ボルボ XC40 リチャージ 新型試乗 ほぼ完ぺきなPHEV。欠点はただひとつ…中村孝仁
◆これまでのボルボPHEVとは全くの別物
電動化を粛々と進めているボルボ、2021年までに5台のBEVが投入されるというが、すでに48VマイルドハイブリッドやPHEVもラインナップされている。
今回導入されたのは『XC40』のPHEVモデル。『XC90』、『V90』、『XC60』、『V60』、それに『S60』にはT8ツインエンジンの名を持つPHEVがラインナップされているのはご存知の通り。これまでのモデルはすべて直4エンジンと通常のオートマチック、それに電動4駆という組み合わせのメカニズムを持っていたが、今回のXC40はそれらとは全くの別物である。
まず組み合わされるエンジンは日本初上陸の1.5リットル3気筒ユニットだ。そして通常のオートマチックではなく7速のDCTとの組み合わせ。しかもこれが内製のDCTだというから驚いた。さらに今回は電動4駆とはせずにFWDのドライブ方式を持っている。そしてXC40だから使用されているプラットフォームがCMAとなることもこれまで日本国内でラインナップされているPHEVモデルとしては初めてのものとなる。
というわけでこれだけ違うと同じPHEVとはいえ、従来とは異なると明確に言える。
とりあえず今回試乗したのは2020年モデル。しかし、実際にユーザーに販売されるのは2021年モデルだ。もっともメカニズムには全く変更はなく、一部の意匠が異なるだけだ。具体的に異なる部分を列記すると、まずスカッフボードに刻まれたインスクリプションの文字と、ボディ外側Cピラーに刻まれた同じくインスクリプションの文字が、「リチャージ」に変わる。
リアゲートの「T5」及び「ツインエンジン」のレタリングも新たに「P8」というグレード名とリチャージに変わるといった変更だ。ツインエンジンの名前は使われず、新たに「リチャージ・プラグインハイブリッド」を名乗るというわけである。
◆3気筒を感じさせないエンジンと、トップクラスのDCT
それでは新しい部分を順番に見ていこう。まず日本初登場の3気筒ユニットだ。恐らくこれまでに乗った多くの3気筒ユニットの中でも、最も3気筒らしさを消したエンジンかもしれない。よほど注意深い人でないと、これが3気筒であるという確かな印象は持たれない。
というのも4気筒と比べれば3気筒はどうしても振動が出易いのだが、そのあたりを見事に消していて、3気筒らしい独特のポロポロというエンジンサウンドが聞こえてこない。高速の料金所を通過して20km/hから思い切り加速した際ようやく、「ああ3気筒の音だ」ということが確認できたが、通常走行では滅多なことでは馬脚を現さない。
モーターの力を借りる部分があるからだろうが、その力強さはかなりのものがあり、性能的にも十分満足が得られると思う。因みにICUの性能は180ps、265Nm。トランスミッションに組み込まれたモーターの性能は60kw、160Nmで、システム総出力としては262psに達するというから十分な性能といえよう。
エンジンに組み合わされる7速のDCT、内製だという点にも驚かされたが、その出来の良さにも驚かされた。俗に電子制御マニュアルとも呼ばれるこの手のツインクラッチシステムは、ドイツメーカーでかなり一般化していて、Cセグメント以下のモデルにはもっぱらこれが使われる傾向が強い。とはいえ弱みとしては渋滞内でどのギアを使うか迷うケースが散見されて、このあたりの動きのギクシャク感は否めないものだった。
因みにドイツメーカーはいずれの場合もボルグワーナーもしくはゲトラグから供給されるもので、内製のDCTは知る限りこれが初めてではないだろうか。そこで、ちょっと意地悪に10km続いた東名高速の渋滞を走ってみたのだが、まあたった1回のテストではあるものの、渋滞内でのギアセレクトの迷いは皆無。しかもそのスムーズさにおいてもトップクラスと言って過言ではない出来の良さを見せた。ボルボだけでなく今後は親会社である中国のジーリーブランドでも使われていくようだが、それにしても内製の英断は凄い。
◆PHEVとして出色、ただ一点だけいただけないのは
敢えて電動4駆ではなくFWDとした背景については聞かなかったが、冬山に出かけるような人ならともかくとして、アーバンライフでこのクルマを使う人には却って余計なシャフトのない分軽量化されて燃費も良くなるというもの。その燃費であるが今回は300km強走行してその3分の2が高速走行(と言っても10kmは渋滞)ではあるものの、車載コンピューターの計算上では14.1km/リットルと、WLTCモード燃費14.0km/リットルをクリアしたのは大したものである。
CMAの良さはガソリン車に乗った時も感心させられたが、PHEVとなって重量バランスが多少変わっているはずだが、基本的には変わりなく保たれていた。乗り心地についても自分のテストコースルートにあるカマボコ上のスピードトラップを乗り越えた時の突き上げ感などがほどよく収められているし、全体的にもそつなくまとめ上げられている。
というわけでほとんど難癖をつけるところのない出来の良さなのだが、一点だけいただけないところがある。それがブレーキだ。回生ブレーキを用いるとどうしても通常のブレーキとは異なる踏み応えになって、それが違和感として感じられるケースが多いのだが、このXC40も例外ではなかった。
バイワイヤーのブレーキを使用して回生率を高め、軽量化にも寄与しているというのだが、減速する時に一度も力を抜くことなく、ブレーキを踏み続ける限りは問題は感じられない。しかし、よりスムーズに止めようと、一度ブレーキペダルにかけた力を抜いて再度ブレーキを踏んだ時に、それまでとは異なる重さを感じるとともに効き味がまるで異なってしまう点が気になった。このあたりは要改良だと思われる。
とはいえ不満点はここだけ。出来の良さはPHEVとして出色である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
電動化を粛々と進めているボルボ、2021年までに5台のBEVが投入されるというが、すでに48VマイルドハイブリッドやPHEVもラインナップされている。
今回導入されたのは『XC40』のPHEVモデル。『XC90』、『V90』、『XC60』、『V60』、それに『S60』にはT8ツインエンジンの名を持つPHEVがラインナップされているのはご存知の通り。これまでのモデルはすべて直4エンジンと通常のオートマチック、それに電動4駆という組み合わせのメカニズムを持っていたが、今回のXC40はそれらとは全くの別物である。
まず組み合わされるエンジンは日本初上陸の1.5リットル3気筒ユニットだ。そして通常のオートマチックではなく7速のDCTとの組み合わせ。しかもこれが内製のDCTだというから驚いた。さらに今回は電動4駆とはせずにFWDのドライブ方式を持っている。そしてXC40だから使用されているプラットフォームがCMAとなることもこれまで日本国内でラインナップされているPHEVモデルとしては初めてのものとなる。
というわけでこれだけ違うと同じPHEVとはいえ、従来とは異なると明確に言える。
とりあえず今回試乗したのは2020年モデル。しかし、実際にユーザーに販売されるのは2021年モデルだ。もっともメカニズムには全く変更はなく、一部の意匠が異なるだけだ。具体的に異なる部分を列記すると、まずスカッフボードに刻まれたインスクリプションの文字と、ボディ外側Cピラーに刻まれた同じくインスクリプションの文字が、「リチャージ」に変わる。
リアゲートの「T5」及び「ツインエンジン」のレタリングも新たに「P8」というグレード名とリチャージに変わるといった変更だ。ツインエンジンの名前は使われず、新たに「リチャージ・プラグインハイブリッド」を名乗るというわけである。
◆3気筒を感じさせないエンジンと、トップクラスのDCT
それでは新しい部分を順番に見ていこう。まず日本初登場の3気筒ユニットだ。恐らくこれまでに乗った多くの3気筒ユニットの中でも、最も3気筒らしさを消したエンジンかもしれない。よほど注意深い人でないと、これが3気筒であるという確かな印象は持たれない。
というのも4気筒と比べれば3気筒はどうしても振動が出易いのだが、そのあたりを見事に消していて、3気筒らしい独特のポロポロというエンジンサウンドが聞こえてこない。高速の料金所を通過して20km/hから思い切り加速した際ようやく、「ああ3気筒の音だ」ということが確認できたが、通常走行では滅多なことでは馬脚を現さない。
モーターの力を借りる部分があるからだろうが、その力強さはかなりのものがあり、性能的にも十分満足が得られると思う。因みにICUの性能は180ps、265Nm。トランスミッションに組み込まれたモーターの性能は60kw、160Nmで、システム総出力としては262psに達するというから十分な性能といえよう。
エンジンに組み合わされる7速のDCT、内製だという点にも驚かされたが、その出来の良さにも驚かされた。俗に電子制御マニュアルとも呼ばれるこの手のツインクラッチシステムは、ドイツメーカーでかなり一般化していて、Cセグメント以下のモデルにはもっぱらこれが使われる傾向が強い。とはいえ弱みとしては渋滞内でどのギアを使うか迷うケースが散見されて、このあたりの動きのギクシャク感は否めないものだった。
因みにドイツメーカーはいずれの場合もボルグワーナーもしくはゲトラグから供給されるもので、内製のDCTは知る限りこれが初めてではないだろうか。そこで、ちょっと意地悪に10km続いた東名高速の渋滞を走ってみたのだが、まあたった1回のテストではあるものの、渋滞内でのギアセレクトの迷いは皆無。しかもそのスムーズさにおいてもトップクラスと言って過言ではない出来の良さを見せた。ボルボだけでなく今後は親会社である中国のジーリーブランドでも使われていくようだが、それにしても内製の英断は凄い。
◆PHEVとして出色、ただ一点だけいただけないのは
敢えて電動4駆ではなくFWDとした背景については聞かなかったが、冬山に出かけるような人ならともかくとして、アーバンライフでこのクルマを使う人には却って余計なシャフトのない分軽量化されて燃費も良くなるというもの。その燃費であるが今回は300km強走行してその3分の2が高速走行(と言っても10kmは渋滞)ではあるものの、車載コンピューターの計算上では14.1km/リットルと、WLTCモード燃費14.0km/リットルをクリアしたのは大したものである。
CMAの良さはガソリン車に乗った時も感心させられたが、PHEVとなって重量バランスが多少変わっているはずだが、基本的には変わりなく保たれていた。乗り心地についても自分のテストコースルートにあるカマボコ上のスピードトラップを乗り越えた時の突き上げ感などがほどよく収められているし、全体的にもそつなくまとめ上げられている。
というわけでほとんど難癖をつけるところのない出来の良さなのだが、一点だけいただけないところがある。それがブレーキだ。回生ブレーキを用いるとどうしても通常のブレーキとは異なる踏み応えになって、それが違和感として感じられるケースが多いのだが、このXC40も例外ではなかった。
バイワイヤーのブレーキを使用して回生率を高め、軽量化にも寄与しているというのだが、減速する時に一度も力を抜くことなく、ブレーキを踏み続ける限りは問題は感じられない。しかし、よりスムーズに止めようと、一度ブレーキペダルにかけた力を抜いて再度ブレーキを踏んだ時に、それまでとは異なる重さを感じるとともに効き味がまるで異なってしまう点が気になった。このあたりは要改良だと思われる。
とはいえ不満点はここだけ。出来の良さはPHEVとして出色である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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