トヨタ ハリアー 新型試乗 「快適なセダンの性能をSUVの形で実現」その走りは予想以上だった…島崎七生人
初代『ハリアー』が登場したのは今から23年前のこと。井型のサブフレームにエンジンをマウントした当時の乗用車『ウィンダム』のプラットフォームをベースに仕立てられた“都市型SUV”の先駆者(車)だった。
富士山麓の某所をベースに開催されたプレス試乗会に参加したことはついきのうのことのよう(!)だが、初めての試乗で、うねりのある朝霧周辺の道をきれいなバウンジングで見事に収めながら走る、それまでのSUVの概念を覆す、まさに高級セダンのようななめらかで上質な乗り味に舌を巻いたことをよく覚えている。
時は流れて2020年の今年6月、日本市場向けの『ハリアー』では4代目となる最新型が登場することとなった。国内専用モデルだった先代の後継型だ。
◆代わり映えよりも「ハリアーらしさ」を意識した
外観スタイルはフロントマスクに先代の面影を残すなど従来型のイメージ、アイコンを残しつつ、全体としては、しっとりとした曲面構成で新しさを出した。「今の若いユーザーは代わり映えは望んでいない。なのでモデルチェンジしても“ハリアーらしさ”が感じられるように意識し、先代のエレガントさに強さ、逞しさを加えた」(MS製品企画ZD主査・小島利章さん)という。
ちなみに新型は『カムリ』と同じTNGAプラットフォーム(GA-K)としたことでデザイン代(しろ)の余裕もでき、キャラクターラインを入れずに面の抑揚、光の加減で表情豊かにした。バックドアは相当に“えぐり”の深い形状だがこれは「今回は企画段階から全部署が参画。製造サイドの提案で、スチールを分割する方法でこの形状が実現」(小島さん)したもの。特徴を極めたスタイリングという訳だ。
他方でインテリアは上質さが追求された。乗馬の鞍のイメージの優雅なセンターコンソール、メタルラッチとパイピングを組み合わせた新しい加飾など、随所にこだわりを見せる。物理スイッチをズラリと並べず、静電スイッチを使いスッキリとまとめたインパネ周りも特徴。
当然ながら快適性を求めての手当ても入念で、ドアガラス(前席)の板厚アップや、ラゲッジスペースのデッキボード裏に吸音材を貼り込んだほか、ホイールハウス内側のライナーは吸・遮音機能のある素材を採用。ドアまわりの吸音とシール構造を配慮することで、ドアを閉めた際にまわりから遮断される雰囲気を重視したり、フロアサイレンサー、車室内吸音材の配置など、広範囲に対策がされている。
◆予想以上の好印象だったのは2リットルガソリンのFFモデル
走りは「初代以来脈々と続く、セダンとSUVのクロスオーバーとして、スタイリングと共通の世界観にまとめた」(小島さん)という。「キーワードを“雅(みやび)”とし、しなやか、なめらかで、ゆったりと、ロングドライブをこなす“ツアラー”の資質を重視。ハイウェイでも外乱をかわし、直進安定性もピタッと決まる。疲れない。快適なセダンの性能をSUVの形で実現した今風のクルマだと考えている」(小島さん)のだそうだ。
今回は正式発売直前の、サーキットでの試乗となった。試乗車そのものは“プロトタイプ”との案内とはいえ、実車の状態はほぼ量産車といっていい仕上がりぶりだった。試乗できたのはハイブリッド仕様とガソリン仕様で、ハイブリッドはFFと電気モーターを使った4WDのE-Fourの2タイプ、ガソリン車はFFモデル。
このうち、予想以上に好印象だったのがガソリン車のFFで、開発者が“コンベ(ンショナル)”と呼ぶ、排気量2リットルのエンジンを載せたこの仕様の走りは、あらゆる場面で自然なパワーフィールを発揮してくれ、街中や一般的なドライブで乗るシーンをイメージすると、何ら不満なし……そんな印象。
対してハイブリッド仕様は、エンジン自体の排気量も2.5リットルと大きく、モーターが加わりFFもE-Fourもガソリン車に比べ動力性能は高まるから(システム出力はFFが218ps、E-Fourが222ps)、ドライブモードを選択しながら手応えのある走りも可能。とはいえシステムの特性を理解、会得した上で走らせるのがカギであるのはいうまでもなく、そうすることで、スムースで効率のいい走りが手に入るタイプに感じた。
またいずれのタイプでも、新型は先代よりホイールベース(+30mm)が伸び、トレッドはフロント+45mm、リヤ+65mmと大幅に拡大されたことで、コーナリング時の車体の安定感が高く、『ハリアー』らしいフラットライドもしっかりと味わえるのが特徴だ。一般公道での印象は、また改めてご報告したい。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
富士山麓の某所をベースに開催されたプレス試乗会に参加したことはついきのうのことのよう(!)だが、初めての試乗で、うねりのある朝霧周辺の道をきれいなバウンジングで見事に収めながら走る、それまでのSUVの概念を覆す、まさに高級セダンのようななめらかで上質な乗り味に舌を巻いたことをよく覚えている。
時は流れて2020年の今年6月、日本市場向けの『ハリアー』では4代目となる最新型が登場することとなった。国内専用モデルだった先代の後継型だ。
◆代わり映えよりも「ハリアーらしさ」を意識した
外観スタイルはフロントマスクに先代の面影を残すなど従来型のイメージ、アイコンを残しつつ、全体としては、しっとりとした曲面構成で新しさを出した。「今の若いユーザーは代わり映えは望んでいない。なのでモデルチェンジしても“ハリアーらしさ”が感じられるように意識し、先代のエレガントさに強さ、逞しさを加えた」(MS製品企画ZD主査・小島利章さん)という。
ちなみに新型は『カムリ』と同じTNGAプラットフォーム(GA-K)としたことでデザイン代(しろ)の余裕もでき、キャラクターラインを入れずに面の抑揚、光の加減で表情豊かにした。バックドアは相当に“えぐり”の深い形状だがこれは「今回は企画段階から全部署が参画。製造サイドの提案で、スチールを分割する方法でこの形状が実現」(小島さん)したもの。特徴を極めたスタイリングという訳だ。
他方でインテリアは上質さが追求された。乗馬の鞍のイメージの優雅なセンターコンソール、メタルラッチとパイピングを組み合わせた新しい加飾など、随所にこだわりを見せる。物理スイッチをズラリと並べず、静電スイッチを使いスッキリとまとめたインパネ周りも特徴。
当然ながら快適性を求めての手当ても入念で、ドアガラス(前席)の板厚アップや、ラゲッジスペースのデッキボード裏に吸音材を貼り込んだほか、ホイールハウス内側のライナーは吸・遮音機能のある素材を採用。ドアまわりの吸音とシール構造を配慮することで、ドアを閉めた際にまわりから遮断される雰囲気を重視したり、フロアサイレンサー、車室内吸音材の配置など、広範囲に対策がされている。
◆予想以上の好印象だったのは2リットルガソリンのFFモデル
走りは「初代以来脈々と続く、セダンとSUVのクロスオーバーとして、スタイリングと共通の世界観にまとめた」(小島さん)という。「キーワードを“雅(みやび)”とし、しなやか、なめらかで、ゆったりと、ロングドライブをこなす“ツアラー”の資質を重視。ハイウェイでも外乱をかわし、直進安定性もピタッと決まる。疲れない。快適なセダンの性能をSUVの形で実現した今風のクルマだと考えている」(小島さん)のだそうだ。
今回は正式発売直前の、サーキットでの試乗となった。試乗車そのものは“プロトタイプ”との案内とはいえ、実車の状態はほぼ量産車といっていい仕上がりぶりだった。試乗できたのはハイブリッド仕様とガソリン仕様で、ハイブリッドはFFと電気モーターを使った4WDのE-Fourの2タイプ、ガソリン車はFFモデル。
このうち、予想以上に好印象だったのがガソリン車のFFで、開発者が“コンベ(ンショナル)”と呼ぶ、排気量2リットルのエンジンを載せたこの仕様の走りは、あらゆる場面で自然なパワーフィールを発揮してくれ、街中や一般的なドライブで乗るシーンをイメージすると、何ら不満なし……そんな印象。
対してハイブリッド仕様は、エンジン自体の排気量も2.5リットルと大きく、モーターが加わりFFもE-Fourもガソリン車に比べ動力性能は高まるから(システム出力はFFが218ps、E-Fourが222ps)、ドライブモードを選択しながら手応えのある走りも可能。とはいえシステムの特性を理解、会得した上で走らせるのがカギであるのはいうまでもなく、そうすることで、スムースで効率のいい走りが手に入るタイプに感じた。
またいずれのタイプでも、新型は先代よりホイールベース(+30mm)が伸び、トレッドはフロント+45mm、リヤ+65mmと大幅に拡大されたことで、コーナリング時の車体の安定感が高く、『ハリアー』らしいフラットライドもしっかりと味わえるのが特徴だ。一般公道での印象は、また改めてご報告したい。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
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