アウディ Q3スポーツバック 新型試乗 やっぱりアウディはカッコいい…中村孝仁

アウディ Q3スポーツバック 35TDIクワトロ Sライン
◆クーペSUVの中で最も洗練されたデザインを見せつける

ドイツの各ブランドはこぞってSUVのクーペスタイルを試乗に送り出す中で、VWグループは(と言ってもアウディとVWに限定)、その市場にモデルを送り出していなかった。そんな中でようやくアウディが『Q3』に「スポーツバック」を名乗るクーペスタイルのSUVを出した。もっとも本国では1年も前から発売されていたのだが…。

それはともかくとして練りに練った結果なのだろうか。Q3スポーツバックのスタイリングはそのバランスといい、醸し出す雰囲気といい、最も洗練されたデザインを見せつけるモデルである(個人的には)。とにかく美しい。『Q2』で見せた視覚的に煩雑に映るアクセントラインはスッキリと単純なものに改められているし、とかく猫背になりがちで山のように大きく見えてしまうリアのクーペ風スタイリングも、とてもうまくまとめられている。

面白いのは、同じセグメントのライバルBMW『X2』が上級の『X4』や『X6』と比べてクーペを意識させずにクーペを名乗るのと対照的に、アウディがよりクーペを意識させるスタイリングで登場している点だ。このあたりはメルセデスとBMWとはこのセグメントにおいてデザインの顕著な違いを見せている。

2代目となってQ3はMQBプラットフォームを用いて作られた。先代のPQ35プラットフォームよりもやはりがっしりとした構造になっている感じがし、試乗している間中ウェット路面であるにもかかわらず高い安心感を与えてくれたのは、クワトロの効果とこの高い剛性感のおかげではないかと感じた。


◆やや古さを感じさせるディーゼルエンジン

ご存知の通りVWのディーゼル戦略はディーゼルゲート事件によって大きく後退した。元々尿素SCRを搭載したEA288ディーゼルユニットをとっくの昔に上梓するはずだったのだが、ほぼ2年遅れた。とはいえ基本的にEA288そのものが誕生したのは2012年と古く、排ガスを浄化したものの、騒音対策やパフォーマンスには手が回っていない印象が強く、この2~3年で誕生したライバルの新ディーゼルに対しては、やはり少々弱みを見せていることは否定できない。

Q3スポーツバックに搭載されているのもこのEA288。最も気になるのはその騒音と微振動の多さだ。もちろん気になるレベルとは言わないが、ハイエンドのモデルだけにそのあたりには気を使って欲しいところである。

パフォーマンスという点に関しても150ps、340Nmという数値は、最新のメルセデス『GLA』に搭載された2リットルディーゼルユニットと同じで、トルクはメルセデスが20Nm低い320Nmだし、BMWも150ps、350Nmと判で押したようにほぼ横並び。しかし、プジョーは177ps、400Nm、ジャガーに至っては180ps、430Nmで突出している。まあ、プジョーのディーゼルはEA288よりさらに古いから、音の点ではVWとタメをはるが、パフォーマンスという点ではやはり優れものだ。

メルセデスをはじめドイツ勢が何故パフォーマンスを落としているのかは少々腑に落ちないところがあるのだが、やはりパフォーマンスの点で他の国のディーゼルと大きな違いがあることは事実。クリーンディーゼルが日本国内でも流行り始めた当初の、中速からドンと踏んで行った時の豪快なトルク感は希薄である。

トランスミッションは7速Sトロニック。要するにDCTである。今回は箱根山中の試乗ということもあって、いわゆる渋滞モードを試すことはできなかった。DCT系トランスミッションの泣き所は渋滞でのギクシャク感。最近は皆そこに注力して改良を重ねているように感じるが、果たしでそのあたりがどうかは今回の試乗では試せていない。このクルマ、一言で言ってスタイルに大きな魅力を感じるモデルである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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