トヨタ ヤリス 新型試乗 40km/L超えも!? HVはスタンドを閉店に追い込むほどの低燃費…片岡英明

トヨタ ヤリス ハイブリッド(G)
◆「ハイブリッドコンパクト」の観念を大きく変える

燃費のいいコンパクトカーにハイブリッド車はいらないと思っている人は少なくない。が、『ヤリス』のハイブリッド車に乗ってみると、その観念が大きく変わるはずだ。

トヨタの世界戦略車であり、WRC(世界ラリー選手権)にも参戦しているヤリスは、自慢のTNGAプラットフォームを採用し、構造用接着剤も使って剛性アップを図るとともに軽量化も達成した。ハイブリッド車は、先代の『ヴィッツ』と比べて50kgほど軽く、重心高も15mm下げている。


ハイブリッド車は熱効率を高め、燃費を極めた1490ccのM15A-FXE型3気筒DOHCにモーターの組み合わせだ。エンジンの最高出力は67kW(91ps)/5500rpm、最大トルクは120Nm(12.2kg-m)/3800~4800rpmである。これに駆動用モーターが加わるが、モーターはプリウスのものより高出力だ。

59kW(80ps)/141Nm(14.4kg-m)を発生し、システム最高出力は85kW(116ps)とした。性能的には1.8リットルクラスのガソリン車と同等以上の実力だ。トランスミッションは電気式無段変速機(CVT)で、EVモードも装備する。


◆プリウスでも味わえない加速フィール、そして驚異的な燃費

アクセルを踏み込むと、モーターアシストならではの力強いトルクを低回転域から発生した。ヴィッツより軽量化されているし、モーターもパワフルだから冴えた加速を披露した。ボディが身軽になったように感じる鋭い瞬発力と直線的な加速フィールは、『プリウス』やヴィッツでは味わえなかったものだ。しかもアクセル操作に気を遣った丁寧な運転だとEV走行の領域も広がっている。EVの活躍の場が増えたから燃費はいいし、快適性も大きく向上した。

EV走行中は、コンパクトカーの域を超えた静粛性だ。アイドリングストップも違和感なく作動する。ただし、走行中のロードノイズの侵入はクラス平均レベルなので、もう少し入念な遮音対策を望みたい。また、エンジンがかかると3気筒ならではのガサツなノイズが耳に付くし、ラフな振動も気になった。EV走行したときとの差は大きいが、ガソリンエンジン車と比べると快適性は一歩上を行く。

ハンドリングは、1.5リットルのガソリン車には及ばないが軽やかで、ボディもシャシーもシャキッとしている。ワインディングロードに持ち込んでも狙ったラインに無理なく乗せることができ、15インチの60タイヤをうまく使いこなしていた。


ブラシレスモーターを採用した電動パワーステアリングは試作車のときより操舵フィールがよくなり、軽やかな回頭性を見せるようになっている。コーナーではロールをこらえ、リアの挙動にも落ち着きがあった。ブレーキ性能はそれなりだが、一般的な走りなら問題はないだろう。気になる乗り心地も、ガソリン車より好印象と感じられた。

ちなみに「ハイブリッドG」のWLTCモード燃費は35.8km/リットルだ。試乗車は標準装着の175/70R14サイズではなく、オプション設定のタイヤ、185/60R15サイズのダンロップ製エナセーブを履いていた。燃費には不利になるはずだが、高速道路と市街地走行を合わせて130kmほど走り、40km/リットルの平均燃費を叩き出している。丁寧に運転したときは、42km/リットルを超えたから驚きだ。ガソリンスタンドを閉店に追い込むほど燃費はいい。


◆キャビン、パッケージングはヴィッツの域を出ていない

キャビンの質感はヴィッツの域を出ていない。樹脂の打ちっ放しのインパネは安っぽいし、トリムもベーシックであることを意識させる。座って快適なのは前席だ。ヴィッツと違い、大柄な人でも最適なドライビングポジションを取れるようになった。着座位置が低くなったからスポーティ感が増したし、大ぶりのフロントシートも座り心地がいい。

だが、ホイールベースを40mm延ばしたにも関わらず後席の足元空間はヴィッツより狭いと感じる。前席優先の設計で、リアゲートも傾斜が強いから大柄な荷物は積みにくいだろう。期待が大きかっただけにパッケージングはヴィッツの域を出なかったことにガッカリした。

とはいえ、走りの実力と安全性能ははるかに高いレベルに引き上げられたし、燃費においても圧倒している。これがライバルにはない魅力だ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員

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