マツダ CX-8 新型試乗 300万円前半で買える「スマートエディション」の価値を考える…中村孝仁

マツダ CX-8 25S Lパッケージ
2020年度上半期は3列シート市場のSUVで販売台数No.1となったのがマツダ『CX-8』だそうである。

このクルマ、2017年に登場しそのデビューによってマツダが販売していたミニバンのラインナップが消えた。随分大胆な戦略だと思ったが、3年たった今でもある程度マツダが持っていたミニバン市場をちゃんとカバーしている。

販売当初はディーゼル車のみで、およそ1年たって2.5リットル直4ユニットを積むガソリンモデルが誕生、今に至っている。マツダSUVラインナップのフラッグシップモデルだから、ある程度の高額車になることは予想していたが、想像通り発売当初のモデルは乗り出しでほとんど500万円に届く高額車だったことを覚えている。

◆高級3列SUVに対する優位性


当時、マツダの戦略はブランド自体の嵩上げに躍起になっていた時期で、販売店の装いも場所によっては如何にも高級ブランド店然としたイメージ戦略に出ていた。従って当然ながらCX-8が仮想敵とするのは、言ってみれば高級SUVであったと思う。問題はそこにあって、果たしてライバルとなるであろう高級3列SUVと比べた時、その優位性を保てるのだろうか?という点にあった。

はっきり言ってCX-8の出来はすこぶる良い。ただし最高に良いかと言われると、なかなかイエスとは言えない。フラッグシップモデルとしてどうかと言われれば、マツダのフラッグシップSUVとしては合格点だろうが、やはり費用対効果と言おうか、基本はともかくとして載せているオプションが価格を押し上げている印象が強かった。

マツダはそれを認識しているようで、他車と比べて少し高いと感じられるモデルに「スマートエディション」なる特別仕様車を用意した。設定されたのはCX-8だけでなく『CX-5』それに『マツダ2』にもある。これ、相当なバリューフォーマネーのグレードである。本当はその仕様に乗ってみたかったのだが、残念な事に広報車の設定がなく、同じメカニズムの「25S Lパッケージ」での試乗となった。

◆「25S Lパッケージ」の実力は


相変わらず年次改良が施されているらしく、元々初めて乗った時から静粛性は高かったし、乗り心地も良好だったのだが、今回は特に静粛性の点でだいぶ頑張った印象が強かった。

非力な2.5リットルのガソリンNAユニットだが、流れに乗って走っている限りは全く非力さを感じさせないし、エンジンも静々と回るから、エンジンが唸りを上げるのは恐らく、高速料金所からの加速ダッシュとか、ワインディグ登りを攻めたい時など、限られた状況だけのように思えた。

ロングホイールベースのおかげか、乗り心地にも好印象が持てるのだが、最近の国産モデルはフラット感の演出が上手く、つい先日乗ったトヨタ『ハリアー』などはその代表例。従ってCX-8にはこのフラット感の演出という点において、少々劣る。


まだデビューしてから3年のCX-8だが、日々進化する業界にあっては3年でトップの座からは蹴落とされるのだと痛感する。おまけに電子デバイス関係はまるでパソコンかスマホのように日々進化するから、自動車メーカーも忙しいことになった。

以前Lパッケージの2列目は座席間に大きなコンソールが付いて、座席の間を通って3列目に行くことが出来なかったが、さらに上級のエクスクルーシブモードが誕生したことで、Lパッケージのそれは無くなり、使いやすさが増している。

◆バリューフォーマネーの「スマートエディション」を考える


そうは言っても今回の25S Lパッケージの価格は4WDということもあり、400万円に大台を超えて419万9800円。これが同じエンジンとメカニズムのスマートエディションだと何と333万5200円。FWDでいいよということなら、309万8700円で手に入る。

どうせ、だいぶ装備省いた結果でしょ?と思って仕様を見ると全然そんなことはない。スマートブレーキサポートやレーダークルーズコントロールに始まって、アダプティブLEDヘッドライト、レーンキープアシストなどの安全装備は標準だし、ヒーテッドドラミラーからパワーリフトゲートまで十分過ぎる装備が付いてこの値段だった。おまけに中間グレードのプロアクティブではオプション設定の360度ビューモニターやフロントパーキングセンサーなどを標準装備する。

省かれているのは、まずはパワーシートとシートヒーター。後はホイールが17インチとなることぐらいで、これはどうしても欲しいという装備は全く省かれていない。これで86万円もの価格差があると、考えてしまう。間違いなくスマートエディションがお買い得で、この装備と値段でCX-8の快適さを手に入れられるとなると、なびくユーザーはきっと多いはず。何故、マツダはもっと積極的に訴求しないのか。やはり高いモデルが売れた方が良いからなのだろうか。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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