ベントレー コンチネンタルGT V8 新型試乗 気筒数が示すのはヒエラルキーではない…九島辰也

ベントレー コンチネンタルGT V8
◆V8国内設定までに3年かかったが…

『コンチネンタルGT』が3世代目にフルモデルチェンジしたのは2017年。これまで通りW12エンジンを搭載して登場した。そして今年、4リットルV8ツインターボの“V8”が追加されたのだが、その間ちょっと空きすぎ?と思ってしまうのは私だけではないだろう。

これまでは矢継ぎ早にエンジン違いがリリースされている。が、実際は日本上陸がこのタイミングになっただけで、V8モデルはすでに完成していたらしい。と言うのも、メインマーケットのひとつアメリカでは排ガス規制の関係から12気筒エンジンは販売できないからだ。つまり、V8モデルはこれより以前から北米用に存在していたのである。


◆W12とV8の間にヒエラルキーはない

ということを踏まえると、この2モデルの間にヒエラルキーが存在していないのがおわかりいただけると思う。4リットルよりも6リットルの方が価格的には当然安くなるが、それは単なるスペックの違いであり、それぞれが異なる個性を持ち合わせていると言うことになる。

具体的に言うと、V8エンジン車はドライバビリティが高く、ドライバーが操作している操作感が強い。特にワインディングではそれが強調され、ステアリング操作に対し車体は適度にロールし、サスペンションが路面を駆るフィールも伝わってくる。つまり、味わい深い走りといったところだ。加速感もそう。パワー曲線がリニアに立ち上がり、じわじわとそれを強めていく。

これに対し635psを誇る12気筒モデルはとにもかくにもすべての領域で力強い。アクセルを踏み込むとドーンと加速するアクセレーションやガツンと効くブレーキシステムはまさに圧巻。頼り甲斐はハンパない。まさに異次元の走り。そしてコーナリングは、ステアリング操作に対しそのままの姿勢で向きを変える。フロント外側のエアサスがグイッと荷重を押さえ込み最小限のロール角に留めるといった感じだ。


◆運転するのが楽しくなる味付けが散りばめられたV8

今回走らせた新型のV8のドライブフィールはまさに前者で、運転するのが楽しくなる味付けがいたるところに散りばめられていた。高速コーナーも、中低速のコーナリングもステアリングフィールがしっかりドライバーに伝わる。やはり12気筒に対しフロントが軽くなる分、ハンドリングは楽しい。

そんな両者だが高速道路で一定速度をキープしての走りは、どちらも操縦安定性が高く、快適さが前面に出てくる。安定度抜群のひとつの塊といった感覚だろう。キャビンはフラットに保たれ、ロードノイズや風切り音もほとんどシャットアウトされる。外界から遮断されたそこはもはや快適なリビングルームと化す!といったところ。ウルトララグジュアリーブランドの本領が発揮される。

ところで価格は、新型V8クーペが2498万1000円。12気筒クーペが2680万7000円となる。これまでよりかなり接近している。まさに“スペック違い”&“個性違い”といったところ。両者にヒエラルキーはなし。さて、あなたの好みはどちら?


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの"サーフ&ターフ"。 東京・自由が丘出身。

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