【スバル インプレッサ 新型試乗】誰もが感じられる素直さという基本性能…飯田裕子
2016年の秋に登場した5代目『インプレッサ』が大幅改良を行った。その主な内容はデザインの変更と質感の向上にサスペンション改良。そしてアイサイト・ツーリングアシストの全車標準装備だ。
スバルは「誰もが扱いやすく愉しめるクルマ」を目指しこの5代目を開発。これまでも安全/運転支援技術の改良や装備拡充を図ってきたが、今回の大幅改良では改めて前述のコンセプトを際立たせ、進化させている。今回はやはりデザインとドライブフィールの洗練ぶりがインプレッサの魅力を強めていることは間違いない。
◆スバルがこだわる“外寸最小、内寸最大のクルマづくり”
全長4475mm×全幅1775mm×全高1480mmのボディサイズは、フロントグリルのデザイン変更にも貢献する。15mmがプラス(フロントオーバーハングのみ+15mm)されたそうだが、それを誤差とするなら外寸のディメンションに大きな変更はない。“外寸最小、内寸最大のクルマづくり”にこだわるスバルによって、インプレッサのボディサイズに対する室内空間の広さは国内外のライバルと比較しても優位。
さらに好みはさておき、国産車のなかでもスバルは扱いやすさや快適さというクルマの機能性をデザインすることにこだわるメーカー。前面に貼られたガラスの大きさは、とくにフロントと三角窓も採用するサイドウインドウ(サイドミラーの位置も重要)によって運転席周辺の視界がいい。
また“外寸最小、内寸最大”のこだわりが後席に座る人の安心感や快適さを保つデザインにも表れている。ボディサイドから見たルーフの傾斜の度合い、窓下のショルダーラインのフラットで跳ね上げ具合が極めて少ないのも後席の人の視界と快適さを優先させているからで、ルーフもショルダーラインも後席の人の頭の位置を意識してデザインされている。加えてドア下のまっすぐなサイドシルも後席の人の足が出しやすさを優先し、そこから後ろをわずかに跳ね上げているのだ。おかげで視界も空間も良好、乗降性もいい。
◆テクニックを駆使して更なる「ロー&ワイド」なデザインを実現
今回の改良ではこれらを踏襲しつつ、より5代目誕生当初から提唱する「ロー&ワイド」なデザインをテクニックも効かせ磨きをかけている。フロント部はスバルのアイコンである“ヘキサゴングリル”を強調。それなのに今回はわずかながら幅を狭め配置は10mm上げたそう。
強調するならサイズアップが常套手段だし、ロー&ワイドにこだわるならそういうモノは下げたほうが良さそうだが、ノン、ノンっ。ヘキサゴンの枠も取ってグリル上部に配置されたスバルのオーナメントから始まるラインの勢いをそのままランプのなかに走らせるような大きな流れをつくり、直線的な伸びやかさがワイド感を生み、その勢いがボディサイドのショルダーラインからテールへ、勢いやモーションを連続。表情全体でロー&ワイドを表現しているのだ。
グリルは強調というより品よく際立った印象をうける。ランプの輪郭も実は形状こそ変わっていないが、コの字=水平対向エンジンのエンジンのイメージ(シリンダーが左右に動くイメージ)=スバルのアイコンをLEDで表現。するとライトもいくらか薄く見え、一体感の強まったバンパーも併せて厚みを抑えられた洗練された押し出し感とロー&ワイドな印象が増すから面白い。
“外寸最小”のボディの側面には前から後方に向かって幅(えぐれ)のある楔形のキャラクターラインによってボディにボリューム感や伸びやかな抑揚をつけ、同時にその前後にあるホイールフェンダーも強調することでスバル車=4WDをさりげなくアピールしている。ホイールも躍動感を増すデザインに17/18インチともに変更されている。
インテリアは構成要素に大きな変更はないものの、より一体感と連続完を演出するべく素材を効果的に活かす(メーターバイザーの素材の統一など)表面処理にこだわり質感と洗練ぶりを向上させている。
◆全体的な改良により向上した“意のまま感”
ドライブフィールについても改良が乗り味の質感向上に貢献している。搭載エンジンの1.6リットル、2.0リットルの水平対向4気筒エンジン+リニアトロニック(CVT)に変更はない。が1.6リットルでも16インチに加え17インチタイヤを履くSグレードが選べるようになった。
2016年の登場当初、スバルのグローバルプラットフォーム(以後、SGPと略)を採用する第一弾モデルとして公道を走り始めた時点ですでに基本性能の革新的な進化が感じられたが、エンジンパワーの大小よりハンドリングによる扱いやすさや愉しさ、そこから生まれる頼もしさ見直すべく、スバルのスポーツモデルの開発をてがけるSTI社も加わって性能を確認。たどり着いたのが今回のモデルなのだとか。
結果、サスペンションの受け側の剛性をアップし、それに合わせてバネやダンパーの設定を変更、操る楽しみをアップさせている。
試乗車は18インチタイヤを装着する2.0i-S EyeSight。これで一般道から試乗をスタートさせて最初に感じたのは乗り心地の滑らかさだった。ちなみに、後席の快適性、乗り心地についても前席とほぼ同等だった。細かな段差を通過する際の接地感をドライバーに伝えるものの、当たりはまるい。その連続が走行中の滑らかさを印象付けてくれたのだ。
一方、ボディのロールの少ない感覚やステアリングフィールのリニアさは、例えば高速道路のランプウエイを走る際の姿勢の収まりがいいこと。そしてそこでわずかにハンドルを切り足すような操舵をすると、車体そのものの反応も良く、だからと言ってスポーツカーのような過剰な類とは異なる。街中でも高速道路でも総じてハンドルの切り始めの反応の良さが扱いやすさに繋がる“意のまま感”がインプレッサのリニアさの特徴なのだ。パワステのチューニングなどに頼るのではなく、足元=本質の改善の効果だろう。
◆上級なテクニックよりも素直さという基本性能
2.0リットルエンジン+CVTは街中では加速性能は気にならないが高速道路の再加速や上り坂ではトルクや加速性能がもう少し欲しいと思う場面もあった。インプレッサはそんな要求に応えるべく2つのドライブモードを持つSI-DRIVEとパドルシフトが用意されている。走行状況に応じて燃費にも配慮した走行を“I”(インテリジェントモード)で、リニアな加速が欲しいときは“S”(スポーツモード)を使い分ければいい。アップダウンに変化のあるところでは回転落ちもしない、アクセルのつきもいいSモードをぜひ試してみてほしい。
アイサイト・ツーリングアシストの性能のアップデートはツーリングアシストの車速設定がこれまで60~115km/hまでだったが、今回から0~135km/h(あくまでセット車速)まで可能になった。さらに制御の継続性の強化や車線内のセンターリング性能、加減速もより自然かつ滑らかになり、運転支援をより快適に活用しやすくなっている。
インプレッサは「誰もが日常で感じられる走りの愉しさ」にこだわったモデル。“誰もが”というと運転上級者には生温い印象に映るかもしれないけれど、上級なテクニックよりも素直さという基本性能があるから、“誰もが”と言えるのだ。実用性を最大限に活かすデザインと走り、そして安全性能の洗練ぶりが感じられるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
飯田裕子|自動車ジャーナリスト協会会員
現在の仕事を本格的に始めるきっかけは、OL時代に弟(レーサー:飯田章)と一緒に始めたレース。その後、女性にもわかりやすいCar & Lifeの紹介ができるジャーナリストを目指す。独自の視点は『人とクルマと生活』。ドライビングインストラクターとしての経験も10年以上。現在は雑誌、ラジオ、TV、シンポジウムのパネリストやトークショーなど、活動の場は多岐にわたる。
(レスポンス 飯田裕子)
スバルは「誰もが扱いやすく愉しめるクルマ」を目指しこの5代目を開発。これまでも安全/運転支援技術の改良や装備拡充を図ってきたが、今回の大幅改良では改めて前述のコンセプトを際立たせ、進化させている。今回はやはりデザインとドライブフィールの洗練ぶりがインプレッサの魅力を強めていることは間違いない。
◆スバルがこだわる“外寸最小、内寸最大のクルマづくり”
全長4475mm×全幅1775mm×全高1480mmのボディサイズは、フロントグリルのデザイン変更にも貢献する。15mmがプラス(フロントオーバーハングのみ+15mm)されたそうだが、それを誤差とするなら外寸のディメンションに大きな変更はない。“外寸最小、内寸最大のクルマづくり”にこだわるスバルによって、インプレッサのボディサイズに対する室内空間の広さは国内外のライバルと比較しても優位。
さらに好みはさておき、国産車のなかでもスバルは扱いやすさや快適さというクルマの機能性をデザインすることにこだわるメーカー。前面に貼られたガラスの大きさは、とくにフロントと三角窓も採用するサイドウインドウ(サイドミラーの位置も重要)によって運転席周辺の視界がいい。
また“外寸最小、内寸最大”のこだわりが後席に座る人の安心感や快適さを保つデザインにも表れている。ボディサイドから見たルーフの傾斜の度合い、窓下のショルダーラインのフラットで跳ね上げ具合が極めて少ないのも後席の人の視界と快適さを優先させているからで、ルーフもショルダーラインも後席の人の頭の位置を意識してデザインされている。加えてドア下のまっすぐなサイドシルも後席の人の足が出しやすさを優先し、そこから後ろをわずかに跳ね上げているのだ。おかげで視界も空間も良好、乗降性もいい。
◆テクニックを駆使して更なる「ロー&ワイド」なデザインを実現
今回の改良ではこれらを踏襲しつつ、より5代目誕生当初から提唱する「ロー&ワイド」なデザインをテクニックも効かせ磨きをかけている。フロント部はスバルのアイコンである“ヘキサゴングリル”を強調。それなのに今回はわずかながら幅を狭め配置は10mm上げたそう。
強調するならサイズアップが常套手段だし、ロー&ワイドにこだわるならそういうモノは下げたほうが良さそうだが、ノン、ノンっ。ヘキサゴンの枠も取ってグリル上部に配置されたスバルのオーナメントから始まるラインの勢いをそのままランプのなかに走らせるような大きな流れをつくり、直線的な伸びやかさがワイド感を生み、その勢いがボディサイドのショルダーラインからテールへ、勢いやモーションを連続。表情全体でロー&ワイドを表現しているのだ。
グリルは強調というより品よく際立った印象をうける。ランプの輪郭も実は形状こそ変わっていないが、コの字=水平対向エンジンのエンジンのイメージ(シリンダーが左右に動くイメージ)=スバルのアイコンをLEDで表現。するとライトもいくらか薄く見え、一体感の強まったバンパーも併せて厚みを抑えられた洗練された押し出し感とロー&ワイドな印象が増すから面白い。
“外寸最小”のボディの側面には前から後方に向かって幅(えぐれ)のある楔形のキャラクターラインによってボディにボリューム感や伸びやかな抑揚をつけ、同時にその前後にあるホイールフェンダーも強調することでスバル車=4WDをさりげなくアピールしている。ホイールも躍動感を増すデザインに17/18インチともに変更されている。
インテリアは構成要素に大きな変更はないものの、より一体感と連続完を演出するべく素材を効果的に活かす(メーターバイザーの素材の統一など)表面処理にこだわり質感と洗練ぶりを向上させている。
◆全体的な改良により向上した“意のまま感”
ドライブフィールについても改良が乗り味の質感向上に貢献している。搭載エンジンの1.6リットル、2.0リットルの水平対向4気筒エンジン+リニアトロニック(CVT)に変更はない。が1.6リットルでも16インチに加え17インチタイヤを履くSグレードが選べるようになった。
2016年の登場当初、スバルのグローバルプラットフォーム(以後、SGPと略)を採用する第一弾モデルとして公道を走り始めた時点ですでに基本性能の革新的な進化が感じられたが、エンジンパワーの大小よりハンドリングによる扱いやすさや愉しさ、そこから生まれる頼もしさ見直すべく、スバルのスポーツモデルの開発をてがけるSTI社も加わって性能を確認。たどり着いたのが今回のモデルなのだとか。
結果、サスペンションの受け側の剛性をアップし、それに合わせてバネやダンパーの設定を変更、操る楽しみをアップさせている。
試乗車は18インチタイヤを装着する2.0i-S EyeSight。これで一般道から試乗をスタートさせて最初に感じたのは乗り心地の滑らかさだった。ちなみに、後席の快適性、乗り心地についても前席とほぼ同等だった。細かな段差を通過する際の接地感をドライバーに伝えるものの、当たりはまるい。その連続が走行中の滑らかさを印象付けてくれたのだ。
一方、ボディのロールの少ない感覚やステアリングフィールのリニアさは、例えば高速道路のランプウエイを走る際の姿勢の収まりがいいこと。そしてそこでわずかにハンドルを切り足すような操舵をすると、車体そのものの反応も良く、だからと言ってスポーツカーのような過剰な類とは異なる。街中でも高速道路でも総じてハンドルの切り始めの反応の良さが扱いやすさに繋がる“意のまま感”がインプレッサのリニアさの特徴なのだ。パワステのチューニングなどに頼るのではなく、足元=本質の改善の効果だろう。
◆上級なテクニックよりも素直さという基本性能
2.0リットルエンジン+CVTは街中では加速性能は気にならないが高速道路の再加速や上り坂ではトルクや加速性能がもう少し欲しいと思う場面もあった。インプレッサはそんな要求に応えるべく2つのドライブモードを持つSI-DRIVEとパドルシフトが用意されている。走行状況に応じて燃費にも配慮した走行を“I”(インテリジェントモード)で、リニアな加速が欲しいときは“S”(スポーツモード)を使い分ければいい。アップダウンに変化のあるところでは回転落ちもしない、アクセルのつきもいいSモードをぜひ試してみてほしい。
アイサイト・ツーリングアシストの性能のアップデートはツーリングアシストの車速設定がこれまで60~115km/hまでだったが、今回から0~135km/h(あくまでセット車速)まで可能になった。さらに制御の継続性の強化や車線内のセンターリング性能、加減速もより自然かつ滑らかになり、運転支援をより快適に活用しやすくなっている。
インプレッサは「誰もが日常で感じられる走りの愉しさ」にこだわったモデル。“誰もが”というと運転上級者には生温い印象に映るかもしれないけれど、上級なテクニックよりも素直さという基本性能があるから、“誰もが”と言えるのだ。実用性を最大限に活かすデザインと走り、そして安全性能の洗練ぶりが感じられるのは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
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