【トヨタ カローラ 新型試乗】もはや「大衆車」なんて死語は当てはまらない…中村孝仁
◆ようやく登場した本命
ハッチバックモデルが投入された時、それを『カローラスポーツ』と呼んだ『カローラ』。約1年たって、“本命”が登場した。
誰もが薄々は感じていたかもしれないけれど、スポーツが誕生した時その車幅は1700mmを超え、ついに3ナンバー化された。ただ、あくまでそれはスポーツだからという言い訳もたったのだが、本命のセダンもついに3ナンバー化された。
日本市場は以前からかなり厳格に、大衆車(そんなものは死語だが)は5ナンバーでないと…と言う暗黙の了解があったのだが、ついにそのかつては大衆車の王道を行っていたカローラがその掟を破った。これは正直かなりのニュースで、今後5ナンバーサイズが形骸化することは間違いない気がする。
◆日々進化するTNGAプラットフォーム
まあそんなことはさておき、新しいカローラはTNGAのGA-Cプラットフォームを採用したモデルである。このTNGA、これまでに乗ったどのクルマも、シャシーの良さを感じさせてくれるもので、とりわけ運動性能と乗り心地のバランスが良かった。しかもである。このプラットフォーム、日々進化しているらしく去年発売されたカローラスポーツが早くもマイナーチェンジされてサスペンションを最適化させたと言い、試乗会に新旧モデルを持ち込んで、その乗り味の違いを体験させてくれたのだ。
でその結果はと言うと、文言としてはライントレース性や旋回時の姿勢などが改良されているということだったが、それ以上に感じたのが、試乗会場から出てすぐのところにある段差を乗り越えた時の突き上げ感の違い。新しいものはやんわりしたものに変わっていて、顕著な違いが感じられた。もっとも、その突き上げ感自体がライバルと比較しても優れているかと言えばそこは、まだあと一息といった感じである。
今トヨタが重要視しているのは、こうした走りも確かにそうなのだろうがむしろ安全性やらコネクテッドの領域。今回のモデルからすべてのグレードで、7インチディスプレイオーディオが標準装備となったという。ダッシュ中央にでんと構えた立派なディスプレイだ。ここが起点となってオーディオ操作、ナビ操作、あるいはスマホと繋いで好きな音楽が聞けたりする。
つまり、移動空間としてどれだけエンタテイメント性を持たせることが出来て、かつ安全な移動が約束されるか…。今のクルマに求められる要素の中で最も重要なものはこのあたりに移ってしまって、内燃機関が奏でるサウンドだったリ、お尻で感じる走りの爽快感などは、ほぼ過去の遺物になりつつあると言っても過言ではない。
◆「脱・大衆車」化した自動車界の巨人
今回試乗したのは1.8リットルNAエンジンを搭載するガソリンモデル。今や主流派ハイブリッドなのだが、敢えてガソリンのしかもノンターボである。ハイブリッドとはメーターのレイアウトが異なっており、ガソリン仕様は3眼式でセンターにアナログのスピードメーター、左にやはりアナログのタコメーター、そして右はデジタルディスプレイとなっている。基本的にレイアウト自体はハイブリッドと変わらないが、どこにデジタルディスプレイを使っているかが異なり、また色使いなども異なる。
ところでこのエンジン、実にスムーズで必要十分なパワーを持っているのだが、高回転まで回していくと唸る。それも雑味のある唸り。ちっともセクシーじゃない。もはや誰もそんなものは求めていないのかもしれないが、ちょっと寂しい思いを感じた。自動車という乗り物はかつて五感で楽しむものと言われて育った身としては、やはり自動車という移動体が変革の時を迎えていることをひしひしと感じるわけである。
クルマの作り込みはとても上質で、冒頭書いた大衆車などという死語は間違いなく当てはまらない。試乗車はSというグレードのモデルで、トップグレードには付くリアシートのセンターアームレストやトランクスルー機能などが省かれている。
それにしても、少々データが古くて恐縮だが、カローラは50周年を迎えた2016年までに累計4400万台以上を販売し、トヨタが生産したクルマの5台に1台はカローラだというから自動車界の巨人であることは言うまでもない。このクルマにお世話になったユーザーがどれほどいるかと考えると、実に偉大である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
ハッチバックモデルが投入された時、それを『カローラスポーツ』と呼んだ『カローラ』。約1年たって、“本命”が登場した。
誰もが薄々は感じていたかもしれないけれど、スポーツが誕生した時その車幅は1700mmを超え、ついに3ナンバー化された。ただ、あくまでそれはスポーツだからという言い訳もたったのだが、本命のセダンもついに3ナンバー化された。
日本市場は以前からかなり厳格に、大衆車(そんなものは死語だが)は5ナンバーでないと…と言う暗黙の了解があったのだが、ついにそのかつては大衆車の王道を行っていたカローラがその掟を破った。これは正直かなりのニュースで、今後5ナンバーサイズが形骸化することは間違いない気がする。
◆日々進化するTNGAプラットフォーム
まあそんなことはさておき、新しいカローラはTNGAのGA-Cプラットフォームを採用したモデルである。このTNGA、これまでに乗ったどのクルマも、シャシーの良さを感じさせてくれるもので、とりわけ運動性能と乗り心地のバランスが良かった。しかもである。このプラットフォーム、日々進化しているらしく去年発売されたカローラスポーツが早くもマイナーチェンジされてサスペンションを最適化させたと言い、試乗会に新旧モデルを持ち込んで、その乗り味の違いを体験させてくれたのだ。
でその結果はと言うと、文言としてはライントレース性や旋回時の姿勢などが改良されているということだったが、それ以上に感じたのが、試乗会場から出てすぐのところにある段差を乗り越えた時の突き上げ感の違い。新しいものはやんわりしたものに変わっていて、顕著な違いが感じられた。もっとも、その突き上げ感自体がライバルと比較しても優れているかと言えばそこは、まだあと一息といった感じである。
今トヨタが重要視しているのは、こうした走りも確かにそうなのだろうがむしろ安全性やらコネクテッドの領域。今回のモデルからすべてのグレードで、7インチディスプレイオーディオが標準装備となったという。ダッシュ中央にでんと構えた立派なディスプレイだ。ここが起点となってオーディオ操作、ナビ操作、あるいはスマホと繋いで好きな音楽が聞けたりする。
つまり、移動空間としてどれだけエンタテイメント性を持たせることが出来て、かつ安全な移動が約束されるか…。今のクルマに求められる要素の中で最も重要なものはこのあたりに移ってしまって、内燃機関が奏でるサウンドだったリ、お尻で感じる走りの爽快感などは、ほぼ過去の遺物になりつつあると言っても過言ではない。
◆「脱・大衆車」化した自動車界の巨人
今回試乗したのは1.8リットルNAエンジンを搭載するガソリンモデル。今や主流派ハイブリッドなのだが、敢えてガソリンのしかもノンターボである。ハイブリッドとはメーターのレイアウトが異なっており、ガソリン仕様は3眼式でセンターにアナログのスピードメーター、左にやはりアナログのタコメーター、そして右はデジタルディスプレイとなっている。基本的にレイアウト自体はハイブリッドと変わらないが、どこにデジタルディスプレイを使っているかが異なり、また色使いなども異なる。
ところでこのエンジン、実にスムーズで必要十分なパワーを持っているのだが、高回転まで回していくと唸る。それも雑味のある唸り。ちっともセクシーじゃない。もはや誰もそんなものは求めていないのかもしれないが、ちょっと寂しい思いを感じた。自動車という乗り物はかつて五感で楽しむものと言われて育った身としては、やはり自動車という移動体が変革の時を迎えていることをひしひしと感じるわけである。
クルマの作り込みはとても上質で、冒頭書いた大衆車などという死語は間違いなく当てはまらない。試乗車はSというグレードのモデルで、トップグレードには付くリアシートのセンターアームレストやトランクスルー機能などが省かれている。
それにしても、少々データが古くて恐縮だが、カローラは50周年を迎えた2016年までに累計4400万台以上を販売し、トヨタが生産したクルマの5台に1台はカローラだというから自動車界の巨人であることは言うまでもない。このクルマにお世話になったユーザーがどれほどいるかと考えると、実に偉大である。
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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