メルセデスベンツ GLA 新型試乗 Aクラスと決別し、手にしたものとは…中村孝仁

メルセデスベンツ GLA 新型(GLA200d 4MATIC)
◆『Aクラス』との決別

メルセデスの『GLAクラス』が新しくなった。一言で言って、新しいGLAのコンセプトは『Aクラス』との決別だったように思える。先代GLAは一目見てAクラスと外観に大きな違いを見出せなかった。少し車高をあげて、少しオフロード車っぽい演出をしたAクラスのように見えていたからだ。

そこへ行くと新しいGLAは、なりは小さくても立派なSUVに見えてそのスタイルからAクラスを連想することは難しい。むしろ、ひとクラス上の『GLC』との近似性を感じるモデルとなった。SUV全盛の世の中にあって、Aクラス以上のワイドバリエーションで登場するものと勝手に思い込んでいたのだが、驚いたことに新しいGLAはモノグレードである。

即ち、今回試乗した4MATIC(4WD)と2リットルターボディーゼルの組み合わせだけなのだ。ガソリンエンジンはチョイス出来ないしFWDもない。何故モノグレードにしてしまったのかは定かではないが、少なくとも先代のバリエーションからはチョイスの幅が無くなったことは間違いない。

サイズ的には若干大型化してはいるが、ほぼほぼ先代と大差ない。ただし、全高だけは大きく変わり100mmほど背が高くなった。おかげでインテリアの解放感は格段に上がり、どちらかと言えばハッチバック車に乗っている感覚だった先代から、ちゃんとSUVに乗っている感覚に変わっている。それだけで大きな変化である。


◆扱い易さ重視のパワートレイン

搭載エンジンは2リットルターボディーゼルである。車名は「GLA200d」となっているが、他の国で200dと言えば通常は1.6リットルディーゼルのはずで、日本仕様の2リットルはあちらでは220dとなるのが一般的。エンジンコードはOM654qと呼ばれるもので、2リットルなら200ps近いパワーがあっておかしくないのだが、カタログを見る限り150ps、320Nmとかなり控え目である。先代のGLA220と比較してもパワーでは34psほど削られている。一方で最大トルクの方は20Nmほど引き上げられているから、扱い易さ重視のチューニングともいえる。

組み合わされるトランスミッションは従来の7速DCTから8速のものへとこちらは格上げされた。実は試乗に出て簡単なスペック表を眺めていたら、電子制御8ATと書かれていて、何だDCTからステップATに変わったんだ…と思って乗っていた。それほど繋がり感がAT風で自然だったからである。ところがいざ調べてみると8速DCTであった。

ここまで来るとDCTもずいぶんと進化してATと選ぶところがないなぁなどと思っていたのだが、これがガソリンエンジンとの組み合わせになると(『GLB』だが)明確にDCTらしさが顔をのぞかせた。つまり、ディーゼルの低速域での強大なトルクのおかげで変速時の明確な変速感が完全に消され、まるでトルコン車に乗っているような感覚にさせてくれたというわけである。一方で削られたパワーのせいか、以前に感じられたディーゼルらしい独特な盛り上がるトルク感はあまり感じられない。


◆明確な個性を手に入れた新型GLA

4MATICのみの設定で、試乗車にはオプションのアドバンスドパッケージが装備され、ヘッドアップディスプレイがある。そこには4輪へのトルク配分を現す表示があるのだが、発進時のけり出しには結構リアへトルクが配分されることを示し、てっきり大半をFWD走行するかと思いきや、案外リアが駆動していることを知らされる。と言ってそれで4WDが体感できるのかというと残念ながらそれは無い。

今回のモデルチェンジでGLAは明確な個性を手に入れた印象が強い。だから、積極的にGLAをチョイスするユーザーがいると思ったのだが、そこにモノグレード展開である。それほど市場が小さいとメルセデスは評価しているのだろうか。今回のモデルは先代よりも使い勝手も広がって、リアシートは前後にスライドしてくれるし、ラゲッジも2重底でかなり深いから背の高い荷物も受け付けると思う。

因みに車両本体価格は502万円(税込)。試乗車はこれに83万1000円分のオプションと、絶対必要だと思われる保証プラス、メンテナンスプラスを入れて合計は610万9500円。乗り出しはさらに高くなるから結構なお値段だ。もっともオプション価格のうち60万円ほどは無くても良いが、ナビゲーションパッケージの18万9000円だけは付けておきたいところである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習や、シニア向けドライビングフィットネスを行う会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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