【コペン GRスポーツ 新型試乗】まるで「カスタマイズのお手本」のようだ…佐藤久実
2002年に発売されたダイハツコペンは、「軽のオープン2シータースポーツ」という、発売当時としては唯一無二の存在であり、ファンの心を掴んだ。そして、現行モデルが発売されたのは2014年。その後、「Sグレード」が追加された。
今回、トヨタのGRブランドとのコラボレーションにより、『コペンGRスポーツ』の登場となった。トヨタ、ダイハツいずれも同じネーミング。さらに、各社のブランドエンブレムはなく、「コペン」のエンブレムが装着される。つまり、『86』/『BRZ』のような兄弟車ではなく、まったく同じものが、各々のディーラーで売られるのだ。
一般道及び駐車場に設けられたパイロンコースで試乗した。特にパイロンコースでは、ベースモデル、Sグレード、そしてGRスポーツの比較試乗ができたので、それぞれのキャラクターやチューニングの方向性がわかりやすかった。それとともに、「スポーツ」や「スポーティ」という表現がいかに広義な意味を持つか、ということも改めて認識した。なので、改めてSグレードのキャラクターからおさらいしておきたい。
◆「Sグレード」はサーキットで楽しいセッティング
MOMOのステアリング、RECAROのバケットシート、BBSホイール、そしてビルシュタインのダンパーと、スポーツアピールするのに非常にわかりやすいブランドモノを装着し、ルックスのデザイン性を高めるとともに機能性も向上させた。その乗り味はソリッドなもの。
サスペンションのレートはかなり高められ、スラロームやレーンチェンジではロールが抑えられたキビキビ感が際立つ。そのトレードオフとして、段差乗り越えでは、それなりの突き上げが見られる。コーナーを攻めても“ロールしない安心感”が得られる一方、バネレートが高いから荷重移動しにくく限界域の粘りは弱い。
一般道でも荒れた路面ではブルブルとしたボディの振動も見られる。つまり、路面が良いサーキットに持ち込んで走ると楽しいセッティング、とも言える。たとえば、週末、非日常を楽しみたいという人にオススメのモデルだ。
◆GRスポーツは日常からサーキットまでをカバーするスポーツモデル
GRスポーツは、「ローブ」をベースに、「ファンクショナルマトリクスグリル」が与えられ、凛々しいルックスとなっている。そして、ステアリング、シートには新たにGRのロゴも追加。タイヤ&ホイールもSグレードと同じだ。ダンパーはKYB製。そのキャラクターは、「日常域からサーキットまで楽しめるスポーツモデル」と言える。
まず、ボディにブレースを装着している。とはいえ、何%アップと謳えるほどボディ剛性は向上していないという。以前、ブレースの有無だけの比較試乗経験があるが、オープンカーなど、ボディ剛性が弱いほど効果が体感しやすい。コペンの場合、剛性アップというより、サスペンションも含め剛性パランスを見直したという表現が正しいかもしれない。
結果、剛性感は高まり、ブルブルした振動が減少している。特に、オープン時よりもクローズドの方がよりその恩恵が体感しやすく、ハンドリング以前に、走りの質感の向上が感じられる。
そして、サスペンションチューニングはしなやかな動きが印象的だ。段差乗り越えでもキツい突き上げがなく、タイヤは常に路面をしっかりと捉えている。
◆まるで「カスタマイズのお手本」のようなGRスポーツ
レーンチェンジでは適度なロールを許容しながらも踏ん張り感があり、左右の揺り返しも、フロントの旋回にリヤが素直に追従してつながりの良い動きだ。レーンチェンジでも、ヨーとロールのバランスの良さが感じられた。
そして、一般道でも路面からの入力をいなしながら気持ちよく走れる。足がスムースに動き、ハンドリングと乗り心地がバランスされたGRスポーツは、とんがったキャラクターではないため、日常からサーキットまで、街中から高速まで、あらゆるシーンでオープンスポーツを堪能できるクルマだ。
ブレースとサスペンションでこんなに乗り味が変わるんだー、という、カスタマイズのお手本のようなモデル。さらにいじって走って楽しめるように、今後、さらなるカスタマイズパーツの展開も望みたいところだ。
あるいは、フットワークが良くなると、当然、モアパワー!という欲望も出てくる。ダイハツには1リットルターボエンジンがある。このエンジンを載せたGRMNが登場したら面白いかも!なんてことも思ってしまった。いずれにしても、ニッチでディープなセグメントながら、今後も大事にクルマを育てていって欲しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
佐藤久実|モータージャーナリスト
大学在学中にレースデビュー。耐久レースをメインに活動。海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動。ホンダ・ドライビング・ミーティング、ポルシェ・ドライビング・スクール、BMWドライバートレーニング、VWエコドライブトレーニング、ブリヂストン・タイヤセーフティ・ドライビングレッスンなどでインストラクターを務める。レーシングドライバーとしてのホットな目、ジャーナリストとしてのクールな目、そして女性目線からクルマを評価、自動車専門誌への執筆をはじめWEBやテレビでも活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師。
(レスポンス 佐藤久実)
今回、トヨタのGRブランドとのコラボレーションにより、『コペンGRスポーツ』の登場となった。トヨタ、ダイハツいずれも同じネーミング。さらに、各社のブランドエンブレムはなく、「コペン」のエンブレムが装着される。つまり、『86』/『BRZ』のような兄弟車ではなく、まったく同じものが、各々のディーラーで売られるのだ。
一般道及び駐車場に設けられたパイロンコースで試乗した。特にパイロンコースでは、ベースモデル、Sグレード、そしてGRスポーツの比較試乗ができたので、それぞれのキャラクターやチューニングの方向性がわかりやすかった。それとともに、「スポーツ」や「スポーティ」という表現がいかに広義な意味を持つか、ということも改めて認識した。なので、改めてSグレードのキャラクターからおさらいしておきたい。
◆「Sグレード」はサーキットで楽しいセッティング
MOMOのステアリング、RECAROのバケットシート、BBSホイール、そしてビルシュタインのダンパーと、スポーツアピールするのに非常にわかりやすいブランドモノを装着し、ルックスのデザイン性を高めるとともに機能性も向上させた。その乗り味はソリッドなもの。
サスペンションのレートはかなり高められ、スラロームやレーンチェンジではロールが抑えられたキビキビ感が際立つ。そのトレードオフとして、段差乗り越えでは、それなりの突き上げが見られる。コーナーを攻めても“ロールしない安心感”が得られる一方、バネレートが高いから荷重移動しにくく限界域の粘りは弱い。
一般道でも荒れた路面ではブルブルとしたボディの振動も見られる。つまり、路面が良いサーキットに持ち込んで走ると楽しいセッティング、とも言える。たとえば、週末、非日常を楽しみたいという人にオススメのモデルだ。
◆GRスポーツは日常からサーキットまでをカバーするスポーツモデル
GRスポーツは、「ローブ」をベースに、「ファンクショナルマトリクスグリル」が与えられ、凛々しいルックスとなっている。そして、ステアリング、シートには新たにGRのロゴも追加。タイヤ&ホイールもSグレードと同じだ。ダンパーはKYB製。そのキャラクターは、「日常域からサーキットまで楽しめるスポーツモデル」と言える。
まず、ボディにブレースを装着している。とはいえ、何%アップと謳えるほどボディ剛性は向上していないという。以前、ブレースの有無だけの比較試乗経験があるが、オープンカーなど、ボディ剛性が弱いほど効果が体感しやすい。コペンの場合、剛性アップというより、サスペンションも含め剛性パランスを見直したという表現が正しいかもしれない。
結果、剛性感は高まり、ブルブルした振動が減少している。特に、オープン時よりもクローズドの方がよりその恩恵が体感しやすく、ハンドリング以前に、走りの質感の向上が感じられる。
そして、サスペンションチューニングはしなやかな動きが印象的だ。段差乗り越えでもキツい突き上げがなく、タイヤは常に路面をしっかりと捉えている。
◆まるで「カスタマイズのお手本」のようなGRスポーツ
レーンチェンジでは適度なロールを許容しながらも踏ん張り感があり、左右の揺り返しも、フロントの旋回にリヤが素直に追従してつながりの良い動きだ。レーンチェンジでも、ヨーとロールのバランスの良さが感じられた。
そして、一般道でも路面からの入力をいなしながら気持ちよく走れる。足がスムースに動き、ハンドリングと乗り心地がバランスされたGRスポーツは、とんがったキャラクターではないため、日常からサーキットまで、街中から高速まで、あらゆるシーンでオープンスポーツを堪能できるクルマだ。
ブレースとサスペンションでこんなに乗り味が変わるんだー、という、カスタマイズのお手本のようなモデル。さらにいじって走って楽しめるように、今後、さらなるカスタマイズパーツの展開も望みたいところだ。
あるいは、フットワークが良くなると、当然、モアパワー!という欲望も出てくる。ダイハツには1リットルターボエンジンがある。このエンジンを載せたGRMNが登場したら面白いかも!なんてことも思ってしまった。いずれにしても、ニッチでディープなセグメントながら、今後も大事にクルマを育てていって欲しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
佐藤久実|モータージャーナリスト
大学在学中にレースデビュー。耐久レースをメインに活動。海外の24時間レースでも入賞を果たす。レースで培ったスキルをベースに、ドライビング・インストラクターとしても活動。ホンダ・ドライビング・ミーティング、ポルシェ・ドライビング・スクール、BMWドライバートレーニング、VWエコドライブトレーニング、ブリヂストン・タイヤセーフティ・ドライビングレッスンなどでインストラクターを務める。レーシングドライバーとしてのホットな目、ジャーナリストとしてのクールな目、そして女性目線からクルマを評価、自動車専門誌への執筆をはじめWEBやテレビでも活動。東海大学工学部動力機械工学科非常勤講師、芝浦工業大学特別講師。
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