【メルセデスベンツ Bクラス 新型試乗】扱いやすさならガソリン、パンチ力ならディーゼル待ち…片岡英明

メルセデスベンツ Bクラス 新型(B180)
マルチパーパスコンパクトをキャッチフレーズにするメルセデスベンツの世界戦略車が『Bクラス』である。『Aクラス』に続いてモデルチェンジされ、その第一弾として7月にA180が発売された。直噴ディーゼルターボを積むB200dは10月に発売を予定している。

◆日本の道路でも運転しやすいサイズ



ボディサイズはAクラスとほとんど変わらない。全長は4430mm、全幅は1795mmだ。ホイールベースもA180と同じ2730mmとなっている。日本の道路でも運転しやすい。

が、間近にするとAクラスより押しの強さと風格を感じる。その理由は、全高を130mm高くしているからだ。B180は1562mm、B180のAMGラインでも1550mmの全高だから遠くからでもBクラスと分かる。エクステリアは誰が見てもメルセデスベンツと分かる明快なデザインだ。スポーティなルックスとは言い難いが、空気抵抗係数はCd=0.24を達成した。量産車としては、とびきり優秀な数値だ。

◆車内スペースの広さは不満なし、荷室も拡大しやすい



エクステリア以上に見どころが多いのがインテリアである。基本的なデザインはAクラスのものを受け継いでいるが、10.25インチの大きな2枚の液晶パネルを並べたインパネは新鮮だ。また、ジェットエンジンのタービンのように並んだエアアウトレットパネルも強烈な印象を残している。アンビエントライトも全64色と多いから、鮮やかな色の変化を楽しめる。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」の搭載も注目を集めた。自然対話式音声認識機能は便利だが、実際の使い勝手は今一歩だ。何度も言い直しているとストレスを感じてしまう。

キャビンは背が高くなっているために乗り降りしやすいし、後席の居心地もよくなっている。フロントシートは大ぶりで、AMGレザーエクスクルーシブパッケージは座り心地とホールド性のいいレザーシートだった。大柄な人だけでなく小柄な人も運転しやすいだろう。運転席からの視界も開けていて安心感がある。後席も不満のない広さを確保した。

このリアシートは3分割可倒式だから荷室も拡大しやすい。後席に座った状態でもラゲッジ容量はVDA方式で455リットルを確保した。Aクラスは370リットルだから違いは大きい。後席をたためば荷室は1540リットルまで広がる。ただし、ちょっと段差ができるのが悩みどころ。荷室フロアを2段階に調整できるのは便利である。

◆ハンドリングは軽快で気持ちいいが…



パワーユニットはAクラスと共通だ。B180が搭載するのは、1331ccの直列4気筒DOHC直噴ターボエンジンだ。最高出力は先代の1.6リットルターボエンジンより14psアップの136ps(100kW)/5500rpm、最大トルクは200N・m/1460~4000rpmである。これに7速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせた。Aクラスより車両重量は80kg増えている。だからターボが威力を発揮する前の低回転ではパンチ力不足と感じた。

ちょっと勾配のきつい坂道ではキックダウンも早く、一気に高回転を目指す。7G-DCTはダイレクトなつながりで、2000回転あたりからターボが本格的に稼働する。だが、排気量が小さいこともあり、力強い加速を引き出すことは難しい。パンチ力を期待するなら分厚いトルクの直噴ディーゼルを待ったほうがいいだろう。だが、B180はジェントルで扱いやすいし、クルージング時は静粛性も高いレベルにある。

ハンドリングは軽快で、気持ちいい走りを楽しむことができた。試乗したAMGラインは18インチの45タイヤと18インチアルミホイールの組み合わせだったが、路面によってはゴツゴツ感が気になるし、入力がきつく感じることもある。強靭なシャシー性能は魅力だが、リアにトーションビームを採用した足の動きは500万円を超えるクルマとしては物足りない。同様のことはAクラスでも感じたから、荒れた路面は苦手なのだろう。

見せかけの価格は安いが、Bクラスはレーダーセーフティパッケージやアドバンスパッケージ、ナビゲーションパッケージなどを加えていくとトータルでは500万円になってしまうのだ。メルセデスベンツの姿勢として安全装備をオプション扱いするのはいかがなものだろう。オプション装備を加えていくと『Cクラス』並みの価格になってしまう。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員   

(レスポンス 片岡英明)

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