【プジョー 508SW 新型試乗】今やハイエンドモデルと言って差し支えない…中村孝仁

プジョー 508SW 新型(GT BlueHDi)
セダンに乗った時、30分見ていても飽きないほどの美しいデザインが素晴らしいと評した記憶があるが、この『508SW』もセダンに負けず劣らず美しい。

それにしてもフランス人のデザインセンスには頭が下がる。まあ、デザインは人によって感じ方が違うから賛成もあれば否定もあるだろうが、少なくとも僕の周囲のマジョリティーは「賛」であって、「否」は一人もいなかった。

◆508は今やハイエンドと言っても差し支えない


どうしてもわからなくなってきているのは、セグメント内でいわゆるハイエンドと称して高級というくくりに入るモデルとそうでないモデルの差である。

508の場合Dセグメントに属し、このジャンルにはメルセデス『Cクラス』を筆頭にBMW『3シリーズ』、アウディ『A4』、さらにはボルボ『S/V60』、ジャガー『XE』などがそのハイエンドに属してカウントされると思う。一方ただのDセグメントには少し昔に遡ると、今でも存在しているVW『パサート』を筆頭に、旧型となったプジョー『407』やルノー『ラグナ』、シトロエン『C5』、フォード『モンデオ』等々結構なモデルがいた。

まあ今ではVWとプジョーだけが日本市場に残ったということだが、ではパサートや508といわゆるハイエンドのモデルと一体どこがどう違うのか?

以前は比較的顕著に内装の質の差だったり、走りの差だったりを感じさせてくれたが、特に今回の508の出来栄えを考えると、その差はないに等しい。というよりもむしろ、かつてはハイエンドと言われて特別扱いだったモデルの一部は、今や508、パサート以下と思えるようなモデルもある。つまり、508は今やハイエンドと言っても差し支えなく、もしそうだとしたらかなりリーズナブルな価格設定であるといえるのではないかと思うわけである。

◆i-Cockpitには異論があるが


独特なi-Cockpitには異論のある人もいると思う。実は僕もその一人。何故かと言うと、メーター表示は本来目線を落として見るものと相場は決まっていたのだが、i-Cockpitの場合は前方からほとんど目線を動かすことなくメーターをチェックできるから本来は有難いのだが、老眼をかける年代だと多くの人が遠近両用メガネをかけていて、そんな人は i-Cockpitのメーター位置だと困ったことに像を結ばないのである。これが嫌な理由。小さなステアリングは使い勝手が良く、パーキングなどの際もどれだけ切ったかがわかり易くて良いと思う。

インフォテイメント用の大型ディスプレイもダッシュデザインに馴染んでなかなか良いと思うが、PSAが遅れているところは実はここにある。大半のメーカーが例えばナビをセットして道案内をしてもらう際にナビの音声と聞いている音楽やラジオの音声は分けて別々のスピーカーから流れるようになっているが、PSAは聞いていたラジオが寸断されてナビが割り込んでくる。大事なニュースなどを聞いている場合少しイラッとすることがある。

◆「路面をいなす」感覚が今のプジョーに戻ってきた


2リットルのターボディーゼルは力強くトルキーで、燃費も良いから長距離移動にはもってこい。ただし、さすがにガソリンと比較した場合は顕著な重さを感じてしまう。 そしてさすがに設計が古いことも手伝って、エンジンノイズはどちらかと言えば最新のライバルメーカーのものと比較した時大きめになってきている。

ラゲッジスペースはリアシートを使った状態でも530リットルとたっぷり。使い勝手も良い。ドライバーズシートからルームミラーを通して後方を見た時の視界が予想外に小さいが、バック時などはカメラの世話になるのでさして問題ではない。

508の優れた点は、スタイルもさることながら乗り心地にあると思う。路面をいなすという感覚は今のクルマでは味わうことのできない昔の感覚になりつつあると思っていたら、PSAの作り出すクルマたちに少しではあるがそれが戻ってきている。508もコーナリング中に路面の凹凸を拾っても見事にいなして、あるものを無いものにしてくれる懐の深さがある。

今やドイツだってそんなに飛ばさなくなっているのだから、そろそろ安全を確保したうえで快適な乗り心地のクルマを作ってもらいたいものだが、508はそれがかなりできていると思う。ほとんど言うことなし!である。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める

(レスポンス 中村 孝仁)

[提供元:レスポンス]レスポンス