【三菱 エクリプスクロス ディーゼル 新型試乗】ようやく本命登場!ガソリンとの違いは想像以上…岡本幸一郎
◆本命のディーゼルが選択肢に加わった「エクリプスクロス」
『エクリプスクロス』は、日本では数少ないスタイリッシュなクーペフォルムをまとったSUVであり、三菱が誇る四輪制御技術による優れた走行性能を身に着けている。昨年3月の登場以来これまで何度か試乗する機会があったが、個人的にもこのスタイリングを気に入っているし、高い利便性と走りのよさにも好感を抱いていた。
そのエクリプスクロスに、2.2リットルクリーンディーゼルが追加された。エンジンスペックは『デリカD:5』と同じで、1.5リットルガソリンと比べると、最大トルクが380Nm/2000rpmと、240Nm/2000-3500rpmであるガソリンの1.6倍近くにまで増大しているのがポイント。
最高出力もガソリンの150ps/5500rpmとほぼ同等の145ps/3500rpmとなっている。また、ガソリンがCVTであるのに対し、8速ATが組み合わされるのも特徴で、ガソリンにはある2WD車の設定はない。
ガソリンとの車両価格差は約30万円だが、優遇税制などあって実質的には20万円程度となる。さらには、JC08モード燃費値がガソリンの4WDの14.0km/リットルに対しディーゼルは15.2km/リットルとなるのに加えて、むろん燃料の単価が低い分、距離を走るほどその差は縮まっていくことになるわけだが、なによりも走りのよさで積極的にディーゼルを選びたくなる人が続出するであろう仕上がりだったことを、あらかじめお伝えしておこう。
◆8速AT化も静粛性、巡航性能に効いている
ガソリンと乗り比べた印象の違いは、いうまでもなく明らかだ。パワートレインを共有するデリカD:5でも動力性能の高さは重々確認済みだが、それが300kg近くも軽い車体に積まれたのだから、その実力たるや推して知るべし。むろんガソリンも動力性能的には十分で大きな不満はなく、CVTとしてはダイレクト感もあって好印象だったものの、ディーゼルのほうが低回転から豊かなトルク特性により、圧倒的に力強い。とくに上り勾配での印象が顕著に違う。
走り出しや軽くアクセルを踏み増したときに、ガソリンはやや飛び出し感があるところ、ディーゼルはそこがリニアにしつけられていて扱いやすい。加えて、ディーゼルゆえレッドゾーンは4200rpm~と高くはないものの、ガソリンにも通じる吹け上がりの伸びやかさまで味わえてしまう。ジェントルでかつトルクフルで上質なドライブフィールを身に着けているのがディーゼルだ。
静粛性もなかなかのものだ。これもデリカD:5でも確認済みだが、パワートレインの音や振動自体が比較的抑えられているとはいえ、やはりディーゼルなので、それなりに音や振動は出るのに対し、車体側でもガソリンに対して各部に対策が施されてされているという。それが効いて、車外ではそれなりにディーゼルっぽい音が聞こえるが、車内にいるとほとんど気にならないほど静かになっている。
おかげで巡航状態から加速しようとアクセルを強めに踏み込んだときの、2000rpmから3000rpmあたりかけての領域では、むしろガソリンのほうが音を意識させられるくらい。ディーゼルが静かなのは、そのあたりの手当てが効いてのことに違いない。ご参考まで、従来のデリカD:5に搭載されていた6速ATに対し、こちらは8速化によりギアのレシオカバレッジが拡大しており、トップギアが約23%もハイギアード化されたおかげで100km/h巡行時のエンジン回転数はわずか約1500rpmにとどまることも強みだ。
◆しっとりしなやかでフラット感のある乗り味に
ハンドリングはガソリンとディーゼルのいずれも、誰でも軽快さを直感できるように味付けされているが、むろんニュアンスの違いはある。車検証によると、それぞれの車両重量および前後軸重は、ガソリンが1550kg(前920kg 後630kg)、ディーゼルが1680kg(前1020kg 後660kg)となっている。すなわちディーゼルのほうが前軸重は100kg大きい。たしかにエンジンフードを開けると、ガソリンはまだだいぶ余裕があるのに対し、ディーゼルはギッシリ詰まっているように見えた。
それを感じさせることなくガソリンと同じ乗り味になるように軽快さを意識したチューニングが施されていることはうかがえるが、感覚としては近いものの、やはりそれなりにイナーシャの違いはあり、ガソリンのほうが軽快さは際立っている。
半面ディーゼルは、その重さが良いほうに作用してか、あるいは後発である分の熟成が進んでか、足まわりの仕上がりもより洗練されていて、しっとりしなやかでフラット感のある乗り味になっていた。
一方で三菱のSUVとして期待される悪路走破性についても、実は今回、雨が激しすぎて本来予定されていたコースが使えず、限られた場所のみ軽く走るにとどまったのだが、秘めたる実力の高さをうかがうことはできた。独自の四輪制御技術は、条件が悪くなるほど強みを発揮するように思えて実に頼もしいかぎり。そこにリニアで力強いディーゼルの力が加わればなおのこと、よりイージーに悪路を踏破していけるわけだ。
◆今ならディーゼルを選ぶ
また、ディーゼルの発売と同時に、フロントグリル、ドアミラー、前後スキッドプレート、サイドドアガーニッシュ、アルミホイールなどエクステリア各部に黒のアクセントをまとい、エクリプスクロスにひと味違った個性を与えた特別仕様車「ブラックエディション」が発売されたこともお伝えしておこう。
昨年の3月の発売から、そこそこ順調な滑り出しを見せたものの、もう少し売れても良いような気がしていたエクリプスクロスだが、こうして本命といえる魅力的なパワートレインが選択肢に加わったことで、より上向くことに違いない。個人的にもお気に入りのエクリプスクロスで、筆者ならどちらのエンジンを選ぶかと聞かれたら、ガソリンもよくできていることは重々承知しているが、今ならおそらくディーゼルを選ぶ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
『エクリプスクロス』は、日本では数少ないスタイリッシュなクーペフォルムをまとったSUVであり、三菱が誇る四輪制御技術による優れた走行性能を身に着けている。昨年3月の登場以来これまで何度か試乗する機会があったが、個人的にもこのスタイリングを気に入っているし、高い利便性と走りのよさにも好感を抱いていた。
そのエクリプスクロスに、2.2リットルクリーンディーゼルが追加された。エンジンスペックは『デリカD:5』と同じで、1.5リットルガソリンと比べると、最大トルクが380Nm/2000rpmと、240Nm/2000-3500rpmであるガソリンの1.6倍近くにまで増大しているのがポイント。
最高出力もガソリンの150ps/5500rpmとほぼ同等の145ps/3500rpmとなっている。また、ガソリンがCVTであるのに対し、8速ATが組み合わされるのも特徴で、ガソリンにはある2WD車の設定はない。
ガソリンとの車両価格差は約30万円だが、優遇税制などあって実質的には20万円程度となる。さらには、JC08モード燃費値がガソリンの4WDの14.0km/リットルに対しディーゼルは15.2km/リットルとなるのに加えて、むろん燃料の単価が低い分、距離を走るほどその差は縮まっていくことになるわけだが、なによりも走りのよさで積極的にディーゼルを選びたくなる人が続出するであろう仕上がりだったことを、あらかじめお伝えしておこう。
◆8速AT化も静粛性、巡航性能に効いている
ガソリンと乗り比べた印象の違いは、いうまでもなく明らかだ。パワートレインを共有するデリカD:5でも動力性能の高さは重々確認済みだが、それが300kg近くも軽い車体に積まれたのだから、その実力たるや推して知るべし。むろんガソリンも動力性能的には十分で大きな不満はなく、CVTとしてはダイレクト感もあって好印象だったものの、ディーゼルのほうが低回転から豊かなトルク特性により、圧倒的に力強い。とくに上り勾配での印象が顕著に違う。
走り出しや軽くアクセルを踏み増したときに、ガソリンはやや飛び出し感があるところ、ディーゼルはそこがリニアにしつけられていて扱いやすい。加えて、ディーゼルゆえレッドゾーンは4200rpm~と高くはないものの、ガソリンにも通じる吹け上がりの伸びやかさまで味わえてしまう。ジェントルでかつトルクフルで上質なドライブフィールを身に着けているのがディーゼルだ。
静粛性もなかなかのものだ。これもデリカD:5でも確認済みだが、パワートレインの音や振動自体が比較的抑えられているとはいえ、やはりディーゼルなので、それなりに音や振動は出るのに対し、車体側でもガソリンに対して各部に対策が施されてされているという。それが効いて、車外ではそれなりにディーゼルっぽい音が聞こえるが、車内にいるとほとんど気にならないほど静かになっている。
おかげで巡航状態から加速しようとアクセルを強めに踏み込んだときの、2000rpmから3000rpmあたりかけての領域では、むしろガソリンのほうが音を意識させられるくらい。ディーゼルが静かなのは、そのあたりの手当てが効いてのことに違いない。ご参考まで、従来のデリカD:5に搭載されていた6速ATに対し、こちらは8速化によりギアのレシオカバレッジが拡大しており、トップギアが約23%もハイギアード化されたおかげで100km/h巡行時のエンジン回転数はわずか約1500rpmにとどまることも強みだ。
◆しっとりしなやかでフラット感のある乗り味に
ハンドリングはガソリンとディーゼルのいずれも、誰でも軽快さを直感できるように味付けされているが、むろんニュアンスの違いはある。車検証によると、それぞれの車両重量および前後軸重は、ガソリンが1550kg(前920kg 後630kg)、ディーゼルが1680kg(前1020kg 後660kg)となっている。すなわちディーゼルのほうが前軸重は100kg大きい。たしかにエンジンフードを開けると、ガソリンはまだだいぶ余裕があるのに対し、ディーゼルはギッシリ詰まっているように見えた。
それを感じさせることなくガソリンと同じ乗り味になるように軽快さを意識したチューニングが施されていることはうかがえるが、感覚としては近いものの、やはりそれなりにイナーシャの違いはあり、ガソリンのほうが軽快さは際立っている。
半面ディーゼルは、その重さが良いほうに作用してか、あるいは後発である分の熟成が進んでか、足まわりの仕上がりもより洗練されていて、しっとりしなやかでフラット感のある乗り味になっていた。
一方で三菱のSUVとして期待される悪路走破性についても、実は今回、雨が激しすぎて本来予定されていたコースが使えず、限られた場所のみ軽く走るにとどまったのだが、秘めたる実力の高さをうかがうことはできた。独自の四輪制御技術は、条件が悪くなるほど強みを発揮するように思えて実に頼もしいかぎり。そこにリニアで力強いディーゼルの力が加わればなおのこと、よりイージーに悪路を踏破していけるわけだ。
◆今ならディーゼルを選ぶ
また、ディーゼルの発売と同時に、フロントグリル、ドアミラー、前後スキッドプレート、サイドドアガーニッシュ、アルミホイールなどエクステリア各部に黒のアクセントをまとい、エクリプスクロスにひと味違った個性を与えた特別仕様車「ブラックエディション」が発売されたこともお伝えしておこう。
昨年の3月の発売から、そこそこ順調な滑り出しを見せたものの、もう少し売れても良いような気がしていたエクリプスクロスだが、こうして本命といえる魅力的なパワートレインが選択肢に加わったことで、より上向くことに違いない。個人的にもお気に入りのエクリプスクロスで、筆者ならどちらのエンジンを選ぶかと聞かれたら、ガソリンもよくできていることは重々承知しているが、今ならおそらくディーゼルを選ぶ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
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1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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