マツダ3 SKYACTIV-X 新型試乗 静かでスムーズ。だがマツダが目指す性能はこんなものじゃないはずだ…中村孝仁
本当に鳴り物入りで登場した今回の『マツダ3』。ファストバックの妖艶なスタイルだったり、SKYACTIV-X(スカイアクティブX)だったり…。
この両方を兼ね備えたファストバックのSKYACTIV-X仕様車は今でもメディアに引っ張りだこ。ところがそれがセダンとなると、どうもメディアには人気がないのか、広報車を置くR&Dセンターで惰眠を貪っているというではないか。ならばぜひお借りしてSKYACTIV-Xをしっかりと乗り込んでみようということで、試乗会以来のSKYACTIV-X搭載車を存分に味あわせてもらった。
◆「天下のメルセデス」が同じ値段で買えると聞くと…
まずはじめにセダンとファストバックの違いであるが、セダンの方がファストバックと比べて全長が200mm長い。その分ファーストバックよりもラゲッジ容量が大きく、ファストバックの334リットルに対し、セダンは450リットルを確保する。特にゴルフに行くようなユーザーはセダンが有利かも知れない。
まあ違いはこれだけ。全幅や車重、さらにはタイヤサイズなども同じである。お値段は車両本体価格で若干セダンの方が高い。借りてきた広報車にはおよそ30万円相当のオプションが付いて、合計価格は373万6843円。本体価格は343万5463円(税込)である。Cセグメントのモデルとしてはやはり相当に良いお値段。
因みにVW『ゴルフTSIハイライン』が買える値段である(しかもお釣りが来る)。そしてセダン同士ということなら、メルセデスベンツ『A180セダン』とほぼ同等の価格だ。
決して外国かぶれしているわけではないのだが、天下のメルセデスが同じ値段で買えると聞いてグラっと来ない人は多分いない。問題はマツダにそれだけのブランド力があるか?という点。それだけ考えてもやはりSKYACTIV-Xは高い。ではその高価なプライスタグに見合う満足感が得られるかどうかである。
◆静かでスムーズなのは間違いない
実はこのSKYACTIV-Xのセダンを借りる直前まで、1.5リットルのファストバックに試乗していた。で、我が女房殿に、どっちが良かったと尋ねてみたものの、その違いには全く気付かず単にパワーシートが付いているからとの理由だけで、XLパッケージをチョイスした。つまり、クルマの性能などに関しては余程のマニアックな知識を擁した人以外は、その差には全く気が付かないと言ってよさそうだ。勿論我が女房殿だけでなく、複数の人を乗せてみても答えは同じだった。
一方でこれは専門家だけでなくても気が付くと思うのだが、SKYACTIV-Xは静粛性が高い。エンジンルームをカプセル化してしまったのだから当然と言えばそうなのだが、そのカプセル化についてはノッキング音の低減でそうしたと聞いている。しかし、エンジンの音そのものも何となく低いし、そもそも他のガソリンエンジンと比較しても良い音がする。良い音とは単に心地よいという意味だが、これ、重要だと思う。
次に回転そのものも、とてもスムーズな印象だ。さすがに凄くパワフルかと言われればそんなことはないし、トルクフルかと聞かれてもまあ普通より少し…と言う程度。つまり性能面に関していえばほとんど普通に近いわけで、恐らくマツダが目指しているSKYACTIV-Xの性能はこんなものじゃないと思うわけである。
◆熟成が進めばきっと良いエンジンになるに違いない
実はWLTP燃費で17.2km/リットルと言われた燃費も少し注目していたのだが、現実は12.8km/リットルと少々残念な結果(走り方が悪かったか?)に終わっているので、このエンジンに求められるユーザー側のベネフィットは正直なところほとんどないわけだ。
一方では24Vという変化球のマイルドハイブリッドシステムや、超高圧燃料噴射システムを採用するなど、メカニズムはやはり非常に凝っている。だから、もっと熟成が進めばきっと良いエンジンになるに違いない…と言う想像は容易に付くのだが、うーん…どうしても道半ば感が強すぎる。
試乗車として借り出したセダンは、まだ走行1200kmと新車そのもの。例えばサスペンションの落ち着き感もなくフリクションが取れていない印象があったし、全体的な馴染み具合もまだまだだから、走り込んでいくともしかしたら燃費だってよくなるかもしれない。
単純比較では70万円ほどアップする価格のSKYACTIV-X、素性の良さは十分に認めた上で、発売が時期尚早感が否めない。折角の野心的エンジンなのだから、しっかり作り込んでより性能面のベネフィットが出てから出しても良かったような気がする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
この両方を兼ね備えたファストバックのSKYACTIV-X仕様車は今でもメディアに引っ張りだこ。ところがそれがセダンとなると、どうもメディアには人気がないのか、広報車を置くR&Dセンターで惰眠を貪っているというではないか。ならばぜひお借りしてSKYACTIV-Xをしっかりと乗り込んでみようということで、試乗会以来のSKYACTIV-X搭載車を存分に味あわせてもらった。
◆「天下のメルセデス」が同じ値段で買えると聞くと…
まずはじめにセダンとファストバックの違いであるが、セダンの方がファストバックと比べて全長が200mm長い。その分ファーストバックよりもラゲッジ容量が大きく、ファストバックの334リットルに対し、セダンは450リットルを確保する。特にゴルフに行くようなユーザーはセダンが有利かも知れない。
まあ違いはこれだけ。全幅や車重、さらにはタイヤサイズなども同じである。お値段は車両本体価格で若干セダンの方が高い。借りてきた広報車にはおよそ30万円相当のオプションが付いて、合計価格は373万6843円。本体価格は343万5463円(税込)である。Cセグメントのモデルとしてはやはり相当に良いお値段。
因みにVW『ゴルフTSIハイライン』が買える値段である(しかもお釣りが来る)。そしてセダン同士ということなら、メルセデスベンツ『A180セダン』とほぼ同等の価格だ。
決して外国かぶれしているわけではないのだが、天下のメルセデスが同じ値段で買えると聞いてグラっと来ない人は多分いない。問題はマツダにそれだけのブランド力があるか?という点。それだけ考えてもやはりSKYACTIV-Xは高い。ではその高価なプライスタグに見合う満足感が得られるかどうかである。
◆静かでスムーズなのは間違いない
実はこのSKYACTIV-Xのセダンを借りる直前まで、1.5リットルのファストバックに試乗していた。で、我が女房殿に、どっちが良かったと尋ねてみたものの、その違いには全く気付かず単にパワーシートが付いているからとの理由だけで、XLパッケージをチョイスした。つまり、クルマの性能などに関しては余程のマニアックな知識を擁した人以外は、その差には全く気が付かないと言ってよさそうだ。勿論我が女房殿だけでなく、複数の人を乗せてみても答えは同じだった。
一方でこれは専門家だけでなくても気が付くと思うのだが、SKYACTIV-Xは静粛性が高い。エンジンルームをカプセル化してしまったのだから当然と言えばそうなのだが、そのカプセル化についてはノッキング音の低減でそうしたと聞いている。しかし、エンジンの音そのものも何となく低いし、そもそも他のガソリンエンジンと比較しても良い音がする。良い音とは単に心地よいという意味だが、これ、重要だと思う。
次に回転そのものも、とてもスムーズな印象だ。さすがに凄くパワフルかと言われればそんなことはないし、トルクフルかと聞かれてもまあ普通より少し…と言う程度。つまり性能面に関していえばほとんど普通に近いわけで、恐らくマツダが目指しているSKYACTIV-Xの性能はこんなものじゃないと思うわけである。
◆熟成が進めばきっと良いエンジンになるに違いない
実はWLTP燃費で17.2km/リットルと言われた燃費も少し注目していたのだが、現実は12.8km/リットルと少々残念な結果(走り方が悪かったか?)に終わっているので、このエンジンに求められるユーザー側のベネフィットは正直なところほとんどないわけだ。
一方では24Vという変化球のマイルドハイブリッドシステムや、超高圧燃料噴射システムを採用するなど、メカニズムはやはり非常に凝っている。だから、もっと熟成が進めばきっと良いエンジンになるに違いない…と言う想像は容易に付くのだが、うーん…どうしても道半ば感が強すぎる。
試乗車として借り出したセダンは、まだ走行1200kmと新車そのもの。例えばサスペンションの落ち着き感もなくフリクションが取れていない印象があったし、全体的な馴染み具合もまだまだだから、走り込んでいくともしかしたら燃費だってよくなるかもしれない。
単純比較では70万円ほどアップする価格のSKYACTIV-X、素性の良さは十分に認めた上で、発売が時期尚早感が否めない。折角の野心的エンジンなのだから、しっかり作り込んでより性能面のベネフィットが出てから出しても良かったような気がする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
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