アウディ A4 新型試乗 ようやくアウディらしさを取り戻した…中村孝仁
親会社のVWに端を発したディーゼルゲートのおかげで、このグループはここ数年、長いトンネルの中にいた。制裁を受け罰金を払った結果、それはリソースの確保という問題にぶち当たったように感じられる。
ここ数年、魅力的なモデルが出にくかった背景にはそんなことがあるのではないか?と勘繰りたくなるが、今年後半に入ってアウディは極めて積極的にニューモデルを日本市場に投入してきた。と言ってもその多くは本国で1年ほど前にデビューしたモデルばかりだったから、やはりスケジュールに遅れが生じていることは否定できないように思う。
まあそんなことはともかく、その遅れてやってきたモデル群はどれもこれもアウディが本来持っている「Vorsprung durch Technik」、技術による先進を徐々に取り戻してきたようにも感じるのである。
『A4』というモデルはそんな古き良きアウディを全身にまとったクルマだった。そのA4、アウディは本国からやはりほぼ1年遅れでアップデートモデルを日本市場でリリースした。
◆ISGをつけたMHEVでしょ?というのは簡単だけど
今回試乗したのは「アバント」である。つまりはステーションワゴン。そして「35 TSFI」というのは近年のアウディ式ネーミング方式による出力表示を表記したもので、150psのモデルにはこの35の表記が与えられている。そして後ろのTSFIはガソリンエンジンを意味していて、クワトロが付かないから要はFWDであることを現すといった具合である。
では今回どのあたりに「Vorsprung durch Technik」を感じたか、というあたりから話をしよう。
新エンジンは2リットルのキャパシティーから150psの最高出力と270Nmの最大トルクを絞り出す。この数値、1.5リットルのキャパシティーだったQ3の150ps、250Nmに限りなく近く、恐らく多くの人は性能的な不満を漏らすかもしれない。しかしこのエンジン、実にきめ細かいことをやっている。
今回はBASと名付けられたいわゆるISGと12Vのバッテリーシステムを組み合わせたマイルドハイブリッドとしており、さらにコースティングの非常にきめ細かな制御をすることで燃費のみならずCO2排出削減に取り組んでいるのであろう。
試乗してみるとやはり高回転域での1.5リットルエンジンのようなシャープな回転フィールこそないものの、『Q3』とさほど変わらない車重ながら僅か1350rpmから絞り出される最大トルクのおかげもあってか乗り易いし、発進加速にしてもBASのおかげでこちらもトロさは一切感じない。なによりもそのパワーの繋がり感がとてもスムーズで気持ち良い走りを実現している。
発進をISG(BAS)が行うことで、DCTにありがちな低速域でのギクシャク感が全く出ないのは大きな進化で、ここでもパワーの繋がり感と走りのスムーズさが明らかに向上したと思わせた。
まあ、ISGをつけたMHEVでしょ?というのは簡単。しかし、アクセルの踏み具合や離し具合を感知して、ある時はアイドリング状態に、またある時はエンジンストップを走行中にやる制御は実にきめ細かく、それでいながら走りに違和感をもたらさないというのはやはり「Vorsprung durch Technik」なのである。このあたりはアウディの面目躍如だと思われた。
◆アウディはA4に始まりA4にとどめを刺す
デザインはドイツ車らしく、私的な表現で申し訳ないがいわゆる「変えずに変える」を実践している。即ち日頃あまりアウディに注目していない人にとってはどこが変わったのかわからない程度に変化ながら、良く知っている人にはこことここが変わったとすぐにわかるレベルの変化をつける。このあたりはドイツ御三家が得意とするフェイスリフトである。
ワゴンはSUVに駆逐されてそのニーズがだいぶ減っているように思えるのだが、やはり乗ってみると明らかに重心が低い乗用車ライクというか高い運動性能を維持したクルマという感じを受けて好ましい。そもそも使い勝手から言えば、サイズさえ同じならSUVと変わらないのだから。
まあ目線が高く視野が広いSUVが良いと言われてしまうとそれまでだが、アウディはやはりA4に始まりA4にとどめを刺すような気もする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
ここ数年、魅力的なモデルが出にくかった背景にはそんなことがあるのではないか?と勘繰りたくなるが、今年後半に入ってアウディは極めて積極的にニューモデルを日本市場に投入してきた。と言ってもその多くは本国で1年ほど前にデビューしたモデルばかりだったから、やはりスケジュールに遅れが生じていることは否定できないように思う。
まあそんなことはともかく、その遅れてやってきたモデル群はどれもこれもアウディが本来持っている「Vorsprung durch Technik」、技術による先進を徐々に取り戻してきたようにも感じるのである。
『A4』というモデルはそんな古き良きアウディを全身にまとったクルマだった。そのA4、アウディは本国からやはりほぼ1年遅れでアップデートモデルを日本市場でリリースした。
◆ISGをつけたMHEVでしょ?というのは簡単だけど
今回試乗したのは「アバント」である。つまりはステーションワゴン。そして「35 TSFI」というのは近年のアウディ式ネーミング方式による出力表示を表記したもので、150psのモデルにはこの35の表記が与えられている。そして後ろのTSFIはガソリンエンジンを意味していて、クワトロが付かないから要はFWDであることを現すといった具合である。
では今回どのあたりに「Vorsprung durch Technik」を感じたか、というあたりから話をしよう。
新エンジンは2リットルのキャパシティーから150psの最高出力と270Nmの最大トルクを絞り出す。この数値、1.5リットルのキャパシティーだったQ3の150ps、250Nmに限りなく近く、恐らく多くの人は性能的な不満を漏らすかもしれない。しかしこのエンジン、実にきめ細かいことをやっている。
今回はBASと名付けられたいわゆるISGと12Vのバッテリーシステムを組み合わせたマイルドハイブリッドとしており、さらにコースティングの非常にきめ細かな制御をすることで燃費のみならずCO2排出削減に取り組んでいるのであろう。
試乗してみるとやはり高回転域での1.5リットルエンジンのようなシャープな回転フィールこそないものの、『Q3』とさほど変わらない車重ながら僅か1350rpmから絞り出される最大トルクのおかげもあってか乗り易いし、発進加速にしてもBASのおかげでこちらもトロさは一切感じない。なによりもそのパワーの繋がり感がとてもスムーズで気持ち良い走りを実現している。
発進をISG(BAS)が行うことで、DCTにありがちな低速域でのギクシャク感が全く出ないのは大きな進化で、ここでもパワーの繋がり感と走りのスムーズさが明らかに向上したと思わせた。
まあ、ISGをつけたMHEVでしょ?というのは簡単。しかし、アクセルの踏み具合や離し具合を感知して、ある時はアイドリング状態に、またある時はエンジンストップを走行中にやる制御は実にきめ細かく、それでいながら走りに違和感をもたらさないというのはやはり「Vorsprung durch Technik」なのである。このあたりはアウディの面目躍如だと思われた。
◆アウディはA4に始まりA4にとどめを刺す
デザインはドイツ車らしく、私的な表現で申し訳ないがいわゆる「変えずに変える」を実践している。即ち日頃あまりアウディに注目していない人にとってはどこが変わったのかわからない程度に変化ながら、良く知っている人にはこことここが変わったとすぐにわかるレベルの変化をつける。このあたりはドイツ御三家が得意とするフェイスリフトである。
ワゴンはSUVに駆逐されてそのニーズがだいぶ減っているように思えるのだが、やはり乗ってみると明らかに重心が低い乗用車ライクというか高い運動性能を維持したクルマという感じを受けて好ましい。そもそも使い勝手から言えば、サイズさえ同じならSUVと変わらないのだから。
まあ目線が高く視野が広いSUVが良いと言われてしまうとそれまでだが、アウディはやはりA4に始まりA4にとどめを刺すような気もする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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