【マツダ3 新型試乗】体になじんで思い通りに走るセダン…齋藤聡

マツダ3新型、セダン
◆数字は先代比で狭くなっているのだが

『マツダ3』セダンのデザインコンセプトは「凛とした伸びやかさ」。デザインのポイントになっているのはフロントノーズの長さなのだろうと思う。すらりと伸びたボンネットラインからキャビン、リヤエンドへと流れるラインが美しい。それでセダンに求められる居住性も確保できている。

資料によると、先代モデルとなる『アクセラ』のほうが、前後のヘッドルームやショルダールーム、リヤのレッグルームは若干広いそうだが、例の「頭を揺らさないシート」に腰骨を立てるように座るとタイトさは全く感じない。またポジションも無理に座るというよりはスッと座って姿勢が決まるので、無理やり座らされる感がないのが良いと思う。

クルマとの一体感、操縦性の要となるGベクタリングコントロールプラスについてはファストバックの試乗で触れたので、セダンでは新開発のディーゼルエンジンとAWDにスポットを当ててみたい。

◆アクセルの踏み代と加速感の関係性がいい1.8ディーゼル

まずは新開発の1.8リットル・ディーゼルターボ。圧縮比が14.8対1でディーゼルエンジンとしては極めて低い圧縮比となっている。最高出力116ps/6000rpm、最大トルク270Nm/1600-2600rpmを発揮する。

圧縮比が低いので、相変わらずエンジンの吹き上がりが軽く滑らか。6速ATが組み合わされる。8速とか9速じゃないの? という疑問が一瞬頭をよぎるが、発進から加速につながる感じが、MTのギヤ比をそのままATにしたような印象で、古臭い感じはしなかった。むしろ、ギヤが何速なのか分かりにくい最近の多段ATよりもエンジンのミッションとの関係性も明確で、運転している実感が得やすいと思った。

気になるパワー&トルクも必要にして十分。アクセルを踏み込むとフワッとトルクが膨らみ、スルスルと加速してくれる。その時のアクセルの踏み代と加速感の関係性が良く、ドライバーの意図を的確に反映してくれる。

ただ全開加速しても、それほど加速に迫力が加わらない。必要十分なパワーとトルクを巧みに使いこなしている。……とも言えるが、もうちょっとパワーやトルクに余裕が欲しいと感じる場面も、正直なところあった。

◆後ろから押されているような駆動感に安定感も

AWDは、i-ACTIVE AWDと名付けられたアクティブオンデマンドタイプの4WDを採用する。最近では後輪デフ直前に配置したクラッチユニットを用いて、前輪からの駆動力の断続を行うタイプの4WDが増えているが、マツダは一歩進めて様々なセンサーを駆使して4WD制御を積極的におこなっている。

例えば発進時には当たり前のように後輪に起動力が配分され、4つのタイヤで負担の大きい発進加速を担っている。その一方で、高速道路の巡航では意図的にFFにして駆動ロスを軽減し燃費の向上を図るなど、走行状況やドライバーの走り方を反映して4WD制御をおこなっている。

本当に舗装路で4WDの恩恵が感じられるのか? と思うかもしれないが、例にも挙げた発進加速では、ちょっと強めの加速を試みると、後ろからクルマを押しているような駆動感があるし、リヤの安定感も増す。

マツダの説明によれば、このAWDは、Gベクタリングコントロールプラスとの協調制御も行っているそうで、カーブではその状況に合わせて前後の駆動配分を維持したり、意図的に変えたりして曲がりやすさを積極的に作り出しているのだという。さすがに一般道の短い試乗では、制御の恩恵を実感することはできなかったが、雨、雪、凍結路、砂の乗った舗装路など、様々な場面で陰ながら効果を発揮してくれるのだろう。

気になったのは、段差やギャップを乗り越えた時に、乗り心地に硬さが出る場面があったこと。タイヤが縦にたわんだ先にダンパーの硬さがあるような感触なのだ。トーションビーム+AWDのためのサスペンションセッティングが、乗り心地になにがしかの影響を与えているのだろうか。

セダンを試乗して改めて感じたのは、体にスッとなじんで思い通りに走ってくれ、街中の試乗なのに走っていて楽しかったこと。クルマの動きに(よい意味で)遊びがないから、クルマの大きさを感じさせない点も良い。あとでカタログを見て全幅が1790mmあるのに驚いたほどだ。普段の何気ない走りの中にクルマとの一体感や走ることの面白さがちゃんとあるところがマツダ3の魅力なのだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

齋藤聡|モータージャーナリスト
特に自動車の運転に関する技術、操縦性に関する分析を得意とする。平たくいうと、クルマを運転することの面白さ、楽しさを多くの人に伝え、共有したいと考えている。そうした視点に立った試乗インプレッション等を雑誌及びWEB媒体に寄稿。クルマと路面との接点であるタイヤにも興味をもっており、タイヤに関する試乗レポートも得意。また、安全運転の啓蒙や普及の重要性を痛感し、各種セーフティドライビングスクールのインストラクターも行っている。

(レスポンス 斎藤聡)

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