【スズキ ハスラー 新型試乗】先代のネガを徹底的に潰した…中村孝仁
◆ニッチだった軽クロスオーバーの代表車種に
2014年に登場し、瞬く間にヒット作となって先代は6年間で48万台強を売り上げる軽ニッチマーケットの代表車種にのし上がった『ハスラー』。
ハスラーのみならず、スズキ自動車は新たなジャンルを開拓するパイオニア精神とその市場を確立させるマーケティングが実にうまいと思う。『アルト』は軽自動車の原点を見つめ直し大ヒットさせたし、『ワゴンR』はハイト系ワゴンの魁としてこちらも見事に市場を作り上げてしまった。
そしてハスラーはスズキ自身もニッチマーケットだと考えていた軽クロスオーバーというジャンルにこのクルマを投入し、6年間で上述した通り48万台以上を売り上げる大人気車種にのし上がったのである。そしてこれまでは無風状態の言わば独壇場だったのが、どうやら今年はダイハツから『タフト』なるクロスオーバーも誕生するから、軽クロスオーバーという新たな市場をしっかりと作り上げてしまった。
◆新型は先代のネガを徹底的に潰した
では一言で言って新しい2代目ハスラーはどんなクルマかと言うと、まさに先代のネガ潰しに終始したキャリーオーバーモデルである。だからスタイルに関しては先代との近似性が非常に強い。特にフロントエンドなど旧型となかなか差別化しにくいほどよく似ている。
一方でボディサイドには窓が新たに一つ追加されて、いわゆる6ライトのデザインになった。これは斜め後方の視認性が良くないという市場からの声を吸い上げた結果だから、要するにネガ潰し。さらにホイールベースを35mm延長し、後席の居住空間を拡大したのもハーテクト構造を採用した結果でもあるが、これもニーズに合わせた改良ともいえる。
そのハーテクト。すでにほとんどのスズキ車に採用されている新しいプラットフォームで、これを最初に使ったアルトに乗った時は、正直目から鱗が落ちた。何しろ軽自動車で80kgもの軽量化を果たしていたのだから…。だから今回も勇んでどのくらい軽くなりましたか?と聞いたところ、意外にも「いえ、車重は少し重くなりました」との答え。
ハーテクト単体では先代よりもプラットフォームのみで20kg軽くなっているそうだが、先進安全性装備で20kg、ボクシーでホイールベースを含め少し大型化したボディの重量で20kg重くなり、結果として+20kgほど重くなったとのことである。
また、現行モデル(旧型)ユーザーが一番求めていたものは何かという質問に対しては、ハスラーという「モノ」から、想像力や行動力をかき立てられて新たな「コト」を始めるきっかけになるということだったそうで、そうしたニーズをクルマに取り込んだ結果が大型化して使い勝手を向上させたラゲッジスペースだったり、如何にもアウトドアを連想させそうなダッシュボードデザインだったりする。
◆ハスラーにとって試練の年になる!?
ニューモデルは全モデルがハイブリッド化され、さらにISG(モーター機能付発電機)もより大型化させたものが搭載された。ターボ車のエンジンは基本的に先代からのキャリーオーバーだが、インジェクションをデュアル化するなどの改良が行われている。
そして予想した通り、乗り心地は従来モデルよりも明らかに上下動(というか突き上げ感)が減少し、よりフラットなものへと進化した。また、加速感は今やターボさえついていれば、軽自動車と言えども高速の流れをリードできるほど十分な瞬発力を持つうえ、今回は新機能としてパワーモードが追加されて、これを押すと(ステアリング右に付くスイッチ)一時的にCVTの制御変更とモーターアシストを強化することで、より鋭い加速感が得られる。少なくとも一人乗車で走る限り加速はかなり鋭いといえよう。
一方で、少し受け入れたくないものもあった。それが今回新たにターボ車のみに装備されたACCである。今回は全車速対応となったが、EPB(電動パーキングブレーキ)を持たない為、停止すると基本的には2秒ほどしか保持できない。それはともかくとして先行車を追いかけている時の走行感覚にかなりのギクシャク感を伴うことだ。これは車速維持と、車間維持という二つのパラメータに左右されることで、ブレーキをかける頻度が大きくこれがギクシャク感を生み出す。どうやら後続車には頻繁にブレーキをかけるクルマと思われるようで、危険回避なのか、後ろに付くと無理をしても追い越していくクルマが多かった。このあたりは要改善である。
いずれにしても新たなライバルが誕生する今年、ハスラーにとってもある種の試練を迎えるかもしれないが、確実に進歩したクルマに仕上がっていることだけは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
2014年に登場し、瞬く間にヒット作となって先代は6年間で48万台強を売り上げる軽ニッチマーケットの代表車種にのし上がった『ハスラー』。
ハスラーのみならず、スズキ自動車は新たなジャンルを開拓するパイオニア精神とその市場を確立させるマーケティングが実にうまいと思う。『アルト』は軽自動車の原点を見つめ直し大ヒットさせたし、『ワゴンR』はハイト系ワゴンの魁としてこちらも見事に市場を作り上げてしまった。
そしてハスラーはスズキ自身もニッチマーケットだと考えていた軽クロスオーバーというジャンルにこのクルマを投入し、6年間で上述した通り48万台以上を売り上げる大人気車種にのし上がったのである。そしてこれまでは無風状態の言わば独壇場だったのが、どうやら今年はダイハツから『タフト』なるクロスオーバーも誕生するから、軽クロスオーバーという新たな市場をしっかりと作り上げてしまった。
◆新型は先代のネガを徹底的に潰した
では一言で言って新しい2代目ハスラーはどんなクルマかと言うと、まさに先代のネガ潰しに終始したキャリーオーバーモデルである。だからスタイルに関しては先代との近似性が非常に強い。特にフロントエンドなど旧型となかなか差別化しにくいほどよく似ている。
一方でボディサイドには窓が新たに一つ追加されて、いわゆる6ライトのデザインになった。これは斜め後方の視認性が良くないという市場からの声を吸い上げた結果だから、要するにネガ潰し。さらにホイールベースを35mm延長し、後席の居住空間を拡大したのもハーテクト構造を採用した結果でもあるが、これもニーズに合わせた改良ともいえる。
そのハーテクト。すでにほとんどのスズキ車に採用されている新しいプラットフォームで、これを最初に使ったアルトに乗った時は、正直目から鱗が落ちた。何しろ軽自動車で80kgもの軽量化を果たしていたのだから…。だから今回も勇んでどのくらい軽くなりましたか?と聞いたところ、意外にも「いえ、車重は少し重くなりました」との答え。
ハーテクト単体では先代よりもプラットフォームのみで20kg軽くなっているそうだが、先進安全性装備で20kg、ボクシーでホイールベースを含め少し大型化したボディの重量で20kg重くなり、結果として+20kgほど重くなったとのことである。
また、現行モデル(旧型)ユーザーが一番求めていたものは何かという質問に対しては、ハスラーという「モノ」から、想像力や行動力をかき立てられて新たな「コト」を始めるきっかけになるということだったそうで、そうしたニーズをクルマに取り込んだ結果が大型化して使い勝手を向上させたラゲッジスペースだったり、如何にもアウトドアを連想させそうなダッシュボードデザインだったりする。
◆ハスラーにとって試練の年になる!?
ニューモデルは全モデルがハイブリッド化され、さらにISG(モーター機能付発電機)もより大型化させたものが搭載された。ターボ車のエンジンは基本的に先代からのキャリーオーバーだが、インジェクションをデュアル化するなどの改良が行われている。
そして予想した通り、乗り心地は従来モデルよりも明らかに上下動(というか突き上げ感)が減少し、よりフラットなものへと進化した。また、加速感は今やターボさえついていれば、軽自動車と言えども高速の流れをリードできるほど十分な瞬発力を持つうえ、今回は新機能としてパワーモードが追加されて、これを押すと(ステアリング右に付くスイッチ)一時的にCVTの制御変更とモーターアシストを強化することで、より鋭い加速感が得られる。少なくとも一人乗車で走る限り加速はかなり鋭いといえよう。
一方で、少し受け入れたくないものもあった。それが今回新たにターボ車のみに装備されたACCである。今回は全車速対応となったが、EPB(電動パーキングブレーキ)を持たない為、停止すると基本的には2秒ほどしか保持できない。それはともかくとして先行車を追いかけている時の走行感覚にかなりのギクシャク感を伴うことだ。これは車速維持と、車間維持という二つのパラメータに左右されることで、ブレーキをかける頻度が大きくこれがギクシャク感を生み出す。どうやら後続車には頻繁にブレーキをかけるクルマと思われるようで、危険回避なのか、後ろに付くと無理をしても追い越していくクルマが多かった。このあたりは要改善である。
いずれにしても新たなライバルが誕生する今年、ハスラーにとってもある種の試練を迎えるかもしれないが、確実に進歩したクルマに仕上がっていることだけは間違いない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
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