ヤリス vs フィット 比較試乗 そのスタイルや思想は想像以上に対照的…デザイン&使い勝手編
◆ヤリスとフィット、サイズの違いは
たまたま前後して発売されたトヨタ『ヤリス』と新型ホンダ『フィット』。この2車は“クラス”こそ同一ながら、“カテゴリー”はまったく違うクルマである。
ボディサイズを較べると、全幅は両者とも5ナンバーに収まる1695mm。『フィット』は全長が55mm長く(とはいえ4m以内に収めた3995mmだ)、全高もFF車同士なら15mmだけ高い。反対にホイールベースは『ヤリス』が20mmだけ長い2550mmだ。
ついでながら車重は、シリーズ全体(4WD車含む)で『ヤリス』が940~1180kg、『フィット』は1100~1280kgだ。実車を並べてみるとサイズの差は小さく感じるものの、単体で眺めると、『フィット』が多用途ピープル・ムーバー的なモデルなのに対し、『ヤリス』は2BOXのいわゆるコンパクトハッチだ。
◆デザインのテイストはまったく正反対
『フィット』は先代までの雰囲気、世界観をガラッと変えて、とにかくプレーンでシンプル。今だから言うが、昨年、北海道のテストコースで初めて実車を目の当たりにした時は、その変わりように面食らったほど。個人の感想ではあるが、第一印象は“ミュータントのよう、もしくは、シトロエン『C4ピカソ(現グランドC4スペースツアラー)』から灰汁を抜いた感じ”だった。
が、何度か実車に接し、今回のロケでは3泊4日ほど試乗車を預かっているウチに、気持ちが馴染み始めた。“柴犬のような心地いい存在感、安心感”がデザインのコンセプトだったそうだが、返却時、なめらかでトガったところのないボディは洗車、拭き上げをしている時でさえ気持ちを癒してくれた。
対して『ヤリス』は、ひたすらアグレッシブだ。キャビンを凝縮させリヤバンパーを後方に張り出させたシルエット、まるで“ミニ・スープラ”のような、これでもかといった饒舌なディテールは『フィット』とは正反対だ。
どちらがいい、悪いではなく、それは方向性の違いであり、こうした勢い、若々しさを前面に出したデザインは『アイゴ』やプジョーなど、欧州市場のA(B)セグメントのコンパクトカーに通じる。今回はその方式をとったのだろう……と理解している。
◆インテリアも両者の“スタイル”は対照的
前席はインパネ上面から一切の凹凸を廃した『フィット』の開放感が印象的だ。Aピラーは2本に分け、前側をスリムにしたことで水平方向の広い視界を確保。運転席は座面をやや高めにセットし、ミニバンのような見晴らし感覚のポジションも取れる。操作系はとにかく必要なものだけ備わる……そんな感じで迷わない。
一方で後席も、とにかくスペースがゆったりしているのがいい。シート座面のクッション(座った時のたわみ量)がタップリとしているのもいい。後席ドアは直角近くまで開いてくれ、開口部も前後で710mm、地面から上方までの高さ1380mmと大きく、乗降はしやすい。
リヤゲートを開けた際の“敷居”は600mmほどで低く、後席を起こした状態のラゲッジスペース床面は幅1010mm×奥行き660mmほど。
対する『ヤリス』は曲面を多用したインパネがまず目に入る。パーツひとつひとつのクオリティを担保することで全体の質感を出している。
液晶のメーターは、左右に速度とシフトポジションを大きく表示し見やすい。シフトレバーは操作時に感じるタッチが僅かに渋め。あとほんの少しだけ取れ、滑らかなクリック感が味わえるとさらにいい。
運転ポジションはスポーツカーのような、カッチリと自分がクルマに収まる感じ。ステアリング径とクリップ太さ、断面形状もしっくりとくる。後席は外観のイメージからすると窓は小さめながら、座面を高く、背もたれが起こされた着座姿勢で、足元、頭上の空間も余裕はある。
ラゲッジスペースには左右4箇所のフックに止めて使用するラゲッジカバー(“ボード”ではなくやわらかな素材)を備え、床面は幅990mm×奥行き630mmほどで、後席を倒した状態で高さが揃うほか、床板を外せばさらに150mmほど深さを増やすことができる。リヤゲートの開口部は幅910mm×上下830mmほどで使いやすい(文中の寸法はすべて撮影時の筆者計測値)。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
たまたま前後して発売されたトヨタ『ヤリス』と新型ホンダ『フィット』。この2車は“クラス”こそ同一ながら、“カテゴリー”はまったく違うクルマである。
ボディサイズを較べると、全幅は両者とも5ナンバーに収まる1695mm。『フィット』は全長が55mm長く(とはいえ4m以内に収めた3995mmだ)、全高もFF車同士なら15mmだけ高い。反対にホイールベースは『ヤリス』が20mmだけ長い2550mmだ。
ついでながら車重は、シリーズ全体(4WD車含む)で『ヤリス』が940~1180kg、『フィット』は1100~1280kgだ。実車を並べてみるとサイズの差は小さく感じるものの、単体で眺めると、『フィット』が多用途ピープル・ムーバー的なモデルなのに対し、『ヤリス』は2BOXのいわゆるコンパクトハッチだ。
◆デザインのテイストはまったく正反対
『フィット』は先代までの雰囲気、世界観をガラッと変えて、とにかくプレーンでシンプル。今だから言うが、昨年、北海道のテストコースで初めて実車を目の当たりにした時は、その変わりように面食らったほど。個人の感想ではあるが、第一印象は“ミュータントのよう、もしくは、シトロエン『C4ピカソ(現グランドC4スペースツアラー)』から灰汁を抜いた感じ”だった。
が、何度か実車に接し、今回のロケでは3泊4日ほど試乗車を預かっているウチに、気持ちが馴染み始めた。“柴犬のような心地いい存在感、安心感”がデザインのコンセプトだったそうだが、返却時、なめらかでトガったところのないボディは洗車、拭き上げをしている時でさえ気持ちを癒してくれた。
対して『ヤリス』は、ひたすらアグレッシブだ。キャビンを凝縮させリヤバンパーを後方に張り出させたシルエット、まるで“ミニ・スープラ”のような、これでもかといった饒舌なディテールは『フィット』とは正反対だ。
どちらがいい、悪いではなく、それは方向性の違いであり、こうした勢い、若々しさを前面に出したデザインは『アイゴ』やプジョーなど、欧州市場のA(B)セグメントのコンパクトカーに通じる。今回はその方式をとったのだろう……と理解している。
◆インテリアも両者の“スタイル”は対照的
前席はインパネ上面から一切の凹凸を廃した『フィット』の開放感が印象的だ。Aピラーは2本に分け、前側をスリムにしたことで水平方向の広い視界を確保。運転席は座面をやや高めにセットし、ミニバンのような見晴らし感覚のポジションも取れる。操作系はとにかく必要なものだけ備わる……そんな感じで迷わない。
一方で後席も、とにかくスペースがゆったりしているのがいい。シート座面のクッション(座った時のたわみ量)がタップリとしているのもいい。後席ドアは直角近くまで開いてくれ、開口部も前後で710mm、地面から上方までの高さ1380mmと大きく、乗降はしやすい。
リヤゲートを開けた際の“敷居”は600mmほどで低く、後席を起こした状態のラゲッジスペース床面は幅1010mm×奥行き660mmほど。
対する『ヤリス』は曲面を多用したインパネがまず目に入る。パーツひとつひとつのクオリティを担保することで全体の質感を出している。
液晶のメーターは、左右に速度とシフトポジションを大きく表示し見やすい。シフトレバーは操作時に感じるタッチが僅かに渋め。あとほんの少しだけ取れ、滑らかなクリック感が味わえるとさらにいい。
運転ポジションはスポーツカーのような、カッチリと自分がクルマに収まる感じ。ステアリング径とクリップ太さ、断面形状もしっくりとくる。後席は外観のイメージからすると窓は小さめながら、座面を高く、背もたれが起こされた着座姿勢で、足元、頭上の空間も余裕はある。
ラゲッジスペースには左右4箇所のフックに止めて使用するラゲッジカバー(“ボード”ではなくやわらかな素材)を備え、床面は幅990mm×奥行き630mmほどで、後席を倒した状態で高さが揃うほか、床板を外せばさらに150mmほど深さを増やすことができる。リヤゲートの開口部は幅910mm×上下830mmほどで使いやすい(文中の寸法はすべて撮影時の筆者計測値)。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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