【スズキ ジムニー(AT車)新型試乗】「軽を買う」ではなく「小さな4WDを買う」イメージで…中村孝仁

スズキ ジムニー(AT車)新型
何か街中で見かけても、確かに小さいけれど全然軽自動車然としていなくて、どことなく立派に見えるのがスズキ『ジムニー』。昨年デビューして大ヒット。他誌の調べだけど未だに納期が最短10か月などとも言われる。

デビューしてすぐにオフロードで試乗。その後にオンロードでも1週間ほど乗ってみた。でもいずれも5速MT車。軽いとはいえ、1トンの車重はやっぱりATではしんどいと思っていたのだが、乗ってみないことにはわからないということで、ようやくジムニーのATに乗ることが出来た。トランスミッションが変わった以外は装備内容に差があるわけでもなく、デザインに差があるわけでもない。


◆他の軽とは一線を画す「ステップAT」

新橋にあるスズキの広報から車を乗り出して都会の雑踏に入る。場所を選ばず相変わらず乗り心地がイイ。そして、そのまま首都高にノーズを向け、向かった先は一路群馬県である。つまり首都高から関越道を経て藤岡までまっしぐらに走った。まだ、今のような猛暑ではなかったが、勿論エアコンは必須。そんなわけで連続の高速走行がどの程度の高速パフォーマンスを示すかを試すのには絶好の機会であった。

余談であるが、ジムニーのオートマチックは本格的なステップATが装備されている。つまり大半の軽自動車に装備されるCVTのオートマチックとは一線を画するものだ。

特にノンターボでエンジンに負荷がかかり易い軽自動車のCVTは、どうしてもアクセルの踏み込み量が多くなって、エンジンが唸り、その割に車速が伸びないという車速とエンジン音の相関関係が崩れているから、違和感があって好みではない。そこへ行くとたとえ4段と言えどもちゃんとしたステップATは、変速の際に多少の軽いショックは伴うものの、車速の伸びとエンジン回転の上昇はリンクしているから違和感はないし、何よりも力強さがある。それにジムニーの場合はエンジンもターボ付きだからよりパワフル。

その走りは想像していたよりもはるかに活発で、結論から行けば全然ATでもOKである。


◆プロユースもお茶の子さいさい

ジムニーというクルマはどうしてもプロユースがそのイメージをリードしている。ここでいうプロユースというのは、例えば森林警備のようなところで使われることを言い、庁の名が付く公の場所でもジムニーが使われているらしく、だからその走破性能にはプロの折り紙付きという部分が一般のエンドユーザーにまで浸透しているようだ。

そのオフロード性能についてはMT車で十分納得したわけだが、ではそれをATでやれるのか?と言う問いに対して、あくまでもスズキ広報のお答えとなってしまうが、「十分に走れる」だそうである。

というわけだから、少しごつい感じで、ちょっとしたオフロードや雪道程度ならお茶の子さいさいで走り回れるジムニーに人気が集まるのは極めて自然だし、今回もATで一週間乗ってみて、近所回りから遠出までこなせるその実力と、軽らしからぬスタイリングで正直返したくなくなるほど魅力を感じてしまった。


◆「小さな4WDのSUVを買う」というイメージで

そのスタイルからして空力的に優れているはずもなく、したがって高速ではどうしても風切り音が大きい。それに無理はしていないと言っても、今時コンパクトカーだって100km/h時のエンジン回転は2000rpm以下が主流という低回転で静々回るところを、ほとんど4000rpm近い3800rpm付近で走っているのだから、静かなはずがない。

ただ、人間の慣れというのは恐ろしいもので、街中でセットしたラジオを高速に入って一旦消して走行すると、案外静かじゃない?という感覚になる。ところがその連続走行中に再びラジオをつけてみると、今度はまるで聞こえない。当然ながら隣との会話だって力を込めて声を発する必要もあったから、まあ結構うるさいのである。

もう一つのネガ要素は燃費である。1週間およそ400km走行後の燃費は11.4km/リットル。燃料は勿論レギュラーで対応するが、まあ、コンパクトカーよりははるかに悪い燃費である。それにCVT装備の軽自動車はまず信号待ちでアイドリングストップをするが、このクルマにその装備はない。

というわけだから、「軽自動車を買います」というイメージでジムニーを買うと、想像とは違った…ということがある。あくまでも小さな4WDのSUVを買うというイメージの方を強く持っていただきたい。その上でどこでも楽に走りたいという意味でATをチョイスするなら、ATのジムニーは有りです。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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