良くて、何より日本はディーゼルの燃料となる軽油が安い。地域性もあるが、場所によってはハイオクガソリンとの差がリッターあたり40円にも達するから、これは馬鹿に出来ない。
というわけで、XC90に限らず、ディーゼルの恩恵は顕著に受けられるはずなのである。ボルボさん、やっぱりディーゼルですよ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
ボルボがコンパクトクロスオーバーモデルの『XC40』を日本導入した時、ボルボは今後徐々にディーゼル市場から撤退していくと言って、XC40の日本導入モデルにディーゼルは設定しないと明言した。
確かにどんどん排ガス規制が厳しくなっていくと、ディーゼル車の生き残り策は難しくなると同時に、お金(開発費)もかかる。それ以上に心配なのは、ニューモデルは次々と打ち出される規制策をクリアして来るだろうが、既存車はそれをクリアできない。数年後に日本市場で現行ディーゼル車が走行できるのか?ボルボはそこを一番心配しているようで、現実的に古いディーゼル車は東京などから締め出されているという事実がある。
確かに撤退するとは言ったものの、それは開発からの…という話で、ではそれがいつになるのかはボルボも明言していないし、現に60シリーズ以上のモデルには今もディーゼルの設定がある。要は今のところ一番小さなモデルにだけ、ディーゼルを設定していないというだけの話である。今回は一番大きな『XC90』にディーゼルを設定してきたわけだが、このクルマがデビューした時からそれは既にいずれ投入することが周知されていた。
◆ようやく煮詰まった新プラットフォームの味
XC90と言えば、ボルボが満を持して開発した初のモジュラー型プラットフォーム、「SPA」を初採用したモデルである。これが日本デビューを果たしたのは2016年で、すでに3年がたつ。実はこのSPAになったXC90に最初に試乗した時、その印象は決して良いものではなかったのである。まあ主としてそれは乗り心地であって、高級車にしてしかもエアサスを使っていながら微振動が絶え間なくボディに伝わってしまうのは、いかがなものかと思ったものである。
まさか、大枚はたいて作り上げた新しいプラットフォームがダメなわけはないので、当時は「思うにこいつはまだ煮詰め切れていない印象が漂っていた」と書いていた。その後『XC60』をはじめとした主力ボルボの各モデルがこのSPAを用いて開発され、3年たった今ではすっかり初期の印象とは違うものになっているから、明らかに煮詰めの問題であったといえる。
そして今回、新しい「D5」と呼ばれる最強のディーゼルエンジン搭載車を試乗するにあたり、素の…と言うか、エアサスを用いていない横置きリーフスプリングを採用したリアサスペンションを持つモデルにあえて試乗してみた。結論から言うと、この横置きのCFRP製リーフスプリングを用いたモデルは極めて乗り心地が良く、3年前に感じた微振動などは皆無である。つまりXC90は今、ようやく完成の域に達したと感じられるわけである。
◆ボルボさん、やっぱりディーゼルですよ
これまでXC90に設定されていたモデルはすべてガソリンモデル(PHEVも含む)であり、ディーゼルは今回が初。しかもD5と呼ばれるモデルはこれも日本のボルボ・ラインナップでは今回が初である。これ以外のディーゼルはすべて「D4」と呼ばれるもので、パフォーマンスは190ps、400Nmだったが、このD5は235ps、480Nmと図抜けたパフォーマンスを持つ。
それもこれも、2110kgという重い車重に対応する為なのだが、単にパワーを上げただけではなく、ご丁寧にも極低速でもターボラグを感じさせないように、ポンプにためた圧縮エアを強制的にターボに送り込んで、タービンの回転立ち上がりをアシストする「パワーパルス」なる機構も装備されている。ただし、こいつが作動するのは条件があって、ギアは1速もしくは2速、エンジン回転は2000rpm以下など色々制約がある。
まあ、発進加速も数値上は若干向上するとは言うものの、実際に試してみたところで、顕著に速っ!と感じる体のものではない。なので、そういうデバイスを装備してスムーズな加速が出来ますよというボルボらしい一種のおもてなしなのかな?と思った程度だ。
ただそうは言ってもこのエンジン、相当にパワフルだし、何より相当に静かである。まあ、メルセデスの決定的に静かな6気筒があるので、それと比べては可哀想だし、第一あちらは6気筒でこちらは4気筒だから、バランスの面でも不利。しかし、4気筒の中では秀逸な静けさを持っていることは間違いない。
この種のでっかくて重いクルマをガソリンで走らせると、ちょっと加速してアクセルを強めに踏もうものなら燃費が途端に悪化する。しかし、ディーゼルはまあそうした乗り方をすれば普段よりは悪いだろうが、基本的にはエネルギー変換効率がガソリン車より高いから、燃費は間違いなくガソリン車よりも良くて、何より日本はディーゼルの燃料となる軽油が安い。地域性もあるが、場所によってはハイオクガソリンとの差がリッターあたり40円にも達するから、これは馬鹿に出来ない。
というわけで、XC90に限らず、ディーゼルの恩恵は顕著に受けられるはずなのである。ボルボさん、やっぱりディーゼルですよ。
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パッケージング:★★★★★
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