【MINI クラブマン JCW 新型試乗】ある程度積めて走りを楽しめる、このクルマの真骨頂…九島辰也
今年5月にヨーロッパで発売開始したMINI ジョンクーパーワークス(JCW)『クラブマン』をテストドライブした。ベースとなるクラブマンのマイナーチェンジに伴う変更である。コースはドイツ、フランクフルト郊外。速度無制限区間のアウトバーンと長めのワインディング、それと街中がほどよくミックスされていた。
JCWは、ジョン・クーパー生誕85年を記念して2008年に立ち上げられたコンパクトセグメントにおける世界初のプレミアムカー。MINIのハイパフォーマンスモデルとして誕生したJCWでは、エンジンやセットアップ、タイヤなど様々な点において改善が施されている。
◆2リットルで300馬力超え、改良されたエンジン
新型の目玉はなんといっても改良されたエンジン。既存の2リットル直4ガソリンターボユニットに手を入れ、最高出力を231hpから306hpへ75hpもスープアップしたのだ。エンジン担当にインタビューしたところ、インテークからエキゾースト、クランクシャフト、タービンなどを変更したという。エキゾーストパイプは径を大きく、タービンも巨大化させたらしい。このエンジンはBMW 『M135i』や『X2 M』パフォーマンスにも採用しているそうだ。それにしても2リットルで300馬力オーバーというのは恐れ入る。
組み合わされるトランスミッションはアイシン製8速ATで、フロントにメカニカルディファレンシャルロック機構を内蔵する。アクセルのオンオフで動きを変えられ、アンダーステアを回避できそうだ。ちなみに、なぜZF製のFWD用9速ATにしなかったという質問に対しては、「9速は必要ない」という答えだった。
駆動方式はALL 4、つまり4WD。通常はフロントに100%の駆動力を配分するが、タイヤの空転などを感知すると最大50%のトラクションをリアへ分配する。
◆加速と最高速にコーナリング、全てにおいてニガテなし
では、実際に走らせた印象だが、出だしから何まですべてが速い。一般道での加速、アウトバーンでの追い越し加速&最高速、タイトコーナー出口の立ち上がりなど、どの状況下においても速さが目立つ。それはドライブモードを“スポーツ”に変更するとさらに際立つ。通常の“ミッド”でも十分だが、一段とアクセルレスポンスが良くなり体感的にもスピード感が増すのだ。
さらに言えば、この時シフトをDレンジからM/Sと書いた左側に倒すと、走りはよりシャープになる。パドルシフトを使わずとも各ギアでしっかり6000回転まで回してくれるのだから文句のつけどころがない。シフトダウンはともかく、シフトアップに関してはパドル不要といったところだ。
コーナリングもこのクルマの美点。ゴーカートフィーリングは健在で、ドライバーを起点にクルッと回る感覚がある。タイトコーナーは得意科目で、ステアリング操作に連動して鼻先を出口に向ける。コーナーによっては若干オーバーステア気味に感じる場面があったが、その辺はメカニカルディファレンシャルロック機構の働きだろう。
乗り心地に関しては、少し硬めだがまったくもって許容できる。オプションでアダプティブダンパーも用意されるようだが、今回は固定で不満はなかった。18インチとのマッチングも良さそうだ。タイヤメーカーは標準では選べないが、オプションでミシュランのパイロット・スーパー・スポーツが選べるのはおもしろい。いずれにせよ、ランフラットタイヤは採用されない。
というのが今回のファーストインプレッション。JCWの名に恥じず、かなりおもしろい仕上がりになっていた。ある程度荷物が積めてこれだけ走りが楽しめるのが、このクルマの真骨頂と言える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。
(レスポンス 九島辰也)
JCWは、ジョン・クーパー生誕85年を記念して2008年に立ち上げられたコンパクトセグメントにおける世界初のプレミアムカー。MINIのハイパフォーマンスモデルとして誕生したJCWでは、エンジンやセットアップ、タイヤなど様々な点において改善が施されている。
◆2リットルで300馬力超え、改良されたエンジン
新型の目玉はなんといっても改良されたエンジン。既存の2リットル直4ガソリンターボユニットに手を入れ、最高出力を231hpから306hpへ75hpもスープアップしたのだ。エンジン担当にインタビューしたところ、インテークからエキゾースト、クランクシャフト、タービンなどを変更したという。エキゾーストパイプは径を大きく、タービンも巨大化させたらしい。このエンジンはBMW 『M135i』や『X2 M』パフォーマンスにも採用しているそうだ。それにしても2リットルで300馬力オーバーというのは恐れ入る。
組み合わされるトランスミッションはアイシン製8速ATで、フロントにメカニカルディファレンシャルロック機構を内蔵する。アクセルのオンオフで動きを変えられ、アンダーステアを回避できそうだ。ちなみに、なぜZF製のFWD用9速ATにしなかったという質問に対しては、「9速は必要ない」という答えだった。
駆動方式はALL 4、つまり4WD。通常はフロントに100%の駆動力を配分するが、タイヤの空転などを感知すると最大50%のトラクションをリアへ分配する。
◆加速と最高速にコーナリング、全てにおいてニガテなし
では、実際に走らせた印象だが、出だしから何まですべてが速い。一般道での加速、アウトバーンでの追い越し加速&最高速、タイトコーナー出口の立ち上がりなど、どの状況下においても速さが目立つ。それはドライブモードを“スポーツ”に変更するとさらに際立つ。通常の“ミッド”でも十分だが、一段とアクセルレスポンスが良くなり体感的にもスピード感が増すのだ。
さらに言えば、この時シフトをDレンジからM/Sと書いた左側に倒すと、走りはよりシャープになる。パドルシフトを使わずとも各ギアでしっかり6000回転まで回してくれるのだから文句のつけどころがない。シフトダウンはともかく、シフトアップに関してはパドル不要といったところだ。
コーナリングもこのクルマの美点。ゴーカートフィーリングは健在で、ドライバーを起点にクルッと回る感覚がある。タイトコーナーは得意科目で、ステアリング操作に連動して鼻先を出口に向ける。コーナーによっては若干オーバーステア気味に感じる場面があったが、その辺はメカニカルディファレンシャルロック機構の働きだろう。
乗り心地に関しては、少し硬めだがまったくもって許容できる。オプションでアダプティブダンパーも用意されるようだが、今回は固定で不満はなかった。18インチとのマッチングも良さそうだ。タイヤメーカーは標準では選べないが、オプションでミシュランのパイロット・スーパー・スポーツが選べるのはおもしろい。いずれにせよ、ランフラットタイヤは採用されない。
というのが今回のファーストインプレッション。JCWの名に恥じず、かなりおもしろい仕上がりになっていた。ある程度荷物が積めてこれだけ走りが楽しめるのが、このクルマの真骨頂と言える。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。『Car EX』(世界文化社 刊)副編集長、『アメリカンSUV』(エイ出版社 刊)編集長などを経験しフリーランスに。その後メンズ誌『LEON』(主婦と生活社 刊)副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。
(レスポンス 九島辰也)
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