【メルセデスベンツ EQC 新型試乗】“EVらしさ”よりも“メルセデスであること”にこだわった…島崎七生人

メルセデスベンツ EQC 400 4MATIC
『スマート』のEVに次ぎ、日本国内では初登場のEVのメルセデスベンツ(北米向けに先代『Bクラス』のEVがあった)。セダンではなくSUVで出してきた時代の読み方も絶妙だが、車両本体価格1080万円(消費全10%含む)だから、いずれにしても高級車の部類ではある。

実車は全長×全幅×全高=4761×1884×1623mmと、ベースでもある『GLC』より全長が少し長いといったたサイズ、2873mmのホイールベースは共通だ(数値はすべて欧州参考値)。だがランプとグリルを一体化させた“EQ”マスクは、ここ最近のスリークなメルセデス・ベンツのスタイリングと組み合わせられたことで、堂々とはしているが不必要な威圧感は感じない。

◆EV感や未来感より日常、現実に焦点を当てたクルマ


充電口は右リヤフェンダー部(普通充電)とバンパーコーナー部(CHAdeMO)に設置されている。仕様によりホイール等、外観の差はあるものの、写真の試乗車はホイールもブルーの挿し色などない普通のデザイン(ほかの専用デザインもある)。いかにもEVでござい……といったアピールはごく控えめなところが好ましい。

欧州参考値の仕様書によると、モーターは前後に2基搭載し、総合出力は408ps(300kW)、最大トルクは765N・m、常時出力115kW。容量80kWhのリチウムイオンバッテリーは、72セルモジュール×4、48セルモジュール×2を床下に収め、航続距離は400kmという。


乗り込んでみると、インテリアは上質な雰囲気。というより、スマートなカラーマルチファンクションディスプレイを用いたインパネなど、最新のメルセデスベンツ流であると同時に、EV感や未来感より日常、現実に焦点を当てたクルマであることが伝わってくる。前述のとおりバッテリーを床下に収めながら居住空間がいイジめられた形跡はなく、後席でも空調関係の調節が可能にしてあったりと、ファミリーユースの機能性、快適性も十分。ラゲッジスペースも『GLC』に大きく見劣りしない容量を確保している。

◆ワンペダルの自然さにもメルセデスらしいこだわり

実車を走らせて1番印象に残ったのは、とにかく静かでなめらかな走りだということ。車両重量2495kg(うちバッテリーは652kgという)であり、そのシズシズとした走りっぷりは重量級のクルマのそれだが、EVらしさより、メルセデスベンツの他のSUVや『Sクラス』とも共通のメルセデスベンツ上級モデルの一員であることのほうをまず実感させるドライバビリティが印象的だ。

もちろんアクセルを大きく踏み込めば強力な加速が得られるが、それでも背中を“蹴飛ばされる”というより“押される”範疇にあるといったらいいか(アクセル操作次第でもあるが……)。単純明快により思うがままの加速を示すEVもあるが、その点で『EQC』は極めてジェントルだ。また走行時にモーターを始めとしたメカニカルなノイズがほとんど気にならず、1名乗車の試乗ではさみしくなるほど(!)の静寂を保つ室内空間も、このクルマがラグジュアリー・ブランドのメルセデスベンツであることを実感させるという訳だ。


足を伸ばせばおそらく快適だろうが、『Sクラス』が昔からそうであるように、いわゆる車両感覚は掴みやすく、街中も神経を逆撫でされずに走らせていられる。ちなみにアクセルペダルの踏み加減により、いわゆるワンペダル的な操作も可能だが、アクセルを抜いていってもゆるやかにスピードは落ちるものの、完全停止はしっかりとブレーキを踏む必要がある。

よくあるワンペダルEVの急激な減速Gはなく、かといって空走感が伴うこともないが、スピードの落ちかたのごく自然な仕上がりは、これもEVであってもメルセデスベンツのこだわりと思える部分だ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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