ホンダ フィット 新型試乗 プレミアムコンパクトに一歩近づいた…丸山誠
本来は2019年の東京モーターショーに合わせて発表予定だったが、例の電動パーキングブレーキの騒動によって、2回も発表が変更された。待ちに待った、注目のホンダ『フィット』にようやく試乗することができた。
3月16日時点での受注台数は3万1000台を超え、月間販売計画の3倍以上となる好調なスタートを切った。受注の内訳を見ると、やはりハイブリッドの「e:HEV」が72%を占めている。
◆ドアを閉めた瞬間から感じる「心地よさ」
運転席のドアを閉めた瞬間、「トン」という感じの上品で静かな音に驚いた。コンパクトカーのなかには「バタン」と閉まるクルマも少なくないが、コンパクトカーだからこうした質感を左右する部分は多少目をつぶることが多かった。だが、新型フィットはドアシール材を全周に渡って2重化すると同時に閉まり音までもチューニングしている。
コンパクトカーは、直接見えない部分にはコストをかけづらい。見栄えなどに直結するぶぶんにはコストをかけることができるが、こうした音質という直接目にできない部分にも、新型はコストをかけている。ドアを閉めただけでも開発キーワードである「心地よい」という意味が理解できる。クルマに乗り込んだ瞬間から心地よさを実感させるあたり、開発陣の意思統一がしっかりできていると感じさせる部分だ。
ハイブリッドはe:HEVと名称が新しくなったが、従来の「i-MMD」と基本的な構成は同じ。2モーターを備えるのも従来と同様で、ほとんどの走行領域でシリーズハイブリッドとして作動する。排気量は従来と同じ1.5リッターだが、ホンダらしくシステムは新規開発。
2018年末に発売した『インサイト』も1.5リッターのi-MMDだが、これを流用せずにわざわざ新開発したのだ。もっともインサイト用はエンジンルームに余裕があるモデル用のためフィットのサイズには搭載できず、新たにコンパクトカー用を開発したわけだ。サイズはインサイトよりも2割ほど小さくなっている。
◆HV、ガソリンともにスムーズさが光る
走り出しはハイブリッドカーらしく極めてスムーズ。バッテリーの充電状況がよければEV走行をするためスムーズなのは当たり前だが、動き出しのフィールがとてもいい。試乗会場は例の石畳みが敷かれた場所で、低速時のサスペンションのストローク感やクルマの動きがよくわかり、乗り心地がとてもしっとりとしている感じがステアリングやボディから伝わってくる。
体を面で支える構造のボディースタビライジングシートも効果があり、こうした雰囲気は従来のコンパクトカーでは感じることができないフィールで、まるで上級モデルに乗っているかのようだ。舗装路を走ってもこの感じは変わらない。クロスターはクロスオーバーSUVの雰囲気を狙ったグレードのため全高と最低地上高をアップさせているが、後から乗ったハイブリッドのネスも同様のフィールで、ボディの動きがフラットに保たれている感じだ。
高速道路で「ネス」を試乗すると、やはりクルマ全体の質感向上を実感。ロードノイズはうまく抑えられ風切り音なども小さく、静かなキャビンで高速域でもフラットな乗り心地を実現している。高速域ではエンジンの動力を直接駆動力して使うのも従来のi-MMDと同様で、ほぼ平坦路で巡行すると約72km/hほどでエンジンの直接駆動になった。
モーター駆動よりエンジンによる直接駆動のほうが効率がいいとシステムが判断すると、自動でクラッチをつなぐ。アクセルを少し踏み込むとすぐエンジン駆動からモーター駆動に切り替わるが、この切り替えはモニターを見ていないとわからないほどスムーズだ。
アクセルを深く踏むとステップATのように変速し、けっこう元気に加速してくれる。うれしいのは高回転域までスムーズに吹き上がり、エンジン音が澄んでいて気持ちがいいこと。これは4気筒を採用しているからでe:HEVでもDOHCのi-VTECらしさを感じられる。ライバルの『ヤリスハイブリッド』は3気筒を採用しているが、高回転域の音質に雑味感があり、この4気筒と3気筒差は意外に大きい。
心地よさは1.3リッターエンジンを搭載する「ホーム」でも確認できた。e:HEVより排気量が小さいが元気に走り、こちらもDOHCのi-VTECらしい音を響かせる。高回転域の気持ちよさはe:HEV以上だ。車両価格を考えると1.3リッターの買い得感が光る。新型は燃費をアピールポイントにしていないが、短距離の試乗だがe:HEVの燃費計を見ているとかなりいい実用燃費を叩き出しそうだった。
◆コンパクトプレミアムに一歩近づいた
フィット最大の魅力は、先進安全装備と新機能の充実。発売延期の原因となった電動パーキングブレーキだが、信号待ちでブレーキから足を離すことができるオートブレーキホールドはとても便利だ。こうした装備と機能は上級モデルでしか選べなかったが、フィットは全グレードに標準。ライバルのヤリスが従来のサイドブレーキであることを考えると、フィットが勝っている。
さらに先進安全装備のホンダセンシングは全速域追従のACCに進化している。先代はミリ波レーダーとカメラを使うシステムだったが、新型はミリ波をやめてフロントワイドビューカメラでセンシングする方法に変えた。渋滞時でも停止保持まで制御するためブレーキへダルを操作する必要がなく、運転疲労を軽減してくれるのがありがたい。
レーンキープは65km/h以上で作動するため高速域で使うことになるが、制御が積極的でカーブに合わせて操舵している感じをドライバーに伝えてくる。少し気になったのはACCの追従発進のタイミングがやや遅く、先行車と離れてしまうことくらいで、コンパクトカーとして総合的に上出来といえる。プレミアムコンパクトに一歩近づいたといってもよく、ベンチマークとなる存在に進化した。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。
(レスポンス 丸山 誠)
3月16日時点での受注台数は3万1000台を超え、月間販売計画の3倍以上となる好調なスタートを切った。受注の内訳を見ると、やはりハイブリッドの「e:HEV」が72%を占めている。
◆ドアを閉めた瞬間から感じる「心地よさ」
運転席のドアを閉めた瞬間、「トン」という感じの上品で静かな音に驚いた。コンパクトカーのなかには「バタン」と閉まるクルマも少なくないが、コンパクトカーだからこうした質感を左右する部分は多少目をつぶることが多かった。だが、新型フィットはドアシール材を全周に渡って2重化すると同時に閉まり音までもチューニングしている。
コンパクトカーは、直接見えない部分にはコストをかけづらい。見栄えなどに直結するぶぶんにはコストをかけることができるが、こうした音質という直接目にできない部分にも、新型はコストをかけている。ドアを閉めただけでも開発キーワードである「心地よい」という意味が理解できる。クルマに乗り込んだ瞬間から心地よさを実感させるあたり、開発陣の意思統一がしっかりできていると感じさせる部分だ。
ハイブリッドはe:HEVと名称が新しくなったが、従来の「i-MMD」と基本的な構成は同じ。2モーターを備えるのも従来と同様で、ほとんどの走行領域でシリーズハイブリッドとして作動する。排気量は従来と同じ1.5リッターだが、ホンダらしくシステムは新規開発。
2018年末に発売した『インサイト』も1.5リッターのi-MMDだが、これを流用せずにわざわざ新開発したのだ。もっともインサイト用はエンジンルームに余裕があるモデル用のためフィットのサイズには搭載できず、新たにコンパクトカー用を開発したわけだ。サイズはインサイトよりも2割ほど小さくなっている。
◆HV、ガソリンともにスムーズさが光る
走り出しはハイブリッドカーらしく極めてスムーズ。バッテリーの充電状況がよければEV走行をするためスムーズなのは当たり前だが、動き出しのフィールがとてもいい。試乗会場は例の石畳みが敷かれた場所で、低速時のサスペンションのストローク感やクルマの動きがよくわかり、乗り心地がとてもしっとりとしている感じがステアリングやボディから伝わってくる。
体を面で支える構造のボディースタビライジングシートも効果があり、こうした雰囲気は従来のコンパクトカーでは感じることができないフィールで、まるで上級モデルに乗っているかのようだ。舗装路を走ってもこの感じは変わらない。クロスターはクロスオーバーSUVの雰囲気を狙ったグレードのため全高と最低地上高をアップさせているが、後から乗ったハイブリッドのネスも同様のフィールで、ボディの動きがフラットに保たれている感じだ。
高速道路で「ネス」を試乗すると、やはりクルマ全体の質感向上を実感。ロードノイズはうまく抑えられ風切り音なども小さく、静かなキャビンで高速域でもフラットな乗り心地を実現している。高速域ではエンジンの動力を直接駆動力して使うのも従来のi-MMDと同様で、ほぼ平坦路で巡行すると約72km/hほどでエンジンの直接駆動になった。
モーター駆動よりエンジンによる直接駆動のほうが効率がいいとシステムが判断すると、自動でクラッチをつなぐ。アクセルを少し踏み込むとすぐエンジン駆動からモーター駆動に切り替わるが、この切り替えはモニターを見ていないとわからないほどスムーズだ。
アクセルを深く踏むとステップATのように変速し、けっこう元気に加速してくれる。うれしいのは高回転域までスムーズに吹き上がり、エンジン音が澄んでいて気持ちがいいこと。これは4気筒を採用しているからでe:HEVでもDOHCのi-VTECらしさを感じられる。ライバルの『ヤリスハイブリッド』は3気筒を採用しているが、高回転域の音質に雑味感があり、この4気筒と3気筒差は意外に大きい。
心地よさは1.3リッターエンジンを搭載する「ホーム」でも確認できた。e:HEVより排気量が小さいが元気に走り、こちらもDOHCのi-VTECらしい音を響かせる。高回転域の気持ちよさはe:HEV以上だ。車両価格を考えると1.3リッターの買い得感が光る。新型は燃費をアピールポイントにしていないが、短距離の試乗だがe:HEVの燃費計を見ているとかなりいい実用燃費を叩き出しそうだった。
◆コンパクトプレミアムに一歩近づいた
フィット最大の魅力は、先進安全装備と新機能の充実。発売延期の原因となった電動パーキングブレーキだが、信号待ちでブレーキから足を離すことができるオートブレーキホールドはとても便利だ。こうした装備と機能は上級モデルでしか選べなかったが、フィットは全グレードに標準。ライバルのヤリスが従来のサイドブレーキであることを考えると、フィットが勝っている。
さらに先進安全装備のホンダセンシングは全速域追従のACCに進化している。先代はミリ波レーダーとカメラを使うシステムだったが、新型はミリ波をやめてフロントワイドビューカメラでセンシングする方法に変えた。渋滞時でも停止保持まで制御するためブレーキへダルを操作する必要がなく、運転疲労を軽減してくれるのがありがたい。
レーンキープは65km/h以上で作動するため高速域で使うことになるが、制御が積極的でカーブに合わせて操舵している感じをドライバーに伝えてくる。少し気になったのはACCの追従発進のタイミングがやや遅く、先行車と離れてしまうことくらいで、コンパクトカーとして総合的に上出来といえる。プレミアムコンパクトに一歩近づいたといってもよく、ベンチマークとなる存在に進化した。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。
(レスポンス 丸山 誠)
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