【日産 スカイライン 新型試乗】プロパイロット2.0、エンジニアのセンスと熱意に敬意…島崎七生人

日産 スカイライン GT Type SP(ハイブリッド)
◆プロパイロット2.0の“腕前”は

車載の取説は束(=つか。本の厚み)23mm/612ページ。その中で「プロパイロット2.0」の記述は「運転のしかた」→「運転支援機能」の項目のひとつとして85ページが割かれている。

実際の市販車に“クイックマニュアル”があればいいが、そこだけでも“読了”にはかなりの時間を要する。まして動的な事象のあれこれを分解された静的な文面で読んでもなかなか頭に入ってこない。そこで何はともあれ「プロパイロット2.0」の“腕前”はどうか、実走のなかで試してみた。

結論からいうと「実際のドライブにおいてかなり有効」と思えた。今回、借り出した試乗車での試乗距離は250kmほど。このうちのおよそ半分が高速道路の走行で、プロパイロット2.0を積極的に使おうと心がけたところ、走り終えて行程のざっと6~7割以上はプロパイロット2.0に任せて走れたのではないだろうか……そんな感覚だった。

◆日産のエンジニアのセンスと熱意には敬意


もちろん織り込まれている機能のすべてを確認できた訳ではなく、コチラの操作の“慣れ”が必要な車線変更や分岐、オフランプなどでのプロパイロット2.0の所作、作動具合は、感触を掴む程度に留まった。とはいえたとえば通常のACCと同様に、クルマが高速巡航に入り安定したらスイッチで機能をオンにし速度をセット(表示上90km/hまで可能)をてからの自動運転の質の高さは目を見張るものがある。

とくにメーター表示内の“ハンドルマーク”が緑から青色に変わり、ハンズオフが可能になってからも、前輪やステアリングが小刻みな修正を行なっている気配をほとんど伝えず、しっとりと自車の走行ラインをトレースしてくれるのがいい。カーブにさしかかっても、上手なドライバーのようにさり気なく舵を当てていき、さり気なく戻す。

アクセルワークもぎこちなさはもはや皆無で、自然にスピードを一定に保ってくれるが、これもシステムが3D地図をしっかり読み込んでいるからこそだろう。たとえ長距離ドライブでもドライバーの負担、疲労を相当に軽減してくれるに違いない。機会があればもっと走り込みたいが、いずれにしろ体験するとその快適さ、良さ、凄さが実感でき、これをモノにした日産のエンジニアのセンスと熱意には敬意を表わしたいとも思った。

◆上級セダンらしいエレガントな走り


試乗車はハイブリッドで、EVモードでの走行も、充電状態に余裕がある限り、頻繁にしっかりと実行できる。今回は神経質な燃費運転はしかなったが、走行モードの“eco”もしばしば使いながら試乗し、計算すると13.4km/リットルの燃費を確認した。そもそも搭載エンジンはV6の3.5リットルであり、上級セダンらしいエレガントな走りを実現。乗り味、挙動も十分に洗練されたものだ。

駐車スピードでフルロック近くになるとステアリングがスッと軽くなる感触はまだ残っているが、最新型ではクルマ全体の振る舞いがより上質に磨き上げられた印象をもった。

それとラインオプションで装着されるBOSEのオーディオシステムも好印象だった。最近の流れでフロントに中音域を受け持つスコーカーがドア中ほどに組み込まれ、これが効いてiPodから音源以上では!?と思わせる音の描写が引き出されているし、ドライバー席以外でも同等の充実したサウンドが楽しめる点が特徴だ。

しっかりと身体に馴染むシートもいい。ジェントルでクールな大人のセダンといったところか。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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