【トヨタ RAV4 新型試乗】もっとも驚かされたのは、オンロードオフロードを問わない「曲がりやすさ」…青山尚暉
◆クロスオーバーSUVの元祖「RAV4」
今、世界的にブレークしているクロスオーバーSUVの元祖こそ、1994年に初代がデビューしたトヨタ『RAV4』新型である。以来、RAV4は世界的人気を博し、トヨタのドル箱となり、北米市場でのクロスオーバーSUV販売台数の半数を占めるほどに成長している。
この新型RAV4は、トヨタが満を持して平成の最後に登場させた5代目。ただし、これまでのクロスオーバー路線から脱却。TV CFやカタログを見ても分かる通り、荒野を行く本格クロスカントリー的な、硬派なSUVに生まれ変わったのである。開発陣に聞けば、「今、RAV4は北米を中心に世界的に勢いがある。だからこそできるチャレンジなのです」とのことだ。
まさにクロスカントリー風味満点のワイルドなエクステリアは全長4600(4610)mm×全幅1855(1860)mm×全高1685(1690)mm、ホイールベース2690mm(カッコ内はアドベンチャーグレード)。確かにインターナショナルサイズにはなっているものの、ライバルと比較しても、大きすぎない範囲と言っていいだろう。
パワーユニットはダイナミックフォースエンジンの2Lガソリン+ダイレクトシフトCVT、最新の2.5L+2モーターのHVを用意。より実燃費に近いWLTCモード燃費は4WDの場合、15.2km/L、20.6km/Lと、ライバルをリードする。
注目すべきは4WDシステムだ。特筆すべきはここで試乗したアドベンチャーグレードなど上級グレードに用意される世界初の「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」。後輪左右のトルクを別々に制御するトルクベクタリングコントロール&4WD不要の場合、後輪への動力伝達を切断して燃費を向上させるディスコネクト機構を備えた新技術。その作動は、常時、メーター中央のマルチインフォメーションディスプレーで確認可能で、4輪の緻密な制御を目で確認することもできるのだから楽しくも頼もしい。
ガソリン車にはオフロード用のMUD&SAND、ROCK&DIRT本格的なモード、急な下り坂で、ブレーキを踏まずにゆっくり安全に降坂できるヒルディセントコントロールも備わっている。ちなみに最低地上高は200mmと、なるほど、本格である。
◆安全装備、コネクテッドサービスも充実
多くのユーザーにとって、新型RAV4が本領を発揮するオフロード、悪路、雪道は、高速道路などを経た遠くにあることがほとんどだろう。そんな時、高速走行で威力を発揮するのが、最新の先進安全支援機能「トヨタセーフティセンス」に含まれるACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。その作動領域は渋滞追従を含む0~180km/hだから文句なしである(多くの国産車のACCは~115km/hまでと、高速制限速度120km/h時代に対応していない)。
さらに新型RAV4の新しさを強調するのが、Tコネクトナビゲーションの装備で可能になるオペレーターサービスとヘルプネットのSOSコールだ。これは走行中でもオペレーターにナビの目的地設定や、近くの飲食店の紹介などを通信で可能にしてくれるサービス。また、SOSコールは、万一、エアバッグが展開するような場面で、自動的にヘルプネットセンターに接続され、専任オペレーターの呼びかけに応じない場合は、救急・消防・ドクターヘリへ通報。速やかに対処してくれる。さらにあおり運転を受けたときなど、前席頭上にあるSOSコールボタンを押し、ヘルプネットセンターを呼び出し、警察へ連絡してもらうこともできるから安心である。
◆「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」を備えたアドベンチャー
さて、新型RAV4の「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」を備えたアドベンチャーグレードで走りだせば、まずは専用インテリア、シートのデザインセンスのよさ、シートのかけ心地の良さに感動である。2Lエンジンのスペックは170ps、21.1kg-mと控えめながら、エコモードでも十二分なトルク、加速力を発揮。スポーツモードにセットすれば、胸のすく加速を味わえる。
乗り心地も文句なしだ。アドベンチャーグレードは19インチのオールシーズンタイヤを履いているが、やや固めながらフラット感、快適感は見事で、荒れた路面、段差、穴などを乗り越えてもボディーはミシリともせず、低級音も皆無。カーブでの車体の傾きは最小限で、本格的な走破性を備えたクロスカントリーとして極めてスムーズな乗り味に満足することができた。
が、新型RAV4を走らせ、もっとも驚かされたのは、オンロード、オフロードを問わない「曲がりやすさ」である。例えばオンロードの山道で左カーブに勢い良く進入したとしよう。すると、通常の4WDであれば、後左右輪から押される感覚なのに対して、「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」装着車の場合、その機能がより機能的に働くスポーツモードを選択しておけば、右後輪が積極的に駆動し、押し出し、曲がりやすさをアシストしてくれる感覚なのである。結果、スポーティーな走りであればあるほど、気持ち良く痛快にグイグイ曲がってくれるのだ。
◆オフロードでも絶大なる威力
一方、特設コースで試したオフロード走行でも、「スポーツモード」×「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」の絶大なる威力を体感。ダート路で急ハンドルを切るようなシーンでも、クルマは外側にふくらまず、カウンターステアを当てることなく、狙い通りのラインを走破してくれるのだからびっくりである。モーグル路での4輪のサスペンションが生き物のように伸縮し、走破できる本格クロカンとしての実力も見事だった。
新型RAV4の売れ筋は買いやすいXグレードが中心になるはずだが、しかし、あえて新型RAV4を選ぶなら、荒野&悪路の”ハンドリングマシン”とでも呼びたい!? 「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」が備わるアドベンチャー、およびG Zパッケージが理想的だと思える。その2トーンのボディーカラーがお薦めである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータの蓄積は膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍も手がけ、また、愛犬とのカーライフに関するテレビ番組、ラジオ番組、イベントに出演。愛犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 青山尚暉)
今、世界的にブレークしているクロスオーバーSUVの元祖こそ、1994年に初代がデビューしたトヨタ『RAV4』新型である。以来、RAV4は世界的人気を博し、トヨタのドル箱となり、北米市場でのクロスオーバーSUV販売台数の半数を占めるほどに成長している。
この新型RAV4は、トヨタが満を持して平成の最後に登場させた5代目。ただし、これまでのクロスオーバー路線から脱却。TV CFやカタログを見ても分かる通り、荒野を行く本格クロスカントリー的な、硬派なSUVに生まれ変わったのである。開発陣に聞けば、「今、RAV4は北米を中心に世界的に勢いがある。だからこそできるチャレンジなのです」とのことだ。
まさにクロスカントリー風味満点のワイルドなエクステリアは全長4600(4610)mm×全幅1855(1860)mm×全高1685(1690)mm、ホイールベース2690mm(カッコ内はアドベンチャーグレード)。確かにインターナショナルサイズにはなっているものの、ライバルと比較しても、大きすぎない範囲と言っていいだろう。
パワーユニットはダイナミックフォースエンジンの2Lガソリン+ダイレクトシフトCVT、最新の2.5L+2モーターのHVを用意。より実燃費に近いWLTCモード燃費は4WDの場合、15.2km/L、20.6km/Lと、ライバルをリードする。
注目すべきは4WDシステムだ。特筆すべきはここで試乗したアドベンチャーグレードなど上級グレードに用意される世界初の「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」。後輪左右のトルクを別々に制御するトルクベクタリングコントロール&4WD不要の場合、後輪への動力伝達を切断して燃費を向上させるディスコネクト機構を備えた新技術。その作動は、常時、メーター中央のマルチインフォメーションディスプレーで確認可能で、4輪の緻密な制御を目で確認することもできるのだから楽しくも頼もしい。
ガソリン車にはオフロード用のMUD&SAND、ROCK&DIRT本格的なモード、急な下り坂で、ブレーキを踏まずにゆっくり安全に降坂できるヒルディセントコントロールも備わっている。ちなみに最低地上高は200mmと、なるほど、本格である。
◆安全装備、コネクテッドサービスも充実
多くのユーザーにとって、新型RAV4が本領を発揮するオフロード、悪路、雪道は、高速道路などを経た遠くにあることがほとんどだろう。そんな時、高速走行で威力を発揮するのが、最新の先進安全支援機能「トヨタセーフティセンス」に含まれるACC(アダプティブクルーズコントロール)だ。その作動領域は渋滞追従を含む0~180km/hだから文句なしである(多くの国産車のACCは~115km/hまでと、高速制限速度120km/h時代に対応していない)。
さらに新型RAV4の新しさを強調するのが、Tコネクトナビゲーションの装備で可能になるオペレーターサービスとヘルプネットのSOSコールだ。これは走行中でもオペレーターにナビの目的地設定や、近くの飲食店の紹介などを通信で可能にしてくれるサービス。また、SOSコールは、万一、エアバッグが展開するような場面で、自動的にヘルプネットセンターに接続され、専任オペレーターの呼びかけに応じない場合は、救急・消防・ドクターヘリへ通報。速やかに対処してくれる。さらにあおり運転を受けたときなど、前席頭上にあるSOSコールボタンを押し、ヘルプネットセンターを呼び出し、警察へ連絡してもらうこともできるから安心である。
◆「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」を備えたアドベンチャー
さて、新型RAV4の「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」を備えたアドベンチャーグレードで走りだせば、まずは専用インテリア、シートのデザインセンスのよさ、シートのかけ心地の良さに感動である。2Lエンジンのスペックは170ps、21.1kg-mと控えめながら、エコモードでも十二分なトルク、加速力を発揮。スポーツモードにセットすれば、胸のすく加速を味わえる。
乗り心地も文句なしだ。アドベンチャーグレードは19インチのオールシーズンタイヤを履いているが、やや固めながらフラット感、快適感は見事で、荒れた路面、段差、穴などを乗り越えてもボディーはミシリともせず、低級音も皆無。カーブでの車体の傾きは最小限で、本格的な走破性を備えたクロスカントリーとして極めてスムーズな乗り味に満足することができた。
が、新型RAV4を走らせ、もっとも驚かされたのは、オンロード、オフロードを問わない「曲がりやすさ」である。例えばオンロードの山道で左カーブに勢い良く進入したとしよう。すると、通常の4WDであれば、後左右輪から押される感覚なのに対して、「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」装着車の場合、その機能がより機能的に働くスポーツモードを選択しておけば、右後輪が積極的に駆動し、押し出し、曲がりやすさをアシストしてくれる感覚なのである。結果、スポーティーな走りであればあるほど、気持ち良く痛快にグイグイ曲がってくれるのだ。
◆オフロードでも絶大なる威力
一方、特設コースで試したオフロード走行でも、「スポーツモード」×「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」の絶大なる威力を体感。ダート路で急ハンドルを切るようなシーンでも、クルマは外側にふくらまず、カウンターステアを当てることなく、狙い通りのラインを走破してくれるのだからびっくりである。モーグル路での4輪のサスペンションが生き物のように伸縮し、走破できる本格クロカンとしての実力も見事だった。
新型RAV4の売れ筋は買いやすいXグレードが中心になるはずだが、しかし、あえて新型RAV4を選ぶなら、荒野&悪路の”ハンドリングマシン”とでも呼びたい!? 「ダイナミックトルクベクタリングコントロール」が備わるアドベンチャー、およびG Zパッケージが理想的だと思える。その2トーンのボディーカラーがお薦めである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
ペットフレンドリー度:★★★★
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