ホンダ レジェンド 新型試乗 意外と目立ち度は抜群!「一世代前」感は拭えないが…内田俊一
最近では『インサイト』や『アコード』など次々と上質なセダンを投入しているホンダ。一時は「セダン愛」を前面に打ち出していたホンダだが、改めてその真意を探るべくフラッグシップセダンである『レジェンド』を連れ出し500kmほどのテストドライブに出かけた。
◆主に走りと乗り味の質を求めた改良
まずは少しレジェンドについて復習しておこう。現行レジェンドは2014年にデビュー。3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載していることが最大の特徴だ。ツインモーターユニットによる2つのモーターは、左右に独立した駆動力を伝えるトルクベクタリングによって、優れた回頭性とオンザレール感覚のコーナリングを実現。同時にエンジンとツインモーターユニットを含む3つのモーターは、ドライバーのアクセル操作に瞬時に反応するリニアで力強い加速を実現する。
これをベースに2018年2月に大幅に改良が加えられた。まずボディー、シャシー、制御など細部まで改めてチューニングを施し、ドライバーが「意のまま」と感じられるようなハンドリング性能と上質な乗り心地を実現。また、ボディ骨格の接着剤塗布範囲を拡大することで剛性感を高め、ダンパー特性などのシャシーセッティングも変更されているという。
エクステリアやインテリアデザインにも手が加えられた。よりロー&ワイドで力強い印象を際立たせるため、フロントグリルや前後バンパーを一新。ヘッドライト、テールランプのデザインも先進性かつ存在感のある印象になるように仕上げられた。
インテリアは、シート形状を大幅に変更し、ホールド性と快適性を両立。インストルメントパネルを中心にシルバー加飾を変更するなどでさらなる上質な室内空間を実現。そのほか、インテリジェント・パワー・ユニット(IPU)の小型化によりトランク容量を13リットル拡大したほか、改良前には装備されていなかったパワートランクも採用し、使い勝手も向上させている。
出力、トルクは変わっておらずエンジンは、314ps/6500rpm、371Nm/4500rpm。モーターは、前(H2)48ps/3,000rpm、148Nm/500-2,000rpm、後ろは37ps/4,000rpm(1基当り)73Nm/0-2,000rpm(1基当り)という組み合わせである。
◆意外と視線を集めるデザイン
「プレミアムクリスタルレッドメタリック」と呼ばれる美しい赤に塗られたレジェンドを受け取り、雑踏の中へ乗り出すと横断歩道を渡る人たちの視線を感じた。普段から様々なクルマに乗る機会が多いので、その時々で視線の傾向を探ることもあるのだが、今回は老若男女、特に傾向なく視線が集まったように感じた。
路上の駐車可能スペースにクルマを置いて眺めていると、最も視線を向けられたのは走り去るタクシーの運転手だった。次に歩行中の男性で、視線を向けた人は必ずといっていいほどフロントとリアを確認していた。また、若い女性からも視線を集めたのは意外な傾向で、赤い大型のセダンが物珍しかったのかもしれない。
そのデザインは大型で堂々としたもの。改良されたフロントフェイスは無国籍感を与えてくれるが、この辺りはアキュラブランドのフロントイメージを踏襲したものである。
テスト車のインテリアは「シーコーストアイボリー」という、かなり白に近い内装色だ。赤のボディに白の内装色というコントラストは、パーソナルユースの印象を感じさせ、ちょっとおしゃれをしてドライブに出かけたくなる雰囲気を醸し出している。この辺りがもしかしたら女性の視線を集めた要因かもしれない。
◆豪快な加速と過敏なアクセルレスポンス
実際に走り始めて最初に感じたのはステアリングフィールがかなり自然になったことだ。実は改良前のレジェンドで最も気になったのがこの部分で、妙にセンターに戻ろうとする、言い方を変えると、捩じったゴムが無理やり戻ろうという感覚が気になっていたのだ。直進安定性が高ければ、それでもまだ許せるのだが、残念ながらそれほどでもなかったので、高速でも街中でも気になって仕方がなかった。それが今回消滅し、自然なフィールになったのは嬉しい進化だ。
また、SPORT HYBRID SH-AWDも非常にスムーズに機能する。直前まで日産『スカイライン』のハイブリッドに乗っていたのだが、ハイブリッドシステムの作動の基本となるエンジンストップ、スタートなどははるかにレジェンドの方が上で、ドライバー以外はほぼその変化に気付くことはないだろう。ドライバーに限ると、50km/hくらいの一定速度で走行中、エンジンがかかるとほんの僅かに加速しようとするのでエンジンが始動したことに気付くレベルだ。このようなスムーズでハイブリッドと意識させない傾向はインサイトやアコードなども同様で、見事なものといえよう。
ただし、ボディ自体は改良が加えられたというが、それでも若干剛性が弱く段差などを超えるとブルブルとステアリング回りなどが震えることがあった。その影響もあってか、乗り心地はセダンと思って乗り込むと若干固く感じるだろう。ボディが弱いこともあり足回りをしなやかに自由に動かせないこととともに、スポーティイコール足が固いという一世代前の考えも伝わってくる。
スポーティさでいえば、アクセルレスポンスはその演出のためか非常に過敏で、一定速度で走らせるには慣れが必要だ。一方で少し踏み込むだけで2トン近いボディを軽々と引っ張るので、試しにと高速の合流で深くアクセルを踏み込んでみたところV型6気筒は快音を発しながら、豪快な加速をはじめ、あっという間に制限速度を突破しそうなほどだった。
◆的確なSPORT HYBRID SH-AWD制御
高速に乗り入れても乗り味の印象は変わらない。乗り心地は速度を問わず固い印象で、この辺りはもう少しボディ剛性を高め、サスペンションのストロークを上手に使うことで十分に解決できるだろう。直進安定性は高く、AWDのセッティングが上手く出ていることが伺われる。また高速で利用したアクティブクルーズコントロールだが、渋滞時の加減速は少しきつめの印象で、この辺りは少し時代を感じてしまった。
本格的にワインディングを走る機会がなかったので、高速道路や街中での印象にとどめるが、このサイズの割に回頭性は高く、スムーズにフロントがインに入っていくのはとても気持ちが良い。車線変更などのシーンでもはるかに軽いクルマを操っているかのような挙動でスムーズにこなしていくのはSPORT HYBRID SH-AWDのSH(スーパーハンドリング)の制御によるものだ。
手漕ぎの船の要領で、旋回時にイン側よりもアウト側のオールを強く漕ぐと曲がりやすくなることと一緒で、リアの2つのモーターにより駆動力を配分制御しているのだ。それが違和感なく上手く機能していることが伺えた。
◆インパネまわりには「一世代前」感ただよう
運転席周りはやはり時代を感じさせる。特にセンタークラスター周りの操作性はかなりの慣れが必要だが、タッチスクリーンと物理スイッチを組み合わせるという、現在への過渡期のもので、そこにダイヤルなどを取り入れることで画面を注視せずにどうしたら使いやすく出来るかの試行錯誤の結果に感じる。開発当時としては技術面も含めて最先端の粋を集めたのだろう。しかし、いまとなっては一世代前のものと言わざるを得ない。
◆優秀な燃費性能
今回の燃費は以下の通り。
・市街地:9.0km/リットル
・郊外:11.6km/リットル
・高速:14.1km/リットル
この重いボディながらこの数値は立派だ。特に高速で14km/リットルを記録するなど驚きを隠せない。市街地ではさすがに10km/リットル台には届かなかったものの、十分に納得できる数値といえるだろう。因みにハイオク指定である。
500kmほどレジェンドをテストしてみて、この頃からホンダはセダンにも注力し、走りとともに乗り心地にも注力し始めていることが伺えた。確かに足は固いし、ボディもおやっと思う時があるほど入力に対して弱いこともあるのは事実だ。
しかし、この開発の成果がいまのホンダのセダンたちに繋がっていることが十分に感じられたので、次のレジェンドへの期待は大いに高まっている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★
内田俊一(うちだしゅんいち)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。
(レスポンス 内田俊一)
◆主に走りと乗り味の質を求めた改良
まずは少しレジェンドについて復習しておこう。現行レジェンドは2014年にデビュー。3モーターハイブリッドシステム「SPORT HYBRID SH-AWD」を搭載していることが最大の特徴だ。ツインモーターユニットによる2つのモーターは、左右に独立した駆動力を伝えるトルクベクタリングによって、優れた回頭性とオンザレール感覚のコーナリングを実現。同時にエンジンとツインモーターユニットを含む3つのモーターは、ドライバーのアクセル操作に瞬時に反応するリニアで力強い加速を実現する。
これをベースに2018年2月に大幅に改良が加えられた。まずボディー、シャシー、制御など細部まで改めてチューニングを施し、ドライバーが「意のまま」と感じられるようなハンドリング性能と上質な乗り心地を実現。また、ボディ骨格の接着剤塗布範囲を拡大することで剛性感を高め、ダンパー特性などのシャシーセッティングも変更されているという。
エクステリアやインテリアデザインにも手が加えられた。よりロー&ワイドで力強い印象を際立たせるため、フロントグリルや前後バンパーを一新。ヘッドライト、テールランプのデザインも先進性かつ存在感のある印象になるように仕上げられた。
インテリアは、シート形状を大幅に変更し、ホールド性と快適性を両立。インストルメントパネルを中心にシルバー加飾を変更するなどでさらなる上質な室内空間を実現。そのほか、インテリジェント・パワー・ユニット(IPU)の小型化によりトランク容量を13リットル拡大したほか、改良前には装備されていなかったパワートランクも採用し、使い勝手も向上させている。
出力、トルクは変わっておらずエンジンは、314ps/6500rpm、371Nm/4500rpm。モーターは、前(H2)48ps/3,000rpm、148Nm/500-2,000rpm、後ろは37ps/4,000rpm(1基当り)73Nm/0-2,000rpm(1基当り)という組み合わせである。
◆意外と視線を集めるデザイン
「プレミアムクリスタルレッドメタリック」と呼ばれる美しい赤に塗られたレジェンドを受け取り、雑踏の中へ乗り出すと横断歩道を渡る人たちの視線を感じた。普段から様々なクルマに乗る機会が多いので、その時々で視線の傾向を探ることもあるのだが、今回は老若男女、特に傾向なく視線が集まったように感じた。
路上の駐車可能スペースにクルマを置いて眺めていると、最も視線を向けられたのは走り去るタクシーの運転手だった。次に歩行中の男性で、視線を向けた人は必ずといっていいほどフロントとリアを確認していた。また、若い女性からも視線を集めたのは意外な傾向で、赤い大型のセダンが物珍しかったのかもしれない。
そのデザインは大型で堂々としたもの。改良されたフロントフェイスは無国籍感を与えてくれるが、この辺りはアキュラブランドのフロントイメージを踏襲したものである。
テスト車のインテリアは「シーコーストアイボリー」という、かなり白に近い内装色だ。赤のボディに白の内装色というコントラストは、パーソナルユースの印象を感じさせ、ちょっとおしゃれをしてドライブに出かけたくなる雰囲気を醸し出している。この辺りがもしかしたら女性の視線を集めた要因かもしれない。
◆豪快な加速と過敏なアクセルレスポンス
実際に走り始めて最初に感じたのはステアリングフィールがかなり自然になったことだ。実は改良前のレジェンドで最も気になったのがこの部分で、妙にセンターに戻ろうとする、言い方を変えると、捩じったゴムが無理やり戻ろうという感覚が気になっていたのだ。直進安定性が高ければ、それでもまだ許せるのだが、残念ながらそれほどでもなかったので、高速でも街中でも気になって仕方がなかった。それが今回消滅し、自然なフィールになったのは嬉しい進化だ。
また、SPORT HYBRID SH-AWDも非常にスムーズに機能する。直前まで日産『スカイライン』のハイブリッドに乗っていたのだが、ハイブリッドシステムの作動の基本となるエンジンストップ、スタートなどははるかにレジェンドの方が上で、ドライバー以外はほぼその変化に気付くことはないだろう。ドライバーに限ると、50km/hくらいの一定速度で走行中、エンジンがかかるとほんの僅かに加速しようとするのでエンジンが始動したことに気付くレベルだ。このようなスムーズでハイブリッドと意識させない傾向はインサイトやアコードなども同様で、見事なものといえよう。
ただし、ボディ自体は改良が加えられたというが、それでも若干剛性が弱く段差などを超えるとブルブルとステアリング回りなどが震えることがあった。その影響もあってか、乗り心地はセダンと思って乗り込むと若干固く感じるだろう。ボディが弱いこともあり足回りをしなやかに自由に動かせないこととともに、スポーティイコール足が固いという一世代前の考えも伝わってくる。
スポーティさでいえば、アクセルレスポンスはその演出のためか非常に過敏で、一定速度で走らせるには慣れが必要だ。一方で少し踏み込むだけで2トン近いボディを軽々と引っ張るので、試しにと高速の合流で深くアクセルを踏み込んでみたところV型6気筒は快音を発しながら、豪快な加速をはじめ、あっという間に制限速度を突破しそうなほどだった。
◆的確なSPORT HYBRID SH-AWD制御
高速に乗り入れても乗り味の印象は変わらない。乗り心地は速度を問わず固い印象で、この辺りはもう少しボディ剛性を高め、サスペンションのストロークを上手に使うことで十分に解決できるだろう。直進安定性は高く、AWDのセッティングが上手く出ていることが伺われる。また高速で利用したアクティブクルーズコントロールだが、渋滞時の加減速は少しきつめの印象で、この辺りは少し時代を感じてしまった。
本格的にワインディングを走る機会がなかったので、高速道路や街中での印象にとどめるが、このサイズの割に回頭性は高く、スムーズにフロントがインに入っていくのはとても気持ちが良い。車線変更などのシーンでもはるかに軽いクルマを操っているかのような挙動でスムーズにこなしていくのはSPORT HYBRID SH-AWDのSH(スーパーハンドリング)の制御によるものだ。
手漕ぎの船の要領で、旋回時にイン側よりもアウト側のオールを強く漕ぐと曲がりやすくなることと一緒で、リアの2つのモーターにより駆動力を配分制御しているのだ。それが違和感なく上手く機能していることが伺えた。
◆インパネまわりには「一世代前」感ただよう
運転席周りはやはり時代を感じさせる。特にセンタークラスター周りの操作性はかなりの慣れが必要だが、タッチスクリーンと物理スイッチを組み合わせるという、現在への過渡期のもので、そこにダイヤルなどを取り入れることで画面を注視せずにどうしたら使いやすく出来るかの試行錯誤の結果に感じる。開発当時としては技術面も含めて最先端の粋を集めたのだろう。しかし、いまとなっては一世代前のものと言わざるを得ない。
◆優秀な燃費性能
今回の燃費は以下の通り。
・市街地:9.0km/リットル
・郊外:11.6km/リットル
・高速:14.1km/リットル
この重いボディながらこの数値は立派だ。特に高速で14km/リットルを記録するなど驚きを隠せない。市街地ではさすがに10km/リットル台には届かなかったものの、十分に納得できる数値といえるだろう。因みにハイオク指定である。
500kmほどレジェンドをテストしてみて、この頃からホンダはセダンにも注力し、走りとともに乗り心地にも注力し始めていることが伺えた。確かに足は固いし、ボディもおやっと思う時があるほど入力に対して弱いこともあるのは事実だ。
しかし、この開発の成果がいまのホンダのセダンたちに繋がっていることが十分に感じられたので、次のレジェンドへの期待は大いに高まっている。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
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