【三菱 エクリプスクロス ディーゼル 新型試乗】ディーゼル×S-AWC、これは非凡な実力の持ち主だ…片岡英明

三菱 エクリプスクロス ディーゼル(ブラックエディション)
◆ガソリンモデルに遅れて「ディーゼルモデル」が国内導入

三菱『エクリプスクロス』は1.5リットルの直列4気筒エンジンにターボの組み合わせで登場した。が、海外向けにはディーゼルターボが用意されている。

これは2267ccの4N14型コモンレール式直列4気筒DOHC直噴ディーゼルターボで、日本ではひと足先に『デリカD:5』に積まれてデビューした。エンジン本体に手を加え、フリクションを大幅に減らしただけでなく、厳しい排ガス規制を乗り切るためにEGRを増やすとともに尿素SCRシステムも採用している。また、トランスミッションもCVTではなく最新の電子制御8速ATだ。


◆実用域トルクは4リットルクラスと同等

1.5リットルのガソリンターボの最高出力は110kW(150ps)である。これに対しディーゼルターボは107kW(145ps)と、ちょっとだけ低い。だが、最大トルクはガソリンターボの240Nm(25.9kg-m)に対し、380Nm(38.7kg-m)と、大差をつけているのだ。

しかも車両重量もデリカD:5より300kgも軽いし、少しハイギアード化されているから力強い加速を見せつけた。1000回転台の半ばからターボの後押しによってグッとトルク感が増し、気持ちよくスピードを乗せていく。

デリカD:5が苦手とするダラっとした登りでもパドルシフトの助けを借りることなく駆け抜けることが可能だ。クルージング時の静粛性もデリカD:5に差をつけていた。実用域のトルクはガソリンエンジンの4リットルクラスと同等だし、発生回転も低いからオフロード走行を苦手としない。

試乗会場にはクロスカントリー4WD向けのオフロードコースもあった。が、急勾配の登坂路を息絶えることなく登りきったし、大きな凸凹路面が続き、片輪が宙に浮いてしまうモーグルコースも無難に走りきっている。


◆“非凡な実力”を発揮するS-AWC電子制御4WD

ちなみにエクリプスクロスが採用するのはオンデマンド式のS-AWC電子制御4WDだ。トルク配分を制御するS-AWCは路面に応じて駆動力制御を緻密に行い、滑ったときのリカバリーも早い。デリカD:5のようにオフロードに特化した4WDのロックモードは装備していないが、その必要性を感じないほどタフな走りを見せつけた。このハードなステージでは最低地上高がもう少し欲しいし、急勾配の下り坂では降坂制御システムが欲しいと感じたが、非凡な実力の持ち主だ。

舗装路でも意のままの気持ちいい走りを披露する。ディーゼルターボの搭載によってフロントの重さが増し、アンダーステアが強いのでは、と思っていたが、ワインディングロードでも狙ったラインに乗せやすかった。エクリプスクロスの持ち味である気持ちよく曲がるハンドリングはディーゼルでも健在だ。乗り心地も洗練されている。アイドリングのときに振動とエンジン音を感じたが、走り出してしまえば静かだ。100km/hで8速ギアだと1500回転程度で巡航できる。

『アウトランダー』の4WDの一部グレードより価格はちょっと高いから悩む人もいるだろう。だが、日本では軽油価格が安いから、かなり距離を走る人には魅力的なクロスオーバー4WDになるはずだ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア(居住性):★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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