【レクサス 新旧試乗】30年前の目標と30年間の進化をコスタリカで感じた

1990年型LS400
2019年。オリンピックを控えた今年、レクサスがブランド誕生から30年を迎えた。1989年、北米で初代『LS』(1990年型。日本ではトヨタ『セルシオ』)を発売したのがこの年だ。以降、レクサスは順調に進化し、今日につながっている。

そのレクサスが世界中のメディアを招待して30周年イベントを行った。場所は中米コスタリカ。この国は環境意識が強く、電力の供給方法を含めサスティナブルな事業が行われている。ハイブリッドを主軸に置くレクサスにとって、そんな共通点からこの国が選ばれたそうだ。現在レクサスのハイブリッドモデルは全部で11。昨年の全モデルにおける販売シェアは23%で、今年は30%になることが予想される。

イベントはレクサス首脳陣によるブランドヒストリーと今後の展開に関するプレゼンテーションでスタートする。初代LSのコンセプトやディーラーのホスピタリティについて述べられたところは印象的だった。チーフエンジニア鈴木一郎氏の思い描いたプランは、最高250km/h、燃費22.5mpg、Cd値0.28~0.29、100km/h時の騒音レベル58dbというもの。これに開発チームはかなり驚き、実現性の低さをアピールしたと言う。1980年代の話である。

また、ディーラーホスピタリティは整備後の洗車や手書きのレターが行われた。そうそう、店内にカプチーノマシンを置くことも。アメリカ人にとってカーディーラーの印象が悪かった背景がよくわかる。いずれにせよ、当時の時流を鑑みれば、それなりに工夫はされていたようだ。

プレゼンテーションの後は、新旧乗り比べという、クルマ好きにはたまらない試乗プランが待ち構えていた。初代LSと最新のLS、初代『RX』とこの秋登場する最新のRX、『SC』と『LC』といったように。

印象的だったのは1993年型の『GS300』。全長4865×全幅1795×全高1420mmはサイズ感がよく、280psの3リットル直6ユニットもチカラに不足はなかった。当時ドイツ車と比べフィーリングの薄さからいい印象を持たなかったが、いまとなってカッチリしていてそれなりに運転も楽しかった。SCもそう。ボディの薄さがスタイリッシュでかっこいい。衝突安全云々の規制が厳しくなる前の産物である。

今秋発売のRXに関しては、インプレッションを語るまでの時間乗っていないのでここでは遠慮しておこう。NVH対策はさらに進み、より高級感は高まっている。秋以降、もっと長い距離をじっくり乗ってみたい気になる仕上がりだ。

……というのが、今回参加した、レクサス30年の歴史に触れる試乗会であった。30年は自動車メーカーにとっては決して長くはない。ヨーロッパブランドは次々100年の軌跡をアピールしているからだ。でも、逆に言えば30年でこれだけ成長したブランドがあるだろうか。しかも、未来予想図も明るい。先日豊田市のデザインセンターでプレゼンテーションを受けて、それも感じた。レクサスの歩みはどんどん加速している。その意味からも日本人としてこのブランドから目が離せない。

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。

(レスポンス 九島辰也)

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