【マツダ3 新型試乗】まるでドイツ車のような“懐の深い”走り…片岡英明
◆遠くからでも目を引くデザインに
2003年秋にマツダの主力ファミリーカーとして登場したのがアクセラだ。その4代目は、車名を海外モデルと同じ『マツダ3』に変え、5ドアのアクセラスポーツは「ファストバック」を名乗った。
その市販モデルはキュートなデザインで、遠くからでも目をひく。最初にステアリングを握ったのは、筒内直接噴射を採用した2.0Lのガソリンエンジン(SKYACTIV-G)搭載車である。トランスミッションは6EC-ATと呼ぶ電子制御6速ATで、駆動方式は前輪駆動のFFだ。
走り出す前に着座位置を決め、ステアリングの高さと奥行きを調整した。形状と構造を変えたフロントシートはドライバーをしっかりとホールドしてくれる。ステアリングの調整幅も大きいからベストポジションを取ることができた。アクセラよりペダル配置もよくなっている。シートもペダル配置もよくなっているからロングドライブでも疲れにくいだろう。また、3眼メーターは大径のスピードメーターも両脇のメーターも見やすく、判読性も優れていた。
◆平凡な広さだが、上質ムードで居心地良し
アクセラと比べるとホイールベースは25mm延びている。だが、キャビンはアクセラ並みの平凡な広さだ。インプレッサほど広くない。が、居心地がいいし、上質ムードなのが魅力である。後席は囲まれ感が強く落ち着くが、ドライバーは斜め後方の確認に気を遣う。また、ドア形状が違うため乗り降りのしやすさも4ドアセダンに一歩譲る。ラゲッジルームもデザイン優先のしわ寄せて平凡な広さにとどまった。
2.0L直列4気筒DOHCの直噴エンジンは115kW(156ps)/199Nm(20.3kg-m)を発生する。軽やかなパワーフィーリングで、その気になれば6000回転まで使い切ることができた。低回転域のトルクはディーゼルターボより細いが、街中でも扱いやすい。6速ATは変作レスポンスが鋭く、つながりも滑らかだ。クルージング時の静粛性もクラスレベルを大きく超えている。タイヤのパターンノイズが耳障りと感じるほど、室内は快適だった。スポーティさの演出なのだろう。一気に加速し、高回転になるとエンジン音が高まるが、この味付けはもう少し控えめでもいいのかな。
◆感銘を受ける“ハンドリング”
感銘を受けたのはハンドリングだ。リアサスペンションをトーションビームにしているが、リアの接地フィールは文句なしである。先入観を持たなければ粗探しすることは難しい。プロトタイプに乗ったときにも感じたが、ドイツ車のように懐の深い走りを見せつけた。市販モデルも正確なハンドリングと精緻な操舵フィーリングを身につけ、意のままの気持ちいい走りを楽しむことができる。ストロークを十分に確保し、フラットな姿勢を保ったまま気持ちよくクルマが向きを変えるのだ。
コーナリングしているときにエンジンのトルクを少し絞り、荷重移動を速やかに行うことによって前輪の接地性を高め、旋回しやすくする車両安定制御のGVC(Gベクタリングコントロール)プラスの効果は絶大で、コーナリングしている途中から直進に戻るときの挙動が安定している。運転がうまくなったように感じるのだ。
4WDのディーゼルターボと比べても鼻先は軽やかで、攻め込んでいってもコントロールしやすい。シビックほどシャープに曲がるわけではないが、一体感のあるコーナリングを見せるから操るのが楽しいのだ。また、ブレーキの制動フィールもよかった。踏み込んだときにリニアに制動が立ち上がり、ストローク量も上手にチューニングしている。
舗装のいい路面では乗り心地もよかった。だが、荒れた路面では段差のショックを拾い、デコボコをドライバーに伝えてくる。とくにリアは突き上げを感じる場面があった。が、カドが取れているので深いと感じる場面は少ないだろう。今回はステアリングを握る機会はなかったが、気になっているのは1.5Lモデルだ。優れたシャシー性能を武器に、クラスを超えた上質な走りを期待できる。2.0Lモデルより買い得感がある価格設定だから魅力は大きいと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
2003年秋にマツダの主力ファミリーカーとして登場したのがアクセラだ。その4代目は、車名を海外モデルと同じ『マツダ3』に変え、5ドアのアクセラスポーツは「ファストバック」を名乗った。
その市販モデルはキュートなデザインで、遠くからでも目をひく。最初にステアリングを握ったのは、筒内直接噴射を採用した2.0Lのガソリンエンジン(SKYACTIV-G)搭載車である。トランスミッションは6EC-ATと呼ぶ電子制御6速ATで、駆動方式は前輪駆動のFFだ。
走り出す前に着座位置を決め、ステアリングの高さと奥行きを調整した。形状と構造を変えたフロントシートはドライバーをしっかりとホールドしてくれる。ステアリングの調整幅も大きいからベストポジションを取ることができた。アクセラよりペダル配置もよくなっている。シートもペダル配置もよくなっているからロングドライブでも疲れにくいだろう。また、3眼メーターは大径のスピードメーターも両脇のメーターも見やすく、判読性も優れていた。
◆平凡な広さだが、上質ムードで居心地良し
アクセラと比べるとホイールベースは25mm延びている。だが、キャビンはアクセラ並みの平凡な広さだ。インプレッサほど広くない。が、居心地がいいし、上質ムードなのが魅力である。後席は囲まれ感が強く落ち着くが、ドライバーは斜め後方の確認に気を遣う。また、ドア形状が違うため乗り降りのしやすさも4ドアセダンに一歩譲る。ラゲッジルームもデザイン優先のしわ寄せて平凡な広さにとどまった。
2.0L直列4気筒DOHCの直噴エンジンは115kW(156ps)/199Nm(20.3kg-m)を発生する。軽やかなパワーフィーリングで、その気になれば6000回転まで使い切ることができた。低回転域のトルクはディーゼルターボより細いが、街中でも扱いやすい。6速ATは変作レスポンスが鋭く、つながりも滑らかだ。クルージング時の静粛性もクラスレベルを大きく超えている。タイヤのパターンノイズが耳障りと感じるほど、室内は快適だった。スポーティさの演出なのだろう。一気に加速し、高回転になるとエンジン音が高まるが、この味付けはもう少し控えめでもいいのかな。
◆感銘を受ける“ハンドリング”
感銘を受けたのはハンドリングだ。リアサスペンションをトーションビームにしているが、リアの接地フィールは文句なしである。先入観を持たなければ粗探しすることは難しい。プロトタイプに乗ったときにも感じたが、ドイツ車のように懐の深い走りを見せつけた。市販モデルも正確なハンドリングと精緻な操舵フィーリングを身につけ、意のままの気持ちいい走りを楽しむことができる。ストロークを十分に確保し、フラットな姿勢を保ったまま気持ちよくクルマが向きを変えるのだ。
コーナリングしているときにエンジンのトルクを少し絞り、荷重移動を速やかに行うことによって前輪の接地性を高め、旋回しやすくする車両安定制御のGVC(Gベクタリングコントロール)プラスの効果は絶大で、コーナリングしている途中から直進に戻るときの挙動が安定している。運転がうまくなったように感じるのだ。
4WDのディーゼルターボと比べても鼻先は軽やかで、攻め込んでいってもコントロールしやすい。シビックほどシャープに曲がるわけではないが、一体感のあるコーナリングを見せるから操るのが楽しいのだ。また、ブレーキの制動フィールもよかった。踏み込んだときにリニアに制動が立ち上がり、ストローク量も上手にチューニングしている。
舗装のいい路面では乗り心地もよかった。だが、荒れた路面では段差のショックを拾い、デコボコをドライバーに伝えてくる。とくにリアは突き上げを感じる場面があった。が、カドが取れているので深いと感じる場面は少ないだろう。今回はステアリングを握る機会はなかったが、気になっているのは1.5Lモデルだ。優れたシャシー性能を武器に、クラスを超えた上質な走りを期待できる。2.0Lモデルより買い得感がある価格設定だから魅力は大きいと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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