ダイハツ タフト 新型試乗 ハスラーとは「かなり違う」オールマイティな実用車…島崎七生人

ダイハツ タフト
『ロッキー』に続き自社銘柄をリバイバルさせて登場した『タフト』。カタログ写真を撮っておいた1974年の“先祖”は当時の本格クロカン4WDだったが、新型は、今どきの“映えるクロスオーバーSUV”に生まれ変わって登場した。

触れない訳にいかないのはスズキ『ハスラー』との違い。だが、実車にやっと試乗でき実感したのは「随分と趣が違う」という事実だった。


◆ヘナッとしていないところがいい

実は2460mmのホイールベースは両車で共通。外観をつぶさに観察すると、ヘッドランプが丸か四角かに象徴されるように『タフト』のほうが全体に“箱感”が強い。またタイヤサイズは資料でも“大径タイヤ”と謳っており、165/65 R15(『ハスラー』は165/60 R15、外径差は15mm程度になる)を標準装着し、足下の逞しさを強調している点も特徴。

さらに見逃せないのは、ボディの四隅を絞り、相対的に樹脂別体パーツのバンパー、ホイールアーチをしっかりと立体的に張り出させていることだ。これによりプロテクターとしての本来の機能を果たすだろうし、足(タイヤ)のしっかり感とともに、コンパクトな軽のボディサイズの中でキチンとスタンスをとっている点に好感をもつ。

平たく言えば、ヘナッとしていないところがいい。ちなみにフロント、リヤまわりのデザインで、バンパーに厚みをもたせボディ側を薄くしたバランスは『ハマー』を思わせる。


◆“バックパック”コンセプトに納得のデザイン

インテリアでは、ドライバーの頭上はるか後方まで視界が開ける「スカイフィールトップ」が開放感タップリだ。G系グレードなら、フロントガラス、フロント左右ドアガラスとともにUV、IRカット機能があるのは嬉しい。

インパネは、個人的な感想でいうとセンターパネルのカドを落とした昔ながらのゴツッとした風合いの4駆イメージのデザインと、レジスターの“ヨコとタテ”が混在しているところが気になる。パネル自体がスッキリとモダンなデザインでもいいのでは?と思う。

が、2眼メーター(試乗車はGターボとGだった)は見やすく落ち着いたデザインだし、インパネやドアトリム表面のIDシボ(細かなドットパターン)は目に障らず、艶の落としかた、サラッとした触感など、質感は高い。

ここだけの話だが、実は外観でリヤサイドドアがデザインを“違えてある”点に、当初は違和感を覚えた。窓の上側開口線が僅かだが段違いに低くなっていたり、Bピラー側のデザインも何コレ?と思えたからだ。しかし“バックパック”をコンセプトに、Bピラーから後ろの表情をあえて切り替えて作ったと知り、納得することにした次第。

ドアトリムのデザインもフロントとはまったく違うし、リヤ席シートバックに汚れにくい加工が施されていたりと、多様性がなかなか考えられている。後席を倒した場合(フルフラットを完全な水平にするにはヘッドレストを外すか持ち上げておく必要がある)、ドアとリヤクォータートリムの形状とがピッタリ一致するようにしてある、こういう気配りはレポーターは個人的に大好きである。


◆使い心地のいい実用車

走りはストレスがなく、乗り味も安心感の高いもの。とくにターボはNAとのスペックの差分のパワーとトルクの余裕が思いどおりの走りを体感させてくれる。一方でNAも加速の速さなどはターボとの差はあるものの、Gグレードであれば“D assist”を活用することで、日常シーンでも颯爽と走らせられ、その意味ではターボから大きく見劣りしない。

65タイヤは優しい乗り心地にも寄与しているほか、装着銘柄(ヨコハマ BluEarth-FE AE30)の特性なのかロードノイズの立ち方、伝わり方が穏やかで、走行中の快適性は高かった。

ダイハツの資料によれば軽自動車ユーザーの女性比率は65%、一方60歳以上は40%という。後者は今後ますます増加するのだろうが、乗降性のよさ(とくに後席)、やや高めのアイポイントなど、ベテランのドライバーにも馴染みやすいはずだ。

前席のホールド性はいいし、後席座面前端を少し盛り上げクッションストロークを深くした後席の着座感は秀逸だから、人も安心して乗せられる。要するに使い心地のいい実用車という訳だ。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。

(レスポンス 島崎七生人)

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