スズキ ハスラー 新型試乗 新開発NAエンジンの「ハイブリッドX」は数値では測れない…中村孝仁
◆新開発のNAエンジンを搭載した「ハイブリッドX」
2014年に誕生して、6年間で軽自動車のクロスオーバーという新しい市場をしっかりと形成したスズキ『ハスラー』。2代目に生まれ変わり、スタイリングこそ基本的に先代のキャリーオーバーとなっているが、中身は大幅な進化を遂げている。
特にNAエンジンを搭載したモデルではそのプラットフォームからエンジンなどメカニズムのすべてを一新したものとなった。具体的にはハーテクトと呼ばれるスズキ独自の新しい構造のプラットフォームが採用されている点。そしてエンジンは新たに開発された「R06D」の呼称を持つエンジンに変わった点などである。
ハーテクトはすでに『アルト』や『ワゴンR』、さらには小型車の『スイフト』などにも採用されているプラットフォームの呼称で、高剛性と軽量化を達成したものとして高い評価を受けたものである。残念ながら今回のハスラーでは先進安全装備の搭載と大型化したボディの影響で、旧型よりも若干重量増となっているそうである。
◆ライバルに対し数値的には劣るものの
一方エンジンは、NAモデルにのみ新開発のR06Dと名付けられた新開発のエンジンが搭載された。従来のR06A(ターボ車にはこれが搭載されている)に対し、ストロークが5.6mmも長いロングストロークエンジンとなっている。一般的にロングストローク化することによって、ピストンスピードが速くなりトルク型になって扱い易く、逆にショートストロークでは高回転型となりパフォーマンス型のエンジンになると言われている。ところが今回のR06Dに限って話をすれば、何とパワー、トルク共に数値的にライバルよりもだいぶ低い。
具体的な例を示せば、R06Dのパワー、トルクが49ps/6500rpm、58Nm/5000rpmであるのに対し、ホンダの『N-WGN』に搭載されているNAユニットは58ps/7300rpm、65Nm/4800rpm。ダイハツの場合『タント』に搭載されているものが58ps/7200rpm、65Nm/4000rpm。そして三菱『ekクロス』用が52ps/6400rpm、60Nm/3600rpmなどで、机上の数値ではどうもハスラーの分が悪い。
というわけで、まずは一番にこの点を注意しながら試乗を始めてみた。まあ、正直言って全てを横並びで乗り比べたわけではないから、パフォーマンスに関してハスラーが良いとか劣るといったコメントはできないが、では常用した場合のパフォーマンスに関してアンダーパワーを感じるかと言えば、それは全くない。
トルクにしてもそう。ロングストローク化したにも関わらず、どのライバルよりもその数値は低い。しかし、40~60km/h程度の常用域で、パーシャルから加速した際のトルク感のなさを感じるかと言えばそれは全くないのである。
◆燃費、静粛性が光る
こうしたライバルの中にあって、実はこのR06Dが唯一光っている点がある。それがWLTPの燃費だ。ハスラーの場合25.0km/リットルを記録しているが、これが上述したライバルたちは、それぞれN-WGNが23.2km/リットル、タントが21.2km/リットル(最良モデル)、eKクロスが21.2km/リットル。というわけでスズキの狙いは多少のパワー不足を覚悟の上で、燃費に振ったエンジンを開発した?とも取れるわけである。
残念ながら短時間の試乗では燃費の計測ができないから本当のところは分からないが、少なくとも机上のデータを見る限りそう読み取れるし、実際に試乗してみても数値のようなアンダーパワーを感じさせるところはなかった。
静粛性も向上している気がする。気がするというのは、これもちゃんと測定した数値ではなくあくまでも試乗での印象である。例えばルーフの部分に採用した高減衰マスチックシーラーとか、スズキの軽としては初めて採用したという構造用接着剤に、この種のドンガラ構造のボディではトレンドになりそうな環状骨格構造(まあセダンでも使っているが)など、剛性アップと遮音に力を入れた結果だと思うが、その効果は十分に実感できるというわけである。
インテリアも十分斬新でハスラーを買うとこんなことができる、あんなことができるというライフスタイルの提案型商品としての資質はとても高い。何より机上の数値は必ずしも体感性能とは一致しないという見本のようなクルマだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
2014年に誕生して、6年間で軽自動車のクロスオーバーという新しい市場をしっかりと形成したスズキ『ハスラー』。2代目に生まれ変わり、スタイリングこそ基本的に先代のキャリーオーバーとなっているが、中身は大幅な進化を遂げている。
特にNAエンジンを搭載したモデルではそのプラットフォームからエンジンなどメカニズムのすべてを一新したものとなった。具体的にはハーテクトと呼ばれるスズキ独自の新しい構造のプラットフォームが採用されている点。そしてエンジンは新たに開発された「R06D」の呼称を持つエンジンに変わった点などである。
ハーテクトはすでに『アルト』や『ワゴンR』、さらには小型車の『スイフト』などにも採用されているプラットフォームの呼称で、高剛性と軽量化を達成したものとして高い評価を受けたものである。残念ながら今回のハスラーでは先進安全装備の搭載と大型化したボディの影響で、旧型よりも若干重量増となっているそうである。
◆ライバルに対し数値的には劣るものの
一方エンジンは、NAモデルにのみ新開発のR06Dと名付けられた新開発のエンジンが搭載された。従来のR06A(ターボ車にはこれが搭載されている)に対し、ストロークが5.6mmも長いロングストロークエンジンとなっている。一般的にロングストローク化することによって、ピストンスピードが速くなりトルク型になって扱い易く、逆にショートストロークでは高回転型となりパフォーマンス型のエンジンになると言われている。ところが今回のR06Dに限って話をすれば、何とパワー、トルク共に数値的にライバルよりもだいぶ低い。
具体的な例を示せば、R06Dのパワー、トルクが49ps/6500rpm、58Nm/5000rpmであるのに対し、ホンダの『N-WGN』に搭載されているNAユニットは58ps/7300rpm、65Nm/4800rpm。ダイハツの場合『タント』に搭載されているものが58ps/7200rpm、65Nm/4000rpm。そして三菱『ekクロス』用が52ps/6400rpm、60Nm/3600rpmなどで、机上の数値ではどうもハスラーの分が悪い。
というわけで、まずは一番にこの点を注意しながら試乗を始めてみた。まあ、正直言って全てを横並びで乗り比べたわけではないから、パフォーマンスに関してハスラーが良いとか劣るといったコメントはできないが、では常用した場合のパフォーマンスに関してアンダーパワーを感じるかと言えば、それは全くない。
トルクにしてもそう。ロングストローク化したにも関わらず、どのライバルよりもその数値は低い。しかし、40~60km/h程度の常用域で、パーシャルから加速した際のトルク感のなさを感じるかと言えばそれは全くないのである。
◆燃費、静粛性が光る
こうしたライバルの中にあって、実はこのR06Dが唯一光っている点がある。それがWLTPの燃費だ。ハスラーの場合25.0km/リットルを記録しているが、これが上述したライバルたちは、それぞれN-WGNが23.2km/リットル、タントが21.2km/リットル(最良モデル)、eKクロスが21.2km/リットル。というわけでスズキの狙いは多少のパワー不足を覚悟の上で、燃費に振ったエンジンを開発した?とも取れるわけである。
残念ながら短時間の試乗では燃費の計測ができないから本当のところは分からないが、少なくとも机上のデータを見る限りそう読み取れるし、実際に試乗してみても数値のようなアンダーパワーを感じさせるところはなかった。
静粛性も向上している気がする。気がするというのは、これもちゃんと測定した数値ではなくあくまでも試乗での印象である。例えばルーフの部分に採用した高減衰マスチックシーラーとか、スズキの軽としては初めて採用したという構造用接着剤に、この種のドンガラ構造のボディではトレンドになりそうな環状骨格構造(まあセダンでも使っているが)など、剛性アップと遮音に力を入れた結果だと思うが、その効果は十分に実感できるというわけである。
インテリアも十分斬新でハスラーを買うとこんなことができる、あんなことができるというライフスタイルの提案型商品としての資質はとても高い。何より机上の数値は必ずしも体感性能とは一致しないという見本のようなクルマだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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