【ホンダ ヴェゼル モデューロX 新型試乗】このタイミングで出てきたからこその高い完成度…岡本幸一郎
◆開発はあくまでも“人の感覚”重視
ホンダ車を知り尽くしたエンジニアが匠の技で1台のクルマをトータルでセッティングを煮詰めることで、パーツ単体の組み合わせではなしえない高い性能を実現するという、まさしくその言葉どおりの仕上がり。これまでも折にふれてホンダアクセスが手がけたコンプリートカーの「モデューロX」に試乗するたび、その高い完成度には感心させられてきた。
その第6弾として、待望の『ヴェゼル』がラインアップに加わった。もともと売れ筋の車種なのに、どうしてこれまでなかったのかと思わずにいられないところだが、かねてより計画はあったものの、諸事情によりこのタイミングになったようだ。
開発にあたっては、北海道・鷹栖のホンダのテストコースに、エンジニアだけでなくデザイナーまでも出向いて、全員でクルマに乗りまくり、エアロについても少しずつ形状を変えて最適化していくという、他ではあまりやらないようなことを実践していることもモデューロならでは。ハイテクを駆使した解析はもちろんとして、あくまで人の感覚を重視した開発を行なっているのが特徴だ。
◆ルックスと性能向上の一石二鳥なエアロ
「X」をモチーフにしたという専用のフロントデザインや、金属調のロアーガーニッシュが目を引く『ヴェゼル モデューロX』の精悍なルックスも、そうしたプロセスを経てデザインされたもので、見た目のよさはもとより、各部の造形のひとつひとつが空力を向上するための機能を持ち合わせている。
足まわりは、タイヤはベース車から銘柄とサイズともに変更はないが、専用のアルミホイールとサスペンションが与えられている。ローダウンせず車高がノーマルと変わらないあたりもモデューロXらしい。さらには求めた走り味を実現するため、アルミホイールについても剛性を高めるだけでなく、剛性のバランスにこだわり最適化を図っているのも特徴だ。
ブラックで統一したインテリアも、このクルマによく似合う。骨格から新しくしてヘッドレスト一体とした専用フロントスポーツシートは、座った瞬間からしっくりと身体になじむ。リアシートの表皮もフロントの柄に合わせてあるのもうれしい。
◆もっと高価でもおかしくないほどのパワーアップ
試乗したのはツーリング(FFのみ)とハイブリッドの4WDの2台で、ほかにハイブリッドのFFも選べる。横浜みなとみらい界隈の一般道と首都高速をドライブ。公道につき限界性能を試したわけではないが、「クルマをコントロールしやすくすることで、運転が不慣れな人でも誰もが日常でのさまざまな走行シーンでより楽しく快適な走りを楽しめること」を念頭に置いて開発された、その走りを味わうことができた。
ツーリングとハイブリッドでは味付けが大なり小なり異なる。ただし、いずれも共通しているのは直進安定性と操舵に対する一体感の高く、フラットライドであることだ。
電動パワステ自体には手を加えていないそうだが、足まわりの変更と空力の向上により、ステアリングフィールにも変化が見られた。操舵したとおりに、切る側だけでなく戻す側も応答遅れがなく、極めて一体感のある走りを実現している。おかげで修正舵をほとんど必要としない。グリップが高まったせいか、操舵力が適度に重くなり、しっかり感も増していて、手に取るように路面の状況が伝わってくる。
高速巡行時の直進性も高く、レーンチェンジを試みるとわずかに切り始めたところから遅れなく応答する。このとき、極めて正確にじわっと動くのがベース車との違い。空気を味方につけたことで、こうした走りができているわけだ。
リアにバッテリーを積むハイブリッドは前後重量配分がよくピッチングの前後バランスも良好で、17インチタイヤを履くことと、セッティング自体もハイブリッドのほうが快適性重視なせいか、フラット感のある上質な乗り味に仕上がっている。路面のギャップをしなやかに吸収しつつ、あたかもフラットな姿勢を強制的につくりだすかのような感覚で走れる。
かたやツーリングは俊敏なハンドリングが際立つ。ベース車自体、ツーリングには欧州市場向けの高剛性ボディが与えられており、走りの完成度は他モデルとは一線を画していた。ホンダアクセスがそれをさらに引き上げるにはどうするのかと思っていたのだが、走らせてみて納得した。
リアを締め上げることで、フロントの応答性がさらに増していた。FFながら、アンダーステアが顔を出すこともなく、コーナリングでも早いタイミングでアクセルを踏んでいける。スポーツカー顔負けの気持ちのよい走り味だ。
乗せてもらうならより万人向けのハイブリッドだろうが、自ら操るならツーリングを選びたくなるというニュアンスの性格の違いがあった。
座ったときから好印象だったシートは、しばらくドライブしていてますます印象がよくなった。硬さを柔らかさの両面を持ち合わせていて、しっくりなじむおかげで約半日ドライブしていても疲労感が小さかった。横方向もほどよく身体を支えてくれるので、もっと攻めた走りを試みてもきっと応えてくれることだろう。
価格についても、装着されたパーツを考えると、もっと高価でもおかしくないところ、ずっとリーズナブルにおさえられているのもありがたい。ヴェゼルのモデューロXの登場を心待ちにしていた人も少なくないだろうし、実際もっと早く出てもおかしくなかったところだが、このタイミングで出てきたからこそ、これほど高い完成度に達したものと思うことにしたい。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 岡本幸一郎)
ホンダ車を知り尽くしたエンジニアが匠の技で1台のクルマをトータルでセッティングを煮詰めることで、パーツ単体の組み合わせではなしえない高い性能を実現するという、まさしくその言葉どおりの仕上がり。これまでも折にふれてホンダアクセスが手がけたコンプリートカーの「モデューロX」に試乗するたび、その高い完成度には感心させられてきた。
その第6弾として、待望の『ヴェゼル』がラインアップに加わった。もともと売れ筋の車種なのに、どうしてこれまでなかったのかと思わずにいられないところだが、かねてより計画はあったものの、諸事情によりこのタイミングになったようだ。
開発にあたっては、北海道・鷹栖のホンダのテストコースに、エンジニアだけでなくデザイナーまでも出向いて、全員でクルマに乗りまくり、エアロについても少しずつ形状を変えて最適化していくという、他ではあまりやらないようなことを実践していることもモデューロならでは。ハイテクを駆使した解析はもちろんとして、あくまで人の感覚を重視した開発を行なっているのが特徴だ。
◆ルックスと性能向上の一石二鳥なエアロ
「X」をモチーフにしたという専用のフロントデザインや、金属調のロアーガーニッシュが目を引く『ヴェゼル モデューロX』の精悍なルックスも、そうしたプロセスを経てデザインされたもので、見た目のよさはもとより、各部の造形のひとつひとつが空力を向上するための機能を持ち合わせている。
足まわりは、タイヤはベース車から銘柄とサイズともに変更はないが、専用のアルミホイールとサスペンションが与えられている。ローダウンせず車高がノーマルと変わらないあたりもモデューロXらしい。さらには求めた走り味を実現するため、アルミホイールについても剛性を高めるだけでなく、剛性のバランスにこだわり最適化を図っているのも特徴だ。
ブラックで統一したインテリアも、このクルマによく似合う。骨格から新しくしてヘッドレスト一体とした専用フロントスポーツシートは、座った瞬間からしっくりと身体になじむ。リアシートの表皮もフロントの柄に合わせてあるのもうれしい。
◆もっと高価でもおかしくないほどのパワーアップ
試乗したのはツーリング(FFのみ)とハイブリッドの4WDの2台で、ほかにハイブリッドのFFも選べる。横浜みなとみらい界隈の一般道と首都高速をドライブ。公道につき限界性能を試したわけではないが、「クルマをコントロールしやすくすることで、運転が不慣れな人でも誰もが日常でのさまざまな走行シーンでより楽しく快適な走りを楽しめること」を念頭に置いて開発された、その走りを味わうことができた。
ツーリングとハイブリッドでは味付けが大なり小なり異なる。ただし、いずれも共通しているのは直進安定性と操舵に対する一体感の高く、フラットライドであることだ。
電動パワステ自体には手を加えていないそうだが、足まわりの変更と空力の向上により、ステアリングフィールにも変化が見られた。操舵したとおりに、切る側だけでなく戻す側も応答遅れがなく、極めて一体感のある走りを実現している。おかげで修正舵をほとんど必要としない。グリップが高まったせいか、操舵力が適度に重くなり、しっかり感も増していて、手に取るように路面の状況が伝わってくる。
高速巡行時の直進性も高く、レーンチェンジを試みるとわずかに切り始めたところから遅れなく応答する。このとき、極めて正確にじわっと動くのがベース車との違い。空気を味方につけたことで、こうした走りができているわけだ。
リアにバッテリーを積むハイブリッドは前後重量配分がよくピッチングの前後バランスも良好で、17インチタイヤを履くことと、セッティング自体もハイブリッドのほうが快適性重視なせいか、フラット感のある上質な乗り味に仕上がっている。路面のギャップをしなやかに吸収しつつ、あたかもフラットな姿勢を強制的につくりだすかのような感覚で走れる。
かたやツーリングは俊敏なハンドリングが際立つ。ベース車自体、ツーリングには欧州市場向けの高剛性ボディが与えられており、走りの完成度は他モデルとは一線を画していた。ホンダアクセスがそれをさらに引き上げるにはどうするのかと思っていたのだが、走らせてみて納得した。
リアを締め上げることで、フロントの応答性がさらに増していた。FFながら、アンダーステアが顔を出すこともなく、コーナリングでも早いタイミングでアクセルを踏んでいける。スポーツカー顔負けの気持ちのよい走り味だ。
乗せてもらうならより万人向けのハイブリッドだろうが、自ら操るならツーリングを選びたくなるというニュアンスの性格の違いがあった。
座ったときから好印象だったシートは、しばらくドライブしていてますます印象がよくなった。硬さを柔らかさの両面を持ち合わせていて、しっくりなじむおかげで約半日ドライブしていても疲労感が小さかった。横方向もほどよく身体を支えてくれるので、もっと攻めた走りを試みてもきっと応えてくれることだろう。
価格についても、装着されたパーツを考えると、もっと高価でもおかしくないところ、ずっとリーズナブルにおさえられているのもありがたい。ヴェゼルのモデューロXの登場を心待ちにしていた人も少なくないだろうし、実際もっと早く出てもおかしくなかったところだが、このタイミングで出てきたからこそ、これほど高い完成度に達したものと思うことにしたい。
岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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