スズキ イグニス ハイブリッドMF 新型試乗 SUV風味が新鮮!何十年も作り続けて欲しい1台だ…中村孝仁
このところ日本の自動車業界では一種の下克上が起きている気がしてならない。それは自動車販売台数の4割近くを占める軽自動車が、今や日本の象徴的自動車となったこと。
それによって価格面においても高級感を増した結果なのか、一部の小型車よりも高い軽自動車が続出していることだ。勿論、単体価格ではまだ軽の方が安いかもしれないが、オプションを含めた価格となると、同等か小型車を凌駕するケースが増えている。
◆SUVテイストの外観を手に入れたイグニス
スズキ『イグニス』は優れた資質を持つ小型車として評価の高いモデルと認識しているが、今回試乗したのはその中でも最高級のグレードに近い「ハイブリッドMF」というモデル。その価格は車両単体で183万9200円であり、モニターカメラやナビゲーションシステム、ドライブレコーダーなどのオプションを含んでも214万9895円。これに対して軽自動車の最量販カテゴリーともいえるいわゆるスーパーハイト系のモデルは、オプションを含めるとこの値段を凌駕したものが多い。しかもノンターボモデルでである。
こうしたことを考えると、確かに小型車は軽自動車のランニングコストには勝ち目がないのかもしれないが、クルマの出来、安全面などを考慮すると、今リッタークラスの小型車はお買い得なのでは?という気もする。
個人的にイグニスというクルマは日本車の中でも個性豊かなスタイリングを持っていて、長く作り続けて欲しいモデルの1台だ。ヨーロッパには例えばオールド『ミニ』や、VWの初代『ビートル』のように同じ形のまま長く作り続けられて、レジェンドと化したモデルがいくつかある。
残念ながら日本は、例えばトヨタ『カローラ』のように同名のまま長く作り続けているモデルは存在するものの、そのデザインの変遷を見ると果たしてこれが同一のモデルなのかと目を疑うほど激変し、名前だけが継承されているケースが多い。日本人は飽きっぽいから、同じ形はダメなのかもしれないが、個人的にはこのデザインのままいつまでも作り続けて欲しいと思った1台だ。
今回試乗したハイブリッドMFというグレードは、ルーフレールを装備して前後の造形もSUV風に仕立てた新しいもので、従来のノーマルイグニスとは一線を画すものである。たったそれだけの意匠変更なのだが、これまで見慣れたイグニスとはだいぶ雰囲気が違う。SUVテイストの外観は新たな顧客層を生む可能性もあると感じた。
◆車重わずか880kg。軽快に走らないわけがない
広報室のある東京の新橋から都会の雑踏に乗り出してみると、小さなボディと軽快な加速感によって、スイスイと走れることを実感する。NA軽自動車のように、アクセルを目いっぱい踏みつけないでも十分な加速力が得られるのも大きなメリットだ。
車重は新しい「ハーテクト」と呼ばれるプラットフォームのおかげで僅か880kgしかない。スーパーハイト系の軽自動車よりは軽い。同じスズキの『スペーシア』と比較してもその差は10kgほどだからほぼ一緒である。これに1.2リットルの3気筒ユニットを搭載し、倍以上の最大トルクを持つのだから、軽快に走らないわけがない。
とはいえ、一旦郊外に出てクルマの流れが速くなり、そこそこのワインディングを走り始めると正直なところ印象は変わる。まあ、一言で言えば、可も無く不可もない平凡な走り。特段ステアリングがシャープなわけでもないし、ロール剛性が高いという印象もない。
それに、流れが速くなると発進の際に都内よりはアクセルの踏み込み量が多くなって、どうしてもエンジンにかける負荷が大きくなるのだが、こうした状況ではCVTの悪癖が出る。近年CVTの作りは非常に良くなったとはいえ、イグニスに搭載されているCVTはあまり感心しない。ただ、この走りが体に馴染んでしまうととても居心地が良くて、これで十分という印象となる。
まあ、移動ツールとしては申し分ないモデルで、後は個人の感性によるのだが、この個性豊かなスタイルを満喫できればそれでよい。一般道で試乗する限り、果たしてどの程度の潜在能力を持っているのかはわからないが、個人的には長寿車として作り続けられて欲しい車の1台である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
それによって価格面においても高級感を増した結果なのか、一部の小型車よりも高い軽自動車が続出していることだ。勿論、単体価格ではまだ軽の方が安いかもしれないが、オプションを含めた価格となると、同等か小型車を凌駕するケースが増えている。
◆SUVテイストの外観を手に入れたイグニス
スズキ『イグニス』は優れた資質を持つ小型車として評価の高いモデルと認識しているが、今回試乗したのはその中でも最高級のグレードに近い「ハイブリッドMF」というモデル。その価格は車両単体で183万9200円であり、モニターカメラやナビゲーションシステム、ドライブレコーダーなどのオプションを含んでも214万9895円。これに対して軽自動車の最量販カテゴリーともいえるいわゆるスーパーハイト系のモデルは、オプションを含めるとこの値段を凌駕したものが多い。しかもノンターボモデルでである。
こうしたことを考えると、確かに小型車は軽自動車のランニングコストには勝ち目がないのかもしれないが、クルマの出来、安全面などを考慮すると、今リッタークラスの小型車はお買い得なのでは?という気もする。
個人的にイグニスというクルマは日本車の中でも個性豊かなスタイリングを持っていて、長く作り続けて欲しいモデルの1台だ。ヨーロッパには例えばオールド『ミニ』や、VWの初代『ビートル』のように同じ形のまま長く作り続けられて、レジェンドと化したモデルがいくつかある。
残念ながら日本は、例えばトヨタ『カローラ』のように同名のまま長く作り続けているモデルは存在するものの、そのデザインの変遷を見ると果たしてこれが同一のモデルなのかと目を疑うほど激変し、名前だけが継承されているケースが多い。日本人は飽きっぽいから、同じ形はダメなのかもしれないが、個人的にはこのデザインのままいつまでも作り続けて欲しいと思った1台だ。
今回試乗したハイブリッドMFというグレードは、ルーフレールを装備して前後の造形もSUV風に仕立てた新しいもので、従来のノーマルイグニスとは一線を画すものである。たったそれだけの意匠変更なのだが、これまで見慣れたイグニスとはだいぶ雰囲気が違う。SUVテイストの外観は新たな顧客層を生む可能性もあると感じた。
◆車重わずか880kg。軽快に走らないわけがない
広報室のある東京の新橋から都会の雑踏に乗り出してみると、小さなボディと軽快な加速感によって、スイスイと走れることを実感する。NA軽自動車のように、アクセルを目いっぱい踏みつけないでも十分な加速力が得られるのも大きなメリットだ。
車重は新しい「ハーテクト」と呼ばれるプラットフォームのおかげで僅か880kgしかない。スーパーハイト系の軽自動車よりは軽い。同じスズキの『スペーシア』と比較してもその差は10kgほどだからほぼ一緒である。これに1.2リットルの3気筒ユニットを搭載し、倍以上の最大トルクを持つのだから、軽快に走らないわけがない。
とはいえ、一旦郊外に出てクルマの流れが速くなり、そこそこのワインディングを走り始めると正直なところ印象は変わる。まあ、一言で言えば、可も無く不可もない平凡な走り。特段ステアリングがシャープなわけでもないし、ロール剛性が高いという印象もない。
それに、流れが速くなると発進の際に都内よりはアクセルの踏み込み量が多くなって、どうしてもエンジンにかける負荷が大きくなるのだが、こうした状況ではCVTの悪癖が出る。近年CVTの作りは非常に良くなったとはいえ、イグニスに搭載されているCVTはあまり感心しない。ただ、この走りが体に馴染んでしまうととても居心地が良くて、これで十分という印象となる。
まあ、移動ツールとしては申し分ないモデルで、後は個人の感性によるのだが、この個性豊かなスタイルを満喫できればそれでよい。一般道で試乗する限り、果たしてどの程度の潜在能力を持っているのかはわからないが、個人的には長寿車として作り続けられて欲しい車の1台である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める
(レスポンス 中村 孝仁)
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