シトロエン C3エアクロスSUV 新型試乗 レジャーに使い倒す人にはたまらない一台になる
シトロエンのサブコンパクトクロスオーバーSUV『C3エアクロスSUV』を2時間弱テストドライブする機会があったので、インプレッションをお届けする。
◆「PF1」プラットフォームの有終の美を飾るモデル
C3エアクロスSUVは現在日本で販売されている第1世代プジョー『2008』などと同様、プジョー・シトロエングループが長年にわたって改良を続けてきた小型車用プラットフォーム「PF1」を使って作られている。
その後、2018年に欧州デビューした同グループの『DS 3 クロスバック』を皮切りに、昨年欧州で発売された第2世代プジョー『2008』、つい最近日本でも発売された新型プジョー『208』と、中国の東風自動車と共同開発した軽量プラットフォーム「CMP」へと切り替わっており、C3エアクロスはPF1の有終の美を飾るモデルと言える。
スリーサイズは全長4150×全幅1765×全高1640mm、ホイールベースは2605mm。全長、全幅、ホイールベースは最大のライバル、第1世代ルノー『キャプチャー』と近似している一方、ルーフレールやシャークフィンアンテナなどの付加物を除いた全高の比較ではC3エアクロスSUVのほうが約4cm高く、よりスペース重視であることがわかる。
テストドライブ車両は上級グレードの「SHINE(シャイン)」にグラストップ、大径ホイール&オールシーズンタイヤ、路面状況に応じて駆動力制御を変えられるグリップコントロールなどからなる「SHINEパッケージ」を装備したもの。ドライブしたのは富士山の山梨側山麓。道路比率は舗装路の市街路および山岳路6、グラベル&ダート4。1名乗車、エアコンON。
◆いかにも今どきのヨーロッパのクロスオーバーSUV
では論評に入ろう。C3エアクロスSUVは4150mmという短いボディにヴァカンスエクスプレスとして相当に使えるユーティリティを詰め込みながら、ポップなSUVルックでマルチヴァンらしさを感じさせない、いかにも今どきのヨーロッパのクロスオーバーSUVというイメージたっぷりのクルマだった。
「すごい」と手放しで称賛できるのは荷室の広さと形状。VDA方式による荷室容量は410リットルと、全長を考えると驚異的な水準であるうえ、形状がスクエアで、いかにもトランクをきっちり整理して多数積むのに便利そうだった。普段はハードボードで荷室のフロア高をバンパーレベルに合わせて積み下ろし性を重視、空港送迎や大量の道具を積んでのファミリーキャンプ時にはそれを取り去って容量をいっぱいに使うという感じであろう。
試乗した上級グレードのシャインはリアシートに前後スライド機構が仕込まれており、前方にスライドさせると実に520リットルにまで拡張できる。それを試してみたところ、適正なドライビングポジションを取るとニールームは子供なら座れる程度にしか残らないが、危険のない運転が可能な範囲でドライビングポジションを最も前寄りに取れば、大人も何とか座れるだけのスペースは確保できた。行動半径150km程度のドライブであれば、そういう使い方も楽しめそうだった。
リアシートが正位置の場合の居住性だが、大人4人で長距離ドライブをこなす下限ラインは十分クリアしているとは思うが、広々としたゆとりあるスペースというわけではない。それでもあまり狭苦しさを感じないのは、ウィンドウ面積が広く、採光性と視界が秀逸なことによるものだろう。試乗車には開口面積の大きなスライディンググラストップが装備されていたので、開放感はひとしおだった。このグラストップ、上位グレードにのみオプション設定なのが少し惜しまれるところだった。
◆無駄だらけのプラットフォームも堅牢さは高い
走ったのがほとんどワインディングとオフロードだけだったので、走行フィールについては限定的にしかお伝えできないが、普通に良くまとまっているように感じられた。ハイルーフゆえ重心が高いのでハッチバックの旧型208のような機敏さはないものの、四輪のグリップの安定度は高い。オフロードは比較的整備状況の良いグラベル路だったが、ガタつきは少なく、極端に深いアンジュレーションがなければ良く走る。
序段で触れたPF1プラットフォームは重く、今となっては無駄だらけだが、それだけに堅牢さはBセグメントとしては素晴らしく高い。SUV仕立てというキャラクターのC3エアクロスSUVではその特質が良いほうに出た感があった。
乗り心地は基本的に良好だが、アンジュレーションでは少しひょこつきも出る。本国でのスペックシートによれば総重量1.8トン超まで積載を許容するらしいので、多人数乗車のほうが落ち着つくであろう。また、プジョーおよびシトロエンはド新品のときにはサスペンションの動きが渋い傾向があるので、走り込めば空載でももっと動いてくる可能性もある。
パワートレインは3気筒1.2リットルターボ110ps+6速AT。本国ではATは130ps版、ターボディーゼル120ps版との組み合わせになるのだが、速度レンジの低い日本では110psで十分という判断だったのであろう。実際、必要十分な動力性能は確保されており、1名乗車であれば富士山の裾野の急勾配でも痛痒感なしにガンガンに登れた。パドルシフトは装備されていないが、シフトレバーにマニュアルモードがあり、積極的なシフト操作も可能だった。
◆結構いいニッチマーケットを突けている
とまあ、かくもカジュアルなキャラクターのC3エアクロスSUVであるが、日本でこのクルマに合うのは言うまでもなくクルマをレジャーや旅に使い倒す派のカスタマーであろう。これ1台で何でもできるというだけのユーティリティを持つのに加え、内外装にはユーザーのアクティブなライフスタイルを志向していることを表現したいという思いを満たすに足るファッション性がある。
競合モデルとしては小型クロスオーバーSUV全般、なかでもルノー・キャプチャー、プジョー2008などのフランス勢は比較対象になりやすそうだ。が、C3エアクロスSUVはマルチヴァン的なパッケージングであるため、一般的なSUVと商品性が結構異なる。
そう考えると似たようなモデルが同クラスにありそうでなかなかなく、結構いいニッチマーケットを突けているのではないかと思った。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★
(レスポンス 井元康一郎)
◆「PF1」プラットフォームの有終の美を飾るモデル
C3エアクロスSUVは現在日本で販売されている第1世代プジョー『2008』などと同様、プジョー・シトロエングループが長年にわたって改良を続けてきた小型車用プラットフォーム「PF1」を使って作られている。
その後、2018年に欧州デビューした同グループの『DS 3 クロスバック』を皮切りに、昨年欧州で発売された第2世代プジョー『2008』、つい最近日本でも発売された新型プジョー『208』と、中国の東風自動車と共同開発した軽量プラットフォーム「CMP」へと切り替わっており、C3エアクロスはPF1の有終の美を飾るモデルと言える。
スリーサイズは全長4150×全幅1765×全高1640mm、ホイールベースは2605mm。全長、全幅、ホイールベースは最大のライバル、第1世代ルノー『キャプチャー』と近似している一方、ルーフレールやシャークフィンアンテナなどの付加物を除いた全高の比較ではC3エアクロスSUVのほうが約4cm高く、よりスペース重視であることがわかる。
テストドライブ車両は上級グレードの「SHINE(シャイン)」にグラストップ、大径ホイール&オールシーズンタイヤ、路面状況に応じて駆動力制御を変えられるグリップコントロールなどからなる「SHINEパッケージ」を装備したもの。ドライブしたのは富士山の山梨側山麓。道路比率は舗装路の市街路および山岳路6、グラベル&ダート4。1名乗車、エアコンON。
◆いかにも今どきのヨーロッパのクロスオーバーSUV
では論評に入ろう。C3エアクロスSUVは4150mmという短いボディにヴァカンスエクスプレスとして相当に使えるユーティリティを詰め込みながら、ポップなSUVルックでマルチヴァンらしさを感じさせない、いかにも今どきのヨーロッパのクロスオーバーSUVというイメージたっぷりのクルマだった。
「すごい」と手放しで称賛できるのは荷室の広さと形状。VDA方式による荷室容量は410リットルと、全長を考えると驚異的な水準であるうえ、形状がスクエアで、いかにもトランクをきっちり整理して多数積むのに便利そうだった。普段はハードボードで荷室のフロア高をバンパーレベルに合わせて積み下ろし性を重視、空港送迎や大量の道具を積んでのファミリーキャンプ時にはそれを取り去って容量をいっぱいに使うという感じであろう。
試乗した上級グレードのシャインはリアシートに前後スライド機構が仕込まれており、前方にスライドさせると実に520リットルにまで拡張できる。それを試してみたところ、適正なドライビングポジションを取るとニールームは子供なら座れる程度にしか残らないが、危険のない運転が可能な範囲でドライビングポジションを最も前寄りに取れば、大人も何とか座れるだけのスペースは確保できた。行動半径150km程度のドライブであれば、そういう使い方も楽しめそうだった。
リアシートが正位置の場合の居住性だが、大人4人で長距離ドライブをこなす下限ラインは十分クリアしているとは思うが、広々としたゆとりあるスペースというわけではない。それでもあまり狭苦しさを感じないのは、ウィンドウ面積が広く、採光性と視界が秀逸なことによるものだろう。試乗車には開口面積の大きなスライディンググラストップが装備されていたので、開放感はひとしおだった。このグラストップ、上位グレードにのみオプション設定なのが少し惜しまれるところだった。
◆無駄だらけのプラットフォームも堅牢さは高い
走ったのがほとんどワインディングとオフロードだけだったので、走行フィールについては限定的にしかお伝えできないが、普通に良くまとまっているように感じられた。ハイルーフゆえ重心が高いのでハッチバックの旧型208のような機敏さはないものの、四輪のグリップの安定度は高い。オフロードは比較的整備状況の良いグラベル路だったが、ガタつきは少なく、極端に深いアンジュレーションがなければ良く走る。
序段で触れたPF1プラットフォームは重く、今となっては無駄だらけだが、それだけに堅牢さはBセグメントとしては素晴らしく高い。SUV仕立てというキャラクターのC3エアクロスSUVではその特質が良いほうに出た感があった。
乗り心地は基本的に良好だが、アンジュレーションでは少しひょこつきも出る。本国でのスペックシートによれば総重量1.8トン超まで積載を許容するらしいので、多人数乗車のほうが落ち着つくであろう。また、プジョーおよびシトロエンはド新品のときにはサスペンションの動きが渋い傾向があるので、走り込めば空載でももっと動いてくる可能性もある。
パワートレインは3気筒1.2リットルターボ110ps+6速AT。本国ではATは130ps版、ターボディーゼル120ps版との組み合わせになるのだが、速度レンジの低い日本では110psで十分という判断だったのであろう。実際、必要十分な動力性能は確保されており、1名乗車であれば富士山の裾野の急勾配でも痛痒感なしにガンガンに登れた。パドルシフトは装備されていないが、シフトレバーにマニュアルモードがあり、積極的なシフト操作も可能だった。
◆結構いいニッチマーケットを突けている
とまあ、かくもカジュアルなキャラクターのC3エアクロスSUVであるが、日本でこのクルマに合うのは言うまでもなくクルマをレジャーや旅に使い倒す派のカスタマーであろう。これ1台で何でもできるというだけのユーティリティを持つのに加え、内外装にはユーザーのアクティブなライフスタイルを志向していることを表現したいという思いを満たすに足るファッション性がある。
競合モデルとしては小型クロスオーバーSUV全般、なかでもルノー・キャプチャー、プジョー2008などのフランス勢は比較対象になりやすそうだ。が、C3エアクロスSUVはマルチヴァン的なパッケージングであるため、一般的なSUVと商品性が結構異なる。
そう考えると似たようなモデルが同クラスにありそうでなかなかなく、結構いいニッチマーケットを突けているのではないかと思った。
■5つ星評価
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フットワーク:★★★
おすすめ度:★★★★
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