【VW ゴルフTDI 新型試乗】満を持して?今更?とにかく完成度は抜群なゴルフディーゼル…中村孝仁
◆満を持して?それとも今更?
満を持してという表現が正しいかどうかわからないが、VWがついに主力モデル『ゴルフ』のTDI、即ちディーゼルエンジンを搭載して市場導入した。
何故、満を持してという表現が適当でないかと言うと、現行ゴルフは俗にゴルフ7と呼ばれる7世代目のモデル。日本に導入されたのは2013年のことで、誕生はその前年だからすでに7年が経過した。しかもすでに本国では頻繁に次期モデルのスクープ写真が流失し、間もなくデビューすると言われている。つまりモデル末期である。あと1年待てば新しいゴルフ8のディーゼルだって出るかもしれない。そんなわけだから実際には満を持してではないのかもしれない。
とはいえ、このクルマを待っていたユーザーは間違いなく多い。ゴルフは初代からディーゼルの設定があり、2代目まで販売され人気を博していた。2代目では「GTD」などとも呼ばれ、何となく高性能ディーゼルのイメージすら漂っていたのである。
昨今、日本の輸入車市場は実はディーゼルが大流行り、とりわけSUV系では販売されるモデルの多くが、ディーゼル比率7割近くを誇っているかあるいはそれを超えている。だから正直言えば、ディーゼルを投入しない事はみすみす販売を逃すことにも直結していると言って過言ではない状況なのだ。それがモデル末期のゴルフ7にディーゼルを追加投入した原動力だと感じている。
◆数値はだいぶ大人しめ、だが必要十分な性能
ゴルフに搭載されたディーゼルユニットはEA288と呼ばれるもので、現行ゴルフが使用しているプラットフォームMQBにフィットするように作られているという話だが、すでにVWは日本市場に『パサート』、『トゥーラン』、『ティグアン』と、このエンジンを導入している。いずれも2リットルエンジンだが全く同じかと言うとそうではなく、チューニングはそれぞれ微妙に異なっている。ゴルフに搭載されるものは最もマイルドな仕様のもので、2リットルながら150ps、340Nmと数値の上ではだいぶ大人しめの設定である。
しかし最近常々思うことは、机上の性能で果たしてユーザーがクルマを選ぶのだろうかという点。勿論、今だって性能が良いに越したことはない。昔なら1psのパワーの低さが致命的な印象を与えた時代もあったし、メーカーもたった100cc大きなエンジンを積んだだけで、「隣のクルマが小さく見えます」などというキャッチフレーズを堂々とコマーシャルで使った時代もあった。
しかし今、性能は十分過ぎるし、どんなクルマでも必ず法規で定められた以上のスピードも出るし、流れに乗れないほどの加速の悪さを示すクルマもない。だから性能自体が武器になる時代ではないと思っている。なので、ゴルフに搭載された150ps、340Nmはこれで性能は十分である。
ではその性能を持ったゴルフディーゼルは、一体どんな走りをするのか?感じた点は3つ。一つは乗り味がだいぶマイルドな印象を受けたこと。しっとり感のある乗り心地とでも言おうか。2つ目はとてもバランスが良く、全くやんちゃさを持たない大人のクルマであるという印象。そして3つ目はディーゼルの割には活発で回転を上げて走ることに愉しみを感じさせる仕様だということだ。
◆エンジンの重さがもたらしたバランス
3つ目の話から行くと、最近のターボディーゼルはとにかく低速トルクがあり、極低速からもりもりと力強い加速をしてくれるクルマが多く、ズボラな運転でOK。ところがこのゴルフは勿論それでもOKだが、回転を上げていってレブリミットいっぱいを使って加速しても苦しげな音もたてないし、驚いたことにDSGをマニュアル状態にして乗っても楽しめる。つまりマニュアル操作が楽しい数少ないディーゼルだともいえる。
2つ目のやんちゃさが無いというのは、ワインディングを飛ばしてみるとシャープなシャキッとしたハンドリング性能ではなく、少しマイルドで柔和な印象のハンドリングを持つ点。穏やかというか、乗り心地に合っている全体のバランスがとても良い印象だったもの。
試乗を終えて聞いてみると、フロントアクスルの軸重はガソリン車と比べて90kg重いそうで、それが運動性能に影響を与えていることは間違いない。2番目の話と3番目の話に齟齬があるようにも感じられてしまうが、結局のところ少し頑張って走ろうとするとやはり少しパフォーマンスが足りず、だからマニュアルで引っ張りたくなって、でもエンジンはきっちりと高回転域までスムーズに回るし、そこまで持って行けば性能的満足感も得られるという話だ。
1つ目の乗り心地が良いという点もやはり重さが関係しているのだと思う。どっしり感はガソリン車よりも上だ。何よりモデル末期で全体的に完成しつくされたボディや駆動系を持つモデルだから、すこぶるバランスが良いのだと思う。だから今これを買っても、満足度は十分高いと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
満を持してという表現が正しいかどうかわからないが、VWがついに主力モデル『ゴルフ』のTDI、即ちディーゼルエンジンを搭載して市場導入した。
何故、満を持してという表現が適当でないかと言うと、現行ゴルフは俗にゴルフ7と呼ばれる7世代目のモデル。日本に導入されたのは2013年のことで、誕生はその前年だからすでに7年が経過した。しかもすでに本国では頻繁に次期モデルのスクープ写真が流失し、間もなくデビューすると言われている。つまりモデル末期である。あと1年待てば新しいゴルフ8のディーゼルだって出るかもしれない。そんなわけだから実際には満を持してではないのかもしれない。
とはいえ、このクルマを待っていたユーザーは間違いなく多い。ゴルフは初代からディーゼルの設定があり、2代目まで販売され人気を博していた。2代目では「GTD」などとも呼ばれ、何となく高性能ディーゼルのイメージすら漂っていたのである。
昨今、日本の輸入車市場は実はディーゼルが大流行り、とりわけSUV系では販売されるモデルの多くが、ディーゼル比率7割近くを誇っているかあるいはそれを超えている。だから正直言えば、ディーゼルを投入しない事はみすみす販売を逃すことにも直結していると言って過言ではない状況なのだ。それがモデル末期のゴルフ7にディーゼルを追加投入した原動力だと感じている。
◆数値はだいぶ大人しめ、だが必要十分な性能
ゴルフに搭載されたディーゼルユニットはEA288と呼ばれるもので、現行ゴルフが使用しているプラットフォームMQBにフィットするように作られているという話だが、すでにVWは日本市場に『パサート』、『トゥーラン』、『ティグアン』と、このエンジンを導入している。いずれも2リットルエンジンだが全く同じかと言うとそうではなく、チューニングはそれぞれ微妙に異なっている。ゴルフに搭載されるものは最もマイルドな仕様のもので、2リットルながら150ps、340Nmと数値の上ではだいぶ大人しめの設定である。
しかし最近常々思うことは、机上の性能で果たしてユーザーがクルマを選ぶのだろうかという点。勿論、今だって性能が良いに越したことはない。昔なら1psのパワーの低さが致命的な印象を与えた時代もあったし、メーカーもたった100cc大きなエンジンを積んだだけで、「隣のクルマが小さく見えます」などというキャッチフレーズを堂々とコマーシャルで使った時代もあった。
しかし今、性能は十分過ぎるし、どんなクルマでも必ず法規で定められた以上のスピードも出るし、流れに乗れないほどの加速の悪さを示すクルマもない。だから性能自体が武器になる時代ではないと思っている。なので、ゴルフに搭載された150ps、340Nmはこれで性能は十分である。
ではその性能を持ったゴルフディーゼルは、一体どんな走りをするのか?感じた点は3つ。一つは乗り味がだいぶマイルドな印象を受けたこと。しっとり感のある乗り心地とでも言おうか。2つ目はとてもバランスが良く、全くやんちゃさを持たない大人のクルマであるという印象。そして3つ目はディーゼルの割には活発で回転を上げて走ることに愉しみを感じさせる仕様だということだ。
◆エンジンの重さがもたらしたバランス
3つ目の話から行くと、最近のターボディーゼルはとにかく低速トルクがあり、極低速からもりもりと力強い加速をしてくれるクルマが多く、ズボラな運転でOK。ところがこのゴルフは勿論それでもOKだが、回転を上げていってレブリミットいっぱいを使って加速しても苦しげな音もたてないし、驚いたことにDSGをマニュアル状態にして乗っても楽しめる。つまりマニュアル操作が楽しい数少ないディーゼルだともいえる。
2つ目のやんちゃさが無いというのは、ワインディングを飛ばしてみるとシャープなシャキッとしたハンドリング性能ではなく、少しマイルドで柔和な印象のハンドリングを持つ点。穏やかというか、乗り心地に合っている全体のバランスがとても良い印象だったもの。
試乗を終えて聞いてみると、フロントアクスルの軸重はガソリン車と比べて90kg重いそうで、それが運動性能に影響を与えていることは間違いない。2番目の話と3番目の話に齟齬があるようにも感じられてしまうが、結局のところ少し頑張って走ろうとするとやはり少しパフォーマンスが足りず、だからマニュアルで引っ張りたくなって、でもエンジンはきっちりと高回転域までスムーズに回るし、そこまで持って行けば性能的満足感も得られるという話だ。
1つ目の乗り心地が良いという点もやはり重さが関係しているのだと思う。どっしり感はガソリン車よりも上だ。何よりモデル末期で全体的に完成しつくされたボディや駆動系を持つモデルだから、すこぶるバランスが良いのだと思う。だから今これを買っても、満足度は十分高いと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
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パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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