マツダ CX-3 15Sツーリング 新型試乗 ただの廉価版と侮ることなかれ…中村孝仁
◆廉価版は「我慢が必要なクルマ」?
北米の権威ある自動車産業新聞『オートモティブニュース』によれば、マツダ『CX-3』は2021年にフルモデルチェンジをするという。CX-3の登場は2015年であるから、6年目ならまああっても不思議はない話である。
そう考えると新たに廉価版ともいえる1.5リットルガソリン仕様を出すのは、モデル末期とはいえあと一息販売にテコ入れしようということだろうか。
お手頃とか廉価版と言うと、どうしても何となく我慢が必要なクルマというイメージが付きまとってしまうのだが、最近のお手頃車というのはどうもそうではないらしい。一番手を抜きやすいセーフティの部分を調べてみても、ACCが省かれることとアダプティブLEDヘッドライトが付かない程度で、あとは2リットルガソリン車と何ら変わるところはない。
アダプティブじゃないけれどヘッドライトは当然LED。しかもハイビームコントロールシステムも付く。実際試乗してあれこれと何が必要かなぁ???と考えてみても、絶対これは要ると思ったものは何一つ思い浮かばなかった。
◆5年経った今でも色褪せないデザイン
試乗車の『CX-3 15Sツーリング』はオプションとしてCD/DVDプレーヤーと地上デジタルTVチューナー、それに360度ビューモニター及びフロントパーキングセンサーが装備されていた。その合計は消費税込みで7万7000円。これに車両本体価格を合計しても206万8000円(税込)だから、軽自動車を買うつもりで楽々手が届く。
2リットル車と比較して外観ですぐに目に付くのはタイヤ/ホイールが16インチとされていることくらいなもので、見た目にもすれ違ったくらいでは上級モデルとの差異は全くないのである。
1.5リットルユニットは他のマツダ車、即ち『マツダ2』あるいは『マツダ3』に搭載されているエンジンと同じかと思いきや、そのチューニングは微妙に異なっていて、最高出力はマツダ2のみ110psで、他は111ps。これが最大トルクとなるとマツダ2は141Nm、マツダ3は146Nmであるのに対して、今回のCX-3は144Nmと僅かずつだが異なる。もっともそれによる差が乗っていて感じられるかと言えば、正直感じられない。
ご存知の通り、CX-3は形の上では一応SUVということになるのだと思うが、今でこそ一口にSUVと言っても、スタイル重視とか機能重視とかきめ細かい差別化が浸透しているが、このクルマが誕生した2015年当時はそうではなく、SUVだったらそこには走りの性能だけでなく、機能性を求められるのが当たり前の時代。
ところがCX-3と来たら、その機能面では極端な話当時の『デミオ』にも劣るほど、ユーティリティーの能力に欠けていた。それほどスタイル重視で作られたクルマだったといっても良い。おかげで5年たった今でも、そのデザインは色褪せることなく、とても魅力的だと個人的には思う。だから、SUVと言うよりも少し目線が高いハッチバック車だと言って良いのではないだろうか。
◆侮り難い潜在的ポテンシャルを秘めている
チューンこそ異なっているが同じガソリン1.5リットルエンジンを搭載したマツダ3に乗った時に、その素性の良さから「隠れた名車」と表したが、どうしてどうしてこのCX-3 15Sツーリングも侮り難い潜在的ポテンシャルを秘めていると言って過言ではない。
我々ジャーナリスト目線になると常に最良を求める傾向が強くて、だからCX-3の場合も初めからディーゼルが良いと感じているのだが、年間走行距離が少なく、かつ静かなモデルの方が良いとなれば、2リットルガソリン車が視野に入り、さらに乗り心地が良い方が良いなとなればこの15Sが視野に入るという寸法で、グレード設定も実にうまくできていると思えた。
装着タイヤが16インチになるとやはり18インチと比べた時は突き上げ感の入力も柔らかい。正直に言わせてもらうと、元々マツダ車の乗り心地は、こと突き上げ感に関して決してうまく消せている方ではないから、乗り心地重視派は断然16インチがお勧めとなる。勿論ワインディングを気持ちよく走りたいという欲求の強いユーザーはこの限りではないが、もしそうならそもそもCX-3のチョイスよりもより重心の低いマツダ3の方がお薦めだ。
エンジンは十分にスムーズで軽快な回転フィールを持っている。6速のATは物足りないが、個人的にはCVTより断然快適に走れるし、やはりステップATの方が良い。とにかく、あらゆる角度から見て確かにお手頃な廉価版には違いないのだろうが、過不足全くなし!である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
北米の権威ある自動車産業新聞『オートモティブニュース』によれば、マツダ『CX-3』は2021年にフルモデルチェンジをするという。CX-3の登場は2015年であるから、6年目ならまああっても不思議はない話である。
そう考えると新たに廉価版ともいえる1.5リットルガソリン仕様を出すのは、モデル末期とはいえあと一息販売にテコ入れしようということだろうか。
お手頃とか廉価版と言うと、どうしても何となく我慢が必要なクルマというイメージが付きまとってしまうのだが、最近のお手頃車というのはどうもそうではないらしい。一番手を抜きやすいセーフティの部分を調べてみても、ACCが省かれることとアダプティブLEDヘッドライトが付かない程度で、あとは2リットルガソリン車と何ら変わるところはない。
アダプティブじゃないけれどヘッドライトは当然LED。しかもハイビームコントロールシステムも付く。実際試乗してあれこれと何が必要かなぁ???と考えてみても、絶対これは要ると思ったものは何一つ思い浮かばなかった。
◆5年経った今でも色褪せないデザイン
試乗車の『CX-3 15Sツーリング』はオプションとしてCD/DVDプレーヤーと地上デジタルTVチューナー、それに360度ビューモニター及びフロントパーキングセンサーが装備されていた。その合計は消費税込みで7万7000円。これに車両本体価格を合計しても206万8000円(税込)だから、軽自動車を買うつもりで楽々手が届く。
2リットル車と比較して外観ですぐに目に付くのはタイヤ/ホイールが16インチとされていることくらいなもので、見た目にもすれ違ったくらいでは上級モデルとの差異は全くないのである。
1.5リットルユニットは他のマツダ車、即ち『マツダ2』あるいは『マツダ3』に搭載されているエンジンと同じかと思いきや、そのチューニングは微妙に異なっていて、最高出力はマツダ2のみ110psで、他は111ps。これが最大トルクとなるとマツダ2は141Nm、マツダ3は146Nmであるのに対して、今回のCX-3は144Nmと僅かずつだが異なる。もっともそれによる差が乗っていて感じられるかと言えば、正直感じられない。
ご存知の通り、CX-3は形の上では一応SUVということになるのだと思うが、今でこそ一口にSUVと言っても、スタイル重視とか機能重視とかきめ細かい差別化が浸透しているが、このクルマが誕生した2015年当時はそうではなく、SUVだったらそこには走りの性能だけでなく、機能性を求められるのが当たり前の時代。
ところがCX-3と来たら、その機能面では極端な話当時の『デミオ』にも劣るほど、ユーティリティーの能力に欠けていた。それほどスタイル重視で作られたクルマだったといっても良い。おかげで5年たった今でも、そのデザインは色褪せることなく、とても魅力的だと個人的には思う。だから、SUVと言うよりも少し目線が高いハッチバック車だと言って良いのではないだろうか。
◆侮り難い潜在的ポテンシャルを秘めている
チューンこそ異なっているが同じガソリン1.5リットルエンジンを搭載したマツダ3に乗った時に、その素性の良さから「隠れた名車」と表したが、どうしてどうしてこのCX-3 15Sツーリングも侮り難い潜在的ポテンシャルを秘めていると言って過言ではない。
我々ジャーナリスト目線になると常に最良を求める傾向が強くて、だからCX-3の場合も初めからディーゼルが良いと感じているのだが、年間走行距離が少なく、かつ静かなモデルの方が良いとなれば、2リットルガソリン車が視野に入り、さらに乗り心地が良い方が良いなとなればこの15Sが視野に入るという寸法で、グレード設定も実にうまくできていると思えた。
装着タイヤが16インチになるとやはり18インチと比べた時は突き上げ感の入力も柔らかい。正直に言わせてもらうと、元々マツダ車の乗り心地は、こと突き上げ感に関して決してうまく消せている方ではないから、乗り心地重視派は断然16インチがお勧めとなる。勿論ワインディングを気持ちよく走りたいという欲求の強いユーザーはこの限りではないが、もしそうならそもそもCX-3のチョイスよりもより重心の低いマツダ3の方がお薦めだ。
エンジンは十分にスムーズで軽快な回転フィールを持っている。6速のATは物足りないが、個人的にはCVTより断然快適に走れるし、やはりステップATの方が良い。とにかく、あらゆる角度から見て確かにお手頃な廉価版には違いないのだろうが、過不足全くなし!である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファーデプト代表取締役も務める。
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