【マツダ3 新型試乗】ファストバック、好ハンドリングを予感させるも乗り心地は…吉田匠
黒に近い感じの濃いグレーのメタリックカラーに塗られた『マツダ3』ファストバック、実は現車を目にするのは初めてだったが、素直にカッコいいと思った。なかでも、デザイナーやモデラーや生産技術担当者諸氏がとりわけ気合を入れたと思われる、ドアからCピラーへと続く緊張感のある面構成を持った、美しく個性的なサイドビューが目を惹く。
ちなみにファストバックのボディサイズは4460×1795×1440mm、ホイールベース2725mmというもの。先代の『アクセラ』のハッチバックと比べると全幅は同じで、全長と全高がわずかに小さくなり、ホイールベースは25mm伸びている。
◆きめ細かいデザインの気配りがあちこちに
コクピットに収まり、腰のあたりをしっかりホールドするシートに座って見回すインテリアにも、キメ細かいデザインの気配りがあちこちに見える。デジタル制御なのにアナログ風のメーター、ステアリングホイールに仕込まれたスイッチ類、60年代イタリアのショーモデルを連想させるダッシュボード上のクラッシュパッドの仕上げも、マツダらしい。
と、近年のマツダのデザインに対する拘りぶりに感心しつつも、それがファミリーカーとしての実用性を損なっていないかをチェックする。まずは妙に幅広いCピラーが視界を狭めていないか心配になるが、あんな後ろまで振り返ることはまずないので、特に問題ナシ。
続いてリアシートに座ってみるが、レッグルームもヘッドルームも特に広くはないものの、身長170cm強くらいの大人なら、普通に座れることを確認。ちなみにファストバックはボディ形式でいうと5ドアハッチバックだから、リアのラゲッジルームにはテールゲートが備わる。つまり、スタイリングを含めたパッケージングはまずまず良好といえそうだ。
◆よりパフォーマンスを求めるならSKYACTIV-Xか?
となると次はロードインプレッションの本番、走りのチェックである。現在発売されている「SKYACTIV-G」ガソリンエンジンには1.5リットルと2リットルがあるが、ファストバックの試乗車は2リットル直4ガソリンNAエンジンを搭載、6段ATで前輪を駆動するモデル。パワーは156ps、トルクは20.3kgmで、車重1360kgとされている。
今回は新宿副都心を中心に、首都高と一般道での試乗だった。そこでまずは首都高に乗って中央道方面を目指すが、残念ながらそこはかなりの込みようで、高速での走りを味わうとことができず、インプレッションは都会の日常的な状況における話になる。
まずは2リットル直4ガソリンエンジンの印象をひと言でいうと、パフォーマンスに不足はないものの、同クラスのヨーロッパ車に多いダウンサイジング系ターボに比べると、どうしてもトルクやパワーの線が細い印象をうける。
深く踏み込むとブーンという感じのサウンドを発して軽快に吹け上るが、あまり骨太さを感じさせるエンジンではない。ガソリンエンジンにこれ以上のパフォーマンスを求めるなら、12月に追加発売される「SKYACTIV-X」エンジン搭載モデルを待つといいかも。
◆正直、もっとしなやかな脚の動きが欲しい
ではマツダ3、シャシーの印象はどうか。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームを採用。先代アクセラのリアがマルチリンクだったのに比べると後ろ脚が簡素化された印象をうけるが、そうすることでコーナリング時のリニアな挙動を実現しているという。
ところが今回、残念なことに都内での試乗だったため、ワインディングロードを攻めるようなステージがなく、新シャシーが味わわせてくれるはずのコーナリングの実力を体感することができなかった。とはいえ、操舵力は軽めではあるものの切り込むと同時にボディが素直に反応するレスポンスは心地好く、好ハンドリングを予感させるものだった。
ところがその一方で、乗り心地の印象はあまり良好なものではなかった。サスペンションは、いわゆるスポーツモデルのような硬さではないものの、全般に突っ張った感触があって、一般道の凹凸や首都高の舗装の継ぎ目などを越えると、18インチタイヤの上下動がボディにストレートに伝わってくる。
例えばそれは、タイヤの空気圧が標準より高いかのような乗り心地で、正直なところ、もっとしなやかな脚の動きが欲しいと思った。試乗したファストバックは走行2800km弱のクルマだったが、もっと距離を走り込めば乗り心地が改善されることを期待したい。
というわけで、マツダ3ファストバックの美点を味わえるであろうワインディングロードのセクションがなかったのが少々心残りな試乗だった。したがって、特にフットワークに関する最終的な評価は、そういう舞台を走ってから下したいと思った。
吉田匠│モータージャーナリスト
1971年、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。1985年、同社を円満退社、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。『僕の恋人がカニ目になってから』(二玄社)、『男は黙ってスポーツカー』『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)など、著書多数。
(レスポンス 吉田匠)
ちなみにファストバックのボディサイズは4460×1795×1440mm、ホイールベース2725mmというもの。先代の『アクセラ』のハッチバックと比べると全幅は同じで、全長と全高がわずかに小さくなり、ホイールベースは25mm伸びている。
◆きめ細かいデザインの気配りがあちこちに
コクピットに収まり、腰のあたりをしっかりホールドするシートに座って見回すインテリアにも、キメ細かいデザインの気配りがあちこちに見える。デジタル制御なのにアナログ風のメーター、ステアリングホイールに仕込まれたスイッチ類、60年代イタリアのショーモデルを連想させるダッシュボード上のクラッシュパッドの仕上げも、マツダらしい。
と、近年のマツダのデザインに対する拘りぶりに感心しつつも、それがファミリーカーとしての実用性を損なっていないかをチェックする。まずは妙に幅広いCピラーが視界を狭めていないか心配になるが、あんな後ろまで振り返ることはまずないので、特に問題ナシ。
続いてリアシートに座ってみるが、レッグルームもヘッドルームも特に広くはないものの、身長170cm強くらいの大人なら、普通に座れることを確認。ちなみにファストバックはボディ形式でいうと5ドアハッチバックだから、リアのラゲッジルームにはテールゲートが備わる。つまり、スタイリングを含めたパッケージングはまずまず良好といえそうだ。
◆よりパフォーマンスを求めるならSKYACTIV-Xか?
となると次はロードインプレッションの本番、走りのチェックである。現在発売されている「SKYACTIV-G」ガソリンエンジンには1.5リットルと2リットルがあるが、ファストバックの試乗車は2リットル直4ガソリンNAエンジンを搭載、6段ATで前輪を駆動するモデル。パワーは156ps、トルクは20.3kgmで、車重1360kgとされている。
今回は新宿副都心を中心に、首都高と一般道での試乗だった。そこでまずは首都高に乗って中央道方面を目指すが、残念ながらそこはかなりの込みようで、高速での走りを味わうとことができず、インプレッションは都会の日常的な状況における話になる。
まずは2リットル直4ガソリンエンジンの印象をひと言でいうと、パフォーマンスに不足はないものの、同クラスのヨーロッパ車に多いダウンサイジング系ターボに比べると、どうしてもトルクやパワーの線が細い印象をうける。
深く踏み込むとブーンという感じのサウンドを発して軽快に吹け上るが、あまり骨太さを感じさせるエンジンではない。ガソリンエンジンにこれ以上のパフォーマンスを求めるなら、12月に追加発売される「SKYACTIV-X」エンジン搭載モデルを待つといいかも。
◆正直、もっとしなやかな脚の動きが欲しい
ではマツダ3、シャシーの印象はどうか。サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビームを採用。先代アクセラのリアがマルチリンクだったのに比べると後ろ脚が簡素化された印象をうけるが、そうすることでコーナリング時のリニアな挙動を実現しているという。
ところが今回、残念なことに都内での試乗だったため、ワインディングロードを攻めるようなステージがなく、新シャシーが味わわせてくれるはずのコーナリングの実力を体感することができなかった。とはいえ、操舵力は軽めではあるものの切り込むと同時にボディが素直に反応するレスポンスは心地好く、好ハンドリングを予感させるものだった。
ところがその一方で、乗り心地の印象はあまり良好なものではなかった。サスペンションは、いわゆるスポーツモデルのような硬さではないものの、全般に突っ張った感触があって、一般道の凹凸や首都高の舗装の継ぎ目などを越えると、18インチタイヤの上下動がボディにストレートに伝わってくる。
例えばそれは、タイヤの空気圧が標準より高いかのような乗り心地で、正直なところ、もっとしなやかな脚の動きが欲しいと思った。試乗したファストバックは走行2800km弱のクルマだったが、もっと距離を走り込めば乗り心地が改善されることを期待したい。
というわけで、マツダ3ファストバックの美点を味わえるであろうワインディングロードのセクションがなかったのが少々心残りな試乗だった。したがって、特にフットワークに関する最終的な評価は、そういう舞台を走ってから下したいと思った。
吉田匠│モータージャーナリスト
1971年、青山学院大学卒業と同時に自動車専門誌『CAR GRAPHIC』の編集記者としてニ玄社に入社。1985年、同社を円満退社、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。『僕の恋人がカニ目になってから』(二玄社)、『男は黙ってスポーツカー』『ポルシェ911全仕事』『男は笑ってスポーツセダン』(双葉社)など、著書多数。
(レスポンス 吉田匠)
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