【マツダ CX-30 新型試乗】しなやかさはマツダ3より“1枚半上手”…島崎七生人

マツダCX-30
◆SUV特有の圧迫感を感じない、姿のよさ

姿のいいSUVである。十分に練られたデザインだが、サラリと涼しげな佇まいは奥ゆかしく感じるほど。とはいえその“センス”は実はライバル他車とはひと味もふた味も違うものだから、もしも自分のクルマにしたなら、心地いい気分で乗りこなすことができそうだ。

SUV特有の圧迫感を感じないのは、1540mmに抑えられた車高と、着材の樹脂で出来たクラッディングパネル(汚れがつきにくい新しいシボなのだそう)を幅広にし、視覚的にボディを天地に薄く見せているから。全高は『CX-5』より150mmも低く『CX-3』と較べてもまだ10mm低い。


一方で側面視では、ルーフラインは後方に延ばしつつCピラーを寝かせる手法で、居住性はいじめず(あえてクーペ風とは言わないが)流麗に見えるキャビンを作っている。そのキャビンは後方から見ると『CX-5』や『CX-8』より明らかに絞り込まれ、相対的にリヤフェンダーが張り出し、シッカリとしたスタンスと、バックドアパネル部の抑揚、高い位置に置かれたリヤコンビランプが小気味いいルックスを見せている。

もちろん全長×全幅=4395×1795mm、ホイールベース2655mmと、『CX-5』と『CX-3』のちょうど中間に着地させたボディサイズの手頃感もいい。最小回転半径も5.3mと手頃なのも助かる。

◆おおらか、かつ、伸びやかなデザインのインテリア


インテリアはここ最近の“マツダ車クオリティ”で仕上げられている。『マツダ3』とは電子部品は共通であるなど根幹は同じだそうだが、インパネのアッパー側のデザインが両車で異なるのは、着座位置の違いごとにエアバッグの展開を考慮した結果のようだ。機能的な根拠を度外視すれば、『CX-30』のおおらか、かつ、伸びやかなデザインのほうが目に馴染む。

シートポジションは高すぎず、とはいえ視界は十分。居住スペースは後席も実用になる空間は確保されており、着座した際の収まり感のよさは、BMW『X2』を連想させるイメージ。6ライトの乗員の斜め後ろに設けられた“小窓”も、室内の明るさに貢献している。

トランクはカタログには430リットルと記されているが、床面は低めで十分に実用的で、床板の下にはサブトランクのスペースも設けられ、装着者であればここにBOSEのサブウーファーが収まる。

◆マツダ3より1枚半上手な挙動の穏やかさ


走りはスッキリと素直な印象だった。短時間ながら試乗できたのは、ディーゼルの4WDと2リットルのガソリン(FF)の2車だったが、とくにディーゼル(XD L Package)は、270Nmのトルクを発揮する1.8リットルのディーゼルターボにより、発進はスムースであり、そこからスピードを乗せていくのにもまったく無理はない。4WDで1530kgの車重とのマッチングも良好で、高速領域でもストレスなく運転していられる。

加速時のエンジン音も、そのボリュームは気にならない小ささ。快適でスムースな乗り味、挙動の穏やかさは『マツダ3』の1枚半上手。全車に標準装備の “GVCプラス”による車線変更時(やコーナリング時)の安定感の高さも、他車と乗り較べれば一目瞭然で実感できる。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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