日産の走る実験室「リーフNISMO RC-02」に試乗…おそろしく速く、そして曲がる
◆走る実験室「リーフNISMO RC-02」に乗った!
低く平べったいスタイルの、どう見ても『リーフ』に違いないレーシングカー然とした一台だ。これ、正式名称を『リーフNISMO RC-02』と言う。
新型リーフのイメージリーダーであると同時に、日産・インテリジェント・モビリティを牽引するための技術的なEVのテストカーというのが本当の姿である。
初代リーフの「RC-01」に対して新型リーフ誕生に合わせて日産のスポーツ/レース部門であるNISMOが完成させた「RC-02」は、昨年、富士スピードウエイで開催された「NISMOフェスティバル」が走行を含めた公式デビューの地。
RC-01に対して全ての性能が上回る点に注目だ。その訳は、モーターが搭載される動力ユニットをフロントにも持つAWDだから。RC-01がモーターをリアに搭載するRWDだったのに対して、その同じEM57モーターを2機、つまりフロントにも搭載した。バッテリーは24kWhから倍以上の62kWh。パフォーマンスは100kWから240kW(326ps)にパワーアップし、トルクは280Nmから640Nmに増強!! 当然車重は920kgから1220kg増加するものの、0-100km/h加速は6.9秒から3.4秒に。最高速は150km/hから220km/hへと、強力なパワーユニットが重量増を相殺する。
袖ケ浦フォレストレースウエイのラップタイムは、パターン付きロードタイヤで1’15”86から一気に5秒マイナスの1’10”34に短縮。スリックタイヤを装着してアタックすると、チューンド『GT-R』を上回る1’08”18と、EVの存在感を強力に示す。
◆必要なモノすべてが手の内にある感覚
極めて強固なカーボンファイバー製モノコックの広いサイドシルを跨ぎながらバケットシートに滑り込む。タイトだが必要なモノすべてが手の内にある感覚のカーボンファイバーと液晶。コクピットは狭いもののドライブする事に最適な環境が整えられている。
つまり腕を伸ばせばステアリングホイールが自然に手の中へ、脚を伸ばすとアクセルとブレーキが操作しやすい位置にある。ブレーキは右足でアクセルから踏み替える事はもちろん、左足でも操作可能な様にレイアウトとペダルサイズが、これぞ「誤操作」を防ぐひとつの見本である。
ステアリングのセンター部に集約された各種スイッチの内、我々が触れていいのはR-N-Dの“ドライブモードスイッチ”のみ。よーく観察すると、その左下にある“パワーマップスイッチ”が4段階あるうちの「4」を示している。つまりこれ160kW(218ps)と最もローパワーな仕様だった。
「舐められたもんだな~!!」と旧知のNISMO関係者に嫌味を言うと、NISMOフェスティバルの時に試乗させた媒体が4WDにも関わらずスピンした!? とかで今回は止む終えずこの仕様でお願いします、と。
◆スピンするのも納得?のパフォーマンス
ドライブモードをDに回し、アクセルを踏み込むと、室内に鳴り響くギヤ音のけたたましさ。まさにレーシングマシンのトランスミッション、ストレートカットのスパーギヤのギヤ鳴りだが、ロードカーの感覚から言えばそれはただの雑音に過ぎない。しかしレーシングマシンを経験した者からすると、それはレーシングノイズ(サウンドではない)のひとつとして容認できるのだった。
加速はまさに、テスラ『モデルS』の最強「ルーディクラス」並の0-100km/h=2.6秒の瞬間加速、「ワープか!!」と思ったが意外にそうでもない点は“パワーマップ4”の影響。
特設コースのストレートで映像では134km/hと言っているが、そう言う間に速度は140km/hに達す。そこでパワーマップを「1」にした場合、速度は160km/hに跳ね上がるという。このわずかな助走距離でプラス20km/hは、感覚的に想像できない速さである。なのでパフォーマンスも半端なければ、媒体関係者がスピンした事も納得できるパフォーマンスである。
◆常人にはコントロールできない速度でも「曲がる」
惚れ惚れしたのはブレーキ性能。右足でも左足でも可能だと言ったが、左足でもジワリと締め上げるように減速コントロールが叶う高い精度の制御感が素晴らしい。
ハンドリングは旋回途中からパワーオンすると弱アンダーステアにフロントタイヤは逃げる。もちろんドライバーの技量がカバーする部分だが、「走る実験室」らしくフロントのモータートルクベクタリングも既にテスト済みで、それはもう、どうにでもできるほど強烈に良く曲がる。いや曲げる事を可能にするという。
レーシングドライバーの習性とは、いかに高い速度のまま曲がれるか、に懸けている。eトルクベクタリングを効かせた操縦性は、常人にはコントロールできない最高速度でも反応するレベルまで高める事が可能だ。
トヨタもホンダも三菱もこうした研究開発を行なっているものの、ここまで開示はしない。そこが日産は偉い。というかEVカーの未来を示すアピール方法が上手い。ということで、ホームコースの袖ケ浦フォレストレースウエイで試乗させて欲しいと嘆願して、ドライブモードを「N」にしてコクピットから降りた。
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
(レスポンス 桂伸一)
低く平べったいスタイルの、どう見ても『リーフ』に違いないレーシングカー然とした一台だ。これ、正式名称を『リーフNISMO RC-02』と言う。
新型リーフのイメージリーダーであると同時に、日産・インテリジェント・モビリティを牽引するための技術的なEVのテストカーというのが本当の姿である。
初代リーフの「RC-01」に対して新型リーフ誕生に合わせて日産のスポーツ/レース部門であるNISMOが完成させた「RC-02」は、昨年、富士スピードウエイで開催された「NISMOフェスティバル」が走行を含めた公式デビューの地。
RC-01に対して全ての性能が上回る点に注目だ。その訳は、モーターが搭載される動力ユニットをフロントにも持つAWDだから。RC-01がモーターをリアに搭載するRWDだったのに対して、その同じEM57モーターを2機、つまりフロントにも搭載した。バッテリーは24kWhから倍以上の62kWh。パフォーマンスは100kWから240kW(326ps)にパワーアップし、トルクは280Nmから640Nmに増強!! 当然車重は920kgから1220kg増加するものの、0-100km/h加速は6.9秒から3.4秒に。最高速は150km/hから220km/hへと、強力なパワーユニットが重量増を相殺する。
袖ケ浦フォレストレースウエイのラップタイムは、パターン付きロードタイヤで1’15”86から一気に5秒マイナスの1’10”34に短縮。スリックタイヤを装着してアタックすると、チューンド『GT-R』を上回る1’08”18と、EVの存在感を強力に示す。
◆必要なモノすべてが手の内にある感覚
極めて強固なカーボンファイバー製モノコックの広いサイドシルを跨ぎながらバケットシートに滑り込む。タイトだが必要なモノすべてが手の内にある感覚のカーボンファイバーと液晶。コクピットは狭いもののドライブする事に最適な環境が整えられている。
つまり腕を伸ばせばステアリングホイールが自然に手の中へ、脚を伸ばすとアクセルとブレーキが操作しやすい位置にある。ブレーキは右足でアクセルから踏み替える事はもちろん、左足でも操作可能な様にレイアウトとペダルサイズが、これぞ「誤操作」を防ぐひとつの見本である。
ステアリングのセンター部に集約された各種スイッチの内、我々が触れていいのはR-N-Dの“ドライブモードスイッチ”のみ。よーく観察すると、その左下にある“パワーマップスイッチ”が4段階あるうちの「4」を示している。つまりこれ160kW(218ps)と最もローパワーな仕様だった。
「舐められたもんだな~!!」と旧知のNISMO関係者に嫌味を言うと、NISMOフェスティバルの時に試乗させた媒体が4WDにも関わらずスピンした!? とかで今回は止む終えずこの仕様でお願いします、と。
◆スピンするのも納得?のパフォーマンス
ドライブモードをDに回し、アクセルを踏み込むと、室内に鳴り響くギヤ音のけたたましさ。まさにレーシングマシンのトランスミッション、ストレートカットのスパーギヤのギヤ鳴りだが、ロードカーの感覚から言えばそれはただの雑音に過ぎない。しかしレーシングマシンを経験した者からすると、それはレーシングノイズ(サウンドではない)のひとつとして容認できるのだった。
加速はまさに、テスラ『モデルS』の最強「ルーディクラス」並の0-100km/h=2.6秒の瞬間加速、「ワープか!!」と思ったが意外にそうでもない点は“パワーマップ4”の影響。
特設コースのストレートで映像では134km/hと言っているが、そう言う間に速度は140km/hに達す。そこでパワーマップを「1」にした場合、速度は160km/hに跳ね上がるという。このわずかな助走距離でプラス20km/hは、感覚的に想像できない速さである。なのでパフォーマンスも半端なければ、媒体関係者がスピンした事も納得できるパフォーマンスである。
◆常人にはコントロールできない速度でも「曲がる」
惚れ惚れしたのはブレーキ性能。右足でも左足でも可能だと言ったが、左足でもジワリと締め上げるように減速コントロールが叶う高い精度の制御感が素晴らしい。
ハンドリングは旋回途中からパワーオンすると弱アンダーステアにフロントタイヤは逃げる。もちろんドライバーの技量がカバーする部分だが、「走る実験室」らしくフロントのモータートルクベクタリングも既にテスト済みで、それはもう、どうにでもできるほど強烈に良く曲がる。いや曲げる事を可能にするという。
レーシングドライバーの習性とは、いかに高い速度のまま曲がれるか、に懸けている。eトルクベクタリングを効かせた操縦性は、常人にはコントロールできない最高速度でも反応するレベルまで高める事が可能だ。
トヨタもホンダも三菱もこうした研究開発を行なっているものの、ここまで開示はしない。そこが日産は偉い。というかEVカーの未来を示すアピール方法が上手い。ということで、ホームコースの袖ケ浦フォレストレースウエイで試乗させて欲しいと嘆願して、ドライブモードを「N」にしてコクピットから降りた。
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
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