【日産 スカイライン 新型試乗】敢えて手を離して運転する意味はないけれど…中村孝仁
◆肝はプロパイロット2.0のみ、だけど
我々モータージャーナリストのために、自動車メーカーは事前説明会というのを開いてくれる。発表よりもさらに前に行われて、多くの場合そこで写真撮影などが行われる。
コスメティック的に大きく変わっていれば、そこで写真を撮って発表のタイミングで公表すれば、それは価値がある。でも今度のスカイライン…その事前説明会に行ってみたのだが、クルマを見て??どこが変わったの?という感じだった。
つまり、ガワ的にはほとんど変化なし。顔つきが日産的ないわゆるVシェイプのグリルが付いた程度。それに伴ってこれまでインフィニティのエンブレムを付けていたのが、二ッサンエンブレムに変わった。ガワが変わっていないということは、基本的に骨格も一緒。なのでフォルムも変わらない。おいおい、何で事前説明なんてするの?って思ったものだが、肝はプロパイロット2.0と称する新時代のプロパイロットであった。
なので、試乗でも基本そいつを試せば役割の大半は終えると言っても過言ではない。と言ってしまうとあまりに可哀想なので、少し新しいスカイラインの試乗イメージをお伝えしようと思う。
◆エンジンは滑らかで静か。足回りは
俗に言うDセグメントのセダンということになると思うが、あぁた!今回の試乗車「GT タイプSP」と名付けられたハイブリッド車のお値段、知ってますか?何せ604万8000円ですぞ!それも一切のオプション付けず!オプション付けて乗り出し価格想像すると優に700万円。いやぁ…日本車も高くなったとつくづく思う。私のような庶民じゃとても手なんか出ません。比較対象だって同じDセグメントの相当いいクルマ、例えばメルセデスベンツ『Cクラス』だったリBMW『3シリーズ』の上級グレードに手が届くと言っても過言じゃありません。
と、まずはお値段にビックリして頂いたところでいざ走り出してみると、室内はとっても静か。まあ、ハイブリッド車ですから、乗り出してすぐはまずエンジンかかってないし、実際エンジンがかかったところで、そのころにはロードノイズだのウィンドノイズだの余計な音がいっぱい出ているのでエンジン音などほとんど耳に届かないレベル。とはいえやはりエンジンを回した時の感触などは確かめてみたいと、敢えてしっかりエンジンが回る状態にしてみると、3.5リットルV6はとってもスムーズで滑らかな印象。
ターボの付いた高性能版はもっと面白いらしいが、今回はこのハイブリッドだけ。内装も十分豪華だし、作り込みも不満なところはなかった。でも、敢えて言わせていただければ乗り心地はもう少し改善して欲しいと思う。というのも、全身バネのアスリートのような骨格を持っていて、ガチガチにハードボイルド。足の締まり具合も同様。だから、しなやかさが正直言えば微塵もない。常に上下に揺すられている印象で、試乗会が終わってから1週間ほどお借りして乗り込んでみたが、長距離を走ると意外と疲れることもわかった。
◆ACCの性能としては「見事!」
で、もうすでに多くのメディアが紹介しているプロパイロット2.0。BMWも3シリーズで「うちもハンズオフできます」とやっているが、当然ながらどちらも条件付きで、クルマの方で放棄することだってある。でも、東名高速を横浜青葉で乗って厚木までは間違いなく手放し運転で行くことが出来た。まあ、敢えて手放しをする意味はないと思うが、将来的な自動運転に繋がる技術であることは間違いないと思う。
今回のプロパイロット2.0で最も優れていると思えた点は、車線の維持とコーナーにおけるステアリングの切り方。特に後者に関しては、今あるACCの中でもベスト。このステアリングの切り方という点だけにおいては、メルセデスやボルボよりも上だと思う。
すでにACC装備の車にお乗りで、10秒以上手は離せないけど、カーブでどうステアリングを切るか試した読者もいらっしゃるかもしれないが、ほとんどのACC装備車は、コーナリング中に微修正をしながらステアリングが動いているはずだ。つまりちょっと切ってちょっと戻しての繰り返し。ところがスカイラインのACCは、ほとんどF1ドライバー並みにまず修正が入らず見事なほどスムーズにステアリングを切ってくれた。これは何度試してもそうだったから間違いない。車線維持も見事である。
ただ、敢えて手を離すことに拘った結果であろうが、こちらも見事なほどの順法精神旺盛な仕上がりになっていた。とある区間で、設定速度(一応法定速度+10km/hまで設定できる)90km/hで走っていたら、突然減速をし始めてあれよあれよという間に60km/h程度に落ち、流石に危険を感じてオーバーライドしたが、その先で工事区間の50km/h表示が出てこれに反応したらしい。
とにかく律儀で真面目。ナビと連動させると、ちゃんと側道に曲がって行ってくれるけど、入った瞬間に40km/hに減速する。やはりこのあたりは相当危険で追突の恐れがあるから、そこまで行ったらちゃんとドライバーが介入した方が良い。ひどいところでは最終的に20km/hに落とせなんて言うところすらあって、現実と表示される法定速度との間に乖離があることを痛感させられる。
というわけで、プロパイロット2.0の出来は正直素晴らしく良いけれど、使える場所は結構限定されるということだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
我々モータージャーナリストのために、自動車メーカーは事前説明会というのを開いてくれる。発表よりもさらに前に行われて、多くの場合そこで写真撮影などが行われる。
コスメティック的に大きく変わっていれば、そこで写真を撮って発表のタイミングで公表すれば、それは価値がある。でも今度のスカイライン…その事前説明会に行ってみたのだが、クルマを見て??どこが変わったの?という感じだった。
つまり、ガワ的にはほとんど変化なし。顔つきが日産的ないわゆるVシェイプのグリルが付いた程度。それに伴ってこれまでインフィニティのエンブレムを付けていたのが、二ッサンエンブレムに変わった。ガワが変わっていないということは、基本的に骨格も一緒。なのでフォルムも変わらない。おいおい、何で事前説明なんてするの?って思ったものだが、肝はプロパイロット2.0と称する新時代のプロパイロットであった。
なので、試乗でも基本そいつを試せば役割の大半は終えると言っても過言ではない。と言ってしまうとあまりに可哀想なので、少し新しいスカイラインの試乗イメージをお伝えしようと思う。
◆エンジンは滑らかで静か。足回りは
俗に言うDセグメントのセダンということになると思うが、あぁた!今回の試乗車「GT タイプSP」と名付けられたハイブリッド車のお値段、知ってますか?何せ604万8000円ですぞ!それも一切のオプション付けず!オプション付けて乗り出し価格想像すると優に700万円。いやぁ…日本車も高くなったとつくづく思う。私のような庶民じゃとても手なんか出ません。比較対象だって同じDセグメントの相当いいクルマ、例えばメルセデスベンツ『Cクラス』だったリBMW『3シリーズ』の上級グレードに手が届くと言っても過言じゃありません。
と、まずはお値段にビックリして頂いたところでいざ走り出してみると、室内はとっても静か。まあ、ハイブリッド車ですから、乗り出してすぐはまずエンジンかかってないし、実際エンジンがかかったところで、そのころにはロードノイズだのウィンドノイズだの余計な音がいっぱい出ているのでエンジン音などほとんど耳に届かないレベル。とはいえやはりエンジンを回した時の感触などは確かめてみたいと、敢えてしっかりエンジンが回る状態にしてみると、3.5リットルV6はとってもスムーズで滑らかな印象。
ターボの付いた高性能版はもっと面白いらしいが、今回はこのハイブリッドだけ。内装も十分豪華だし、作り込みも不満なところはなかった。でも、敢えて言わせていただければ乗り心地はもう少し改善して欲しいと思う。というのも、全身バネのアスリートのような骨格を持っていて、ガチガチにハードボイルド。足の締まり具合も同様。だから、しなやかさが正直言えば微塵もない。常に上下に揺すられている印象で、試乗会が終わってから1週間ほどお借りして乗り込んでみたが、長距離を走ると意外と疲れることもわかった。
◆ACCの性能としては「見事!」
で、もうすでに多くのメディアが紹介しているプロパイロット2.0。BMWも3シリーズで「うちもハンズオフできます」とやっているが、当然ながらどちらも条件付きで、クルマの方で放棄することだってある。でも、東名高速を横浜青葉で乗って厚木までは間違いなく手放し運転で行くことが出来た。まあ、敢えて手放しをする意味はないと思うが、将来的な自動運転に繋がる技術であることは間違いないと思う。
今回のプロパイロット2.0で最も優れていると思えた点は、車線の維持とコーナーにおけるステアリングの切り方。特に後者に関しては、今あるACCの中でもベスト。このステアリングの切り方という点だけにおいては、メルセデスやボルボよりも上だと思う。
すでにACC装備の車にお乗りで、10秒以上手は離せないけど、カーブでどうステアリングを切るか試した読者もいらっしゃるかもしれないが、ほとんどのACC装備車は、コーナリング中に微修正をしながらステアリングが動いているはずだ。つまりちょっと切ってちょっと戻しての繰り返し。ところがスカイラインのACCは、ほとんどF1ドライバー並みにまず修正が入らず見事なほどスムーズにステアリングを切ってくれた。これは何度試してもそうだったから間違いない。車線維持も見事である。
ただ、敢えて手を離すことに拘った結果であろうが、こちらも見事なほどの順法精神旺盛な仕上がりになっていた。とある区間で、設定速度(一応法定速度+10km/hまで設定できる)90km/hで走っていたら、突然減速をし始めてあれよあれよという間に60km/h程度に落ち、流石に危険を感じてオーバーライドしたが、その先で工事区間の50km/h表示が出てこれに反応したらしい。
とにかく律儀で真面目。ナビと連動させると、ちゃんと側道に曲がって行ってくれるけど、入った瞬間に40km/hに減速する。やはりこのあたりは相当危険で追突の恐れがあるから、そこまで行ったらちゃんとドライバーが介入した方が良い。ひどいところでは最終的に20km/hに落とせなんて言うところすらあって、現実と表示される法定速度との間に乖離があることを痛感させられる。
というわけで、プロパイロット2.0の出来は正直素晴らしく良いけれど、使える場所は結構限定されるということだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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