メルセデスベンツ GLEクーペ 新型試乗 車体がリーンする!これに嵌ったら抜け出せない…中村孝仁
「これ、面白いから是非試してください。」これはクルマを借りに行った時、メルセデスの車両担当部署の方から言われた言葉である。
それが何であるかというと、E-ACTIVE BODY CONTROLパッケージというやつ。77万円もするオプションながら、件の車両担当者に言わせれば、お金があれば躊躇なくつけたいオプションだとか。こいつを平たく言えばアクティブサスペンションである。
その昔1980年代にロータスF1で採用されてその名が知られるようになったと記憶するが、F1と市販車ではアクティブ、即ち能動的に動かすその動かし方が異なる。F1はグランドエフェクト効果を狙って地面と車体下部の間隔を保つような動かし方。一方市販車の場合はコーナリング中に生じる遠心力をそれがかからない方向に制御するというものだ。
◆コーナリングで車体がリーンするE-ACTIVE BODY CONTROL
能動的にサスペンションを制御するのは他にもたくさんある。同じメルセデスでもマジックボディコントロールなどは地面の凹凸を察知してサスペンションのダンピングを変えるというやつもあれば、ボルボの4Cのように単にコーナリングのロールを抑えるものまで多彩である。かつてボルボは完全にコーナリング中に車体をリーンインさせるアクティブサスペンションを開発し、実際にそれに乗ってみたが、当時はタイヤが持たないということで実現しなかった。
ところがこのE-ACTIVE BODY CONTROLはまさにそのボルボがやったリーンインを実現させたものである。例によってダイナミックセレクトから、CURVEを選択し、その強度を最大の3に上げると、ほんの少しステアリングを切っただけでもその方向に明らかに車体が傾く。そんなわけだから調子に乗ってワインディングに出向いてかなり攻めてみた。結論から行くとコーナリング中に感じるアウト側に持って行かれるはずのドライバーの体はほとんど持って行かれることがなく、遠心力による恐怖も和らげられるし、何より自信を持って車をコントロールできる。
もちろんネガもある。それはドライバーによるのだが、元々コーナリング中にステアリングを左右に振るいわゆるソーイングをするドライバーだと、車体は右に左に揺れるからこれは却って危険。まあ、何とかとハサミではないが、すべては使いようで生かすも殺すも出来るということである。一度この味わい深いE-ACTIVE BODY CONTROLに嵌ってしまうと、もう抜け出せない。ダイナミックセレクトはデフォルトでコンフォートなのだが、乗り込んですぐにCURVEにして、借用している間中そのリーンインの感覚を愉しんだ。
◆これなら乗り物酔いしにくい?
このE-ACTIVE BODY CONTROLにはもう一つの技があり、オフロードモードというのに入れると、個々のタイヤを独立して車高をコントロールしたり、さらにはスタックした時に抜け出すためにあえてボディを揺らす機能までついている。この揺らす…はまさしく踊るクルマと言うおうか、車体を大きく上下に揺らすのだが、外で見ているとまさにそれは踊るクルマに見えるはずである。
まあ、ギミックといえばギミック。それに電子制御で正直言えば自然さはなくかなりアーティフィシャルな印象は拭えないのだが、素直に面白いし、効果も確かにある。重要な要素として挙げられるのは、クルマに酔い易い人にとっては酔いにくいクルマになるかもしれないということ。
というのも車酔いはクルマの揺れや視覚情報など体が受ける情報に対して脳が混乱することから起こるそうで、少なくともクルマのロールが起きず、コーナリング中に自身の体が外側に持って行かれない状況は酔いにくいかもしれないのである。これを真っ先に伝えてくれたのは我が女房殿で、「これだったら酔わないかもしれない」と、日頃過酷な試乗に付き合わせて散々ハードコーナリングに耐えてきた彼女の言葉だけに、信ぴょう性があった。
◆抜群の静粛性と、恐るべきパフォーマンス
クーペスタイルのSUVは何故か普通のSUVよりも大きく見え、この『GLE400dクーペ』は斜め後ろから見るとまるで小山のようにデカい。専有面積は大したことはないのだが(と言っても全幅は2mを超える)、視覚的にはデカい。そんなわけでルーフがなだらかに下がっているにもかかわらず、リアにも十分過ぎる空間を作り出している。
エンジンは今考え得る最良のディーゼルと感じている3リットル直6ターボである。『Sクラス』ほどではないが、乗ってしまうとそれがディーゼルであるという印象は皆無。素晴らしくスムーズだし何より抜群の静粛性と、恐るべきパフォーマンスを持っている。
車両本体価格は1186万円。オプションのE-ACTIVE BODY CONTROLとパノラミックルーフを入れた総額は1317万9000円である。ゆとりというものがあれば、買ってしまいたい1台だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
それが何であるかというと、E-ACTIVE BODY CONTROLパッケージというやつ。77万円もするオプションながら、件の車両担当者に言わせれば、お金があれば躊躇なくつけたいオプションだとか。こいつを平たく言えばアクティブサスペンションである。
その昔1980年代にロータスF1で採用されてその名が知られるようになったと記憶するが、F1と市販車ではアクティブ、即ち能動的に動かすその動かし方が異なる。F1はグランドエフェクト効果を狙って地面と車体下部の間隔を保つような動かし方。一方市販車の場合はコーナリング中に生じる遠心力をそれがかからない方向に制御するというものだ。
◆コーナリングで車体がリーンするE-ACTIVE BODY CONTROL
能動的にサスペンションを制御するのは他にもたくさんある。同じメルセデスでもマジックボディコントロールなどは地面の凹凸を察知してサスペンションのダンピングを変えるというやつもあれば、ボルボの4Cのように単にコーナリングのロールを抑えるものまで多彩である。かつてボルボは完全にコーナリング中に車体をリーンインさせるアクティブサスペンションを開発し、実際にそれに乗ってみたが、当時はタイヤが持たないということで実現しなかった。
ところがこのE-ACTIVE BODY CONTROLはまさにそのボルボがやったリーンインを実現させたものである。例によってダイナミックセレクトから、CURVEを選択し、その強度を最大の3に上げると、ほんの少しステアリングを切っただけでもその方向に明らかに車体が傾く。そんなわけだから調子に乗ってワインディングに出向いてかなり攻めてみた。結論から行くとコーナリング中に感じるアウト側に持って行かれるはずのドライバーの体はほとんど持って行かれることがなく、遠心力による恐怖も和らげられるし、何より自信を持って車をコントロールできる。
もちろんネガもある。それはドライバーによるのだが、元々コーナリング中にステアリングを左右に振るいわゆるソーイングをするドライバーだと、車体は右に左に揺れるからこれは却って危険。まあ、何とかとハサミではないが、すべては使いようで生かすも殺すも出来るということである。一度この味わい深いE-ACTIVE BODY CONTROLに嵌ってしまうと、もう抜け出せない。ダイナミックセレクトはデフォルトでコンフォートなのだが、乗り込んですぐにCURVEにして、借用している間中そのリーンインの感覚を愉しんだ。
◆これなら乗り物酔いしにくい?
このE-ACTIVE BODY CONTROLにはもう一つの技があり、オフロードモードというのに入れると、個々のタイヤを独立して車高をコントロールしたり、さらにはスタックした時に抜け出すためにあえてボディを揺らす機能までついている。この揺らす…はまさしく踊るクルマと言うおうか、車体を大きく上下に揺らすのだが、外で見ているとまさにそれは踊るクルマに見えるはずである。
まあ、ギミックといえばギミック。それに電子制御で正直言えば自然さはなくかなりアーティフィシャルな印象は拭えないのだが、素直に面白いし、効果も確かにある。重要な要素として挙げられるのは、クルマに酔い易い人にとっては酔いにくいクルマになるかもしれないということ。
というのも車酔いはクルマの揺れや視覚情報など体が受ける情報に対して脳が混乱することから起こるそうで、少なくともクルマのロールが起きず、コーナリング中に自身の体が外側に持って行かれない状況は酔いにくいかもしれないのである。これを真っ先に伝えてくれたのは我が女房殿で、「これだったら酔わないかもしれない」と、日頃過酷な試乗に付き合わせて散々ハードコーナリングに耐えてきた彼女の言葉だけに、信ぴょう性があった。
◆抜群の静粛性と、恐るべきパフォーマンス
クーペスタイルのSUVは何故か普通のSUVよりも大きく見え、この『GLE400dクーペ』は斜め後ろから見るとまるで小山のようにデカい。専有面積は大したことはないのだが(と言っても全幅は2mを超える)、視覚的にはデカい。そんなわけでルーフがなだらかに下がっているにもかかわらず、リアにも十分過ぎる空間を作り出している。
エンジンは今考え得る最良のディーゼルと感じている3リットル直6ターボである。『Sクラス』ほどではないが、乗ってしまうとそれがディーゼルであるという印象は皆無。素晴らしくスムーズだし何より抜群の静粛性と、恐るべきパフォーマンスを持っている。
車両本体価格は1186万円。オプションのE-ACTIVE BODY CONTROLとパノラミックルーフを入れた総額は1317万9000円である。ゆとりというものがあれば、買ってしまいたい1台だった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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