ジープ レネゲード 新型試乗 兄弟車フィアット500Xとは、似て非なるキャラ…中村孝仁
◆フィアット『500X』と兄弟車のレネゲード
イタリアのメルフィというところで生産されるフィアット『500X』とジープ『レネゲード』。プラットフォームを共有する言わば兄弟車である。
実はレネゲードのFWDモデルに試乗するのはこのクルマが日本に導入されて以来のこと。直前にフィアット500Xに試乗したのでちょうどよい機会と、乗り比べてみることにした。どちらも昨年エンジンを一新した。従来のマルチエアと呼ばれたユニークな動弁機構を持つ1.4リットルから、モジュラー型シリンダーを装備した1.3リットルターボに変更されたのである。
プラットフォームの方はフィアットがGMと提携していた時代に作られたもので、現在はFCAスモールワイド4×4という呼び名が付いているようである。そしてエンジンは前述した通りであるが、今ではこれをベースとしたPHEVも誕生した次世代型エンジンの代表にのし上がっている。
ただ、プラットフォームが誕生したのは2005年だからさすがにこちらはそれなりの経年劣化というか、古さを感じさせてくれる。それにしても同じプラットフォームを用いていながらこの2台は見事なほど乗り味に違いを見せる。
◆乗り心地はズバリ、ジープに軍配
ひとつはフィアットが18インチタイヤを装着していたのに対し、ジープの方は17インチ。それもフィアットがグッドイヤーイーグルF1だったのに対し、こちらはブリジストン・トランザ。どちらもハイパフォーマンスカー向けタイヤという点では一致しているものの、乗り心地は随分と異なる。一言で言って、ズバリ乗り心地に関しては完全にジープに軍配が上がった。
コックピットからの景色はジープがずいぶんと頑丈な囲いの中に入った印象を与える。Aピラーの太さは相当なもので、後ろを振り返ってもBピラー、Cピラーとどれも皆かなりゴツイ。ただあくまでも印象だけで、コックピットでは底抜けとは言わないまでも、相当に明るい雰囲気だったフィアットとは剛性感という点で大きな違いは見出せない。
レネゲードが日本に導入されたのは今から5年前のことだから、それほど古いわけではないのだが、ここ数年の急激な電子デバイスの進化はADASを含むこの種のデバイスに対する遅れを少し感じさせる。そのひとつはACC。ステアリングスポーク左側に装備されるクルーズコントロールを操作したところ(ACCのつもりで)、中央のメインスイッチ、setの順番で押すと、普通のクルーズコントロールしか機能しない。ACC用は下側スイッチ左端の車両マークが付いたスイッチを押した後setでようやく起動する。
もっとも、カバーするのは30km/h以上で、それを下回るとキャンセルされてしまう。パーキングブレーキはEPBだから、本来は完全停止まで行けるはずなのだが、このあたりはイタフラ車が苦手としているところで、ジープといえどもイタリア生まれはやはりまだまだのようだ。
◆似て非なるキャラクターを持っていた
最小回転半径は5.5mだそうだが、我が家の駐車場に入れる時は同じようなサイズの他銘柄と比べるとだいぶ取り回しが良くない。乗り味は初期に乗ったモデルと比べると、だいぶ変わっている印象で、以前は突き上げ感を感じさせた乗り心地はだいぶマイルドになって、スムーズな乗り心地である(以前と比べればの話)。
新しいエンジンは排気量こそ小さくなったが、性能的にはパワー・トルク共に向上していて、パフォーマンス的な非力さは一切感じない。それにエンジ回転は実に滑らかで好感が持てるフィーリングを持っている。組み合わされる6速DCTは以前と変わらないものだが、これもライバルメーカーのトランスミッションと比較して、特に発進時のクラッチ断続に粗さが目立ち、あまり褒められたものではなかった。
そこかしこにジープの何かしらを象ったアクセントがちりばめられているのは遊び心としては非常に面白く、オーナーにとっては一つの自慢にもなるユニークなものといえよう。いずれにしてもレネゲードにフィアット500Xのような2面性はなく、かなり実直なクルマという印象を受けた。同じプラットフォームを持ちながらこの2台、似て非なるキャラクターを持っていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
イタリアのメルフィというところで生産されるフィアット『500X』とジープ『レネゲード』。プラットフォームを共有する言わば兄弟車である。
実はレネゲードのFWDモデルに試乗するのはこのクルマが日本に導入されて以来のこと。直前にフィアット500Xに試乗したのでちょうどよい機会と、乗り比べてみることにした。どちらも昨年エンジンを一新した。従来のマルチエアと呼ばれたユニークな動弁機構を持つ1.4リットルから、モジュラー型シリンダーを装備した1.3リットルターボに変更されたのである。
プラットフォームの方はフィアットがGMと提携していた時代に作られたもので、現在はFCAスモールワイド4×4という呼び名が付いているようである。そしてエンジンは前述した通りであるが、今ではこれをベースとしたPHEVも誕生した次世代型エンジンの代表にのし上がっている。
ただ、プラットフォームが誕生したのは2005年だからさすがにこちらはそれなりの経年劣化というか、古さを感じさせてくれる。それにしても同じプラットフォームを用いていながらこの2台は見事なほど乗り味に違いを見せる。
◆乗り心地はズバリ、ジープに軍配
ひとつはフィアットが18インチタイヤを装着していたのに対し、ジープの方は17インチ。それもフィアットがグッドイヤーイーグルF1だったのに対し、こちらはブリジストン・トランザ。どちらもハイパフォーマンスカー向けタイヤという点では一致しているものの、乗り心地は随分と異なる。一言で言って、ズバリ乗り心地に関しては完全にジープに軍配が上がった。
コックピットからの景色はジープがずいぶんと頑丈な囲いの中に入った印象を与える。Aピラーの太さは相当なもので、後ろを振り返ってもBピラー、Cピラーとどれも皆かなりゴツイ。ただあくまでも印象だけで、コックピットでは底抜けとは言わないまでも、相当に明るい雰囲気だったフィアットとは剛性感という点で大きな違いは見出せない。
レネゲードが日本に導入されたのは今から5年前のことだから、それほど古いわけではないのだが、ここ数年の急激な電子デバイスの進化はADASを含むこの種のデバイスに対する遅れを少し感じさせる。そのひとつはACC。ステアリングスポーク左側に装備されるクルーズコントロールを操作したところ(ACCのつもりで)、中央のメインスイッチ、setの順番で押すと、普通のクルーズコントロールしか機能しない。ACC用は下側スイッチ左端の車両マークが付いたスイッチを押した後setでようやく起動する。
もっとも、カバーするのは30km/h以上で、それを下回るとキャンセルされてしまう。パーキングブレーキはEPBだから、本来は完全停止まで行けるはずなのだが、このあたりはイタフラ車が苦手としているところで、ジープといえどもイタリア生まれはやはりまだまだのようだ。
◆似て非なるキャラクターを持っていた
最小回転半径は5.5mだそうだが、我が家の駐車場に入れる時は同じようなサイズの他銘柄と比べるとだいぶ取り回しが良くない。乗り味は初期に乗ったモデルと比べると、だいぶ変わっている印象で、以前は突き上げ感を感じさせた乗り心地はだいぶマイルドになって、スムーズな乗り心地である(以前と比べればの話)。
新しいエンジンは排気量こそ小さくなったが、性能的にはパワー・トルク共に向上していて、パフォーマンス的な非力さは一切感じない。それにエンジ回転は実に滑らかで好感が持てるフィーリングを持っている。組み合わされる6速DCTは以前と変わらないものだが、これもライバルメーカーのトランスミッションと比較して、特に発進時のクラッチ断続に粗さが目立ち、あまり褒められたものではなかった。
そこかしこにジープの何かしらを象ったアクセントがちりばめられているのは遊び心としては非常に面白く、オーナーにとっては一つの自慢にもなるユニークなものといえよう。いずれにしてもレネゲードにフィアット500Xのような2面性はなく、かなり実直なクルマという印象を受けた。同じプラットフォームを持ちながらこの2台、似て非なるキャラクターを持っていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
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フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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