ランドローバー ディフェンダー 新型試乗 その人気は当分落ち着きそうにない…塩見智
2019年秋に発表され、同年末には日本でも先行予約が始まったランドローバー『ディフェンダー110』。1948年に「ランドローバー」という車名で登場し(途中でディフェンダーに車名変更)、何度も部分的な改良が加えられ、約70年間市販され続けた本格オフローダーがその起源だ。そのクルマが全面的に刷新されたことで注目を集めた。
ところが今春からのコロナ禍によって“モノ”が全然日本に届かず、メディア向け試乗会の開催や、いち早く注文を入れた顧客へのデリバリーが大幅に遅れた。初めて試乗したのは8月。その時の印象をひと言で言えば“待ったかいあり”。以来、何度か試乗の機会を得たが、最初に感じた印象は深まるばかりで変わらない。
◆終始マイルドな日本にふさわしいセッティング
高剛性なアルミモノコックボディは、ソフトな設定のエアサスペンション、比較的扁平率が高いタイヤと組み合わせられることによって、終始マイルドな乗り心地を乗員にもたらす。ダンピング強めでフラットネス重視のセッティングではないので、ふわふわしすぎと感じる人もいるかもしれないが、制限速度が最高でも120km/hの日本によりふさわしいのはこういうセッティングだと思う。
決してきびきびとしたスポーティーなハンドリングをもちあわせているわけではないが、かといって身のこなしが緩慢というわけではなく、ドライバーの操作に対し正確に反応してくれる。
悪路へ行けば、豊富なホイールアーティキュレーション(足の伸び縮み量)と、アプローチアングル(斜面への進入時にフロント部分が接触しない角度)、ランプブレイクオーバーアングル(亀の子状態になりにくさを示す角度)、デパーチャーアングル(斜面への進入時にリア部分が接触しない角度)といった基本性能の高さに加え、レンジローバーなどへの採用で長年の実績があるテレインレスポンス(車両特性が自動的に路面状況に最適化される電子制御システム)によって、高い走破性を見せるはずだ。
うんちくとして知っておくべきなのは、最大渡河水深は900mmということだけでなく、車内で水深をセンシングしながら走行することができるということ。
◆乗用車として最大級のサイズに高級SUVらしい静粛性
パワートレーンは2リットル直4ガソリンターボエンジン(最高出力300ps、最大トルク400Nm)と8速ATの組み合わせ。試乗前には車両重量2.2トンの車体に対して十分かどうか心配したが、ATのギアリングが適切なのだろう、町中から高速道路まで、痛痒なく動かすことができた。その分、WLTCモード燃費は8.3km/リットルと燃料代がかさむのは覚悟すべき。
全長5018mm、全幅1995mm(ミラー含むと2105mm)、全高1967mmと、乗用車としては最大級のサイズなので、車庫入れや狭い道路でのすれ違いには気を使う。またホイールベースが3022mmと長く、最小回転半径が6mと小まわりは利かない。
路面や速度を問わず、静粛性が高い。車内も広い。装備も充実していて、同価格帯のラグジュアリーSUVと同じだけの快適性が得られる。
ジャガーランドローバーのインフォテインメントシステムはこのディフェンダーから新生代へと移行した。彼らが「Pivi Pro」と呼ぶ新しいシステムは、タッチスクリーンで直感的にさまざまな機能を利用することができる。
同社のモデルはこれまでカーナビやオーディオが弱点で、操作しづらい設計だったのが一気に改善された。SOTA(ソフトウエア・オーバー・ジ・エア)システムが採用されていて、インターネット経由で将来登場する新機能をインストールすることもできるという。
◆早くも2021年モデルが登場
メカニズム面での共通性はないが、丸目2灯のヘッドランプ、水平貴重で四角四面のスタイリング、ルーフ左右に穿たれたアルパインライトウインドウ、背面スペアタイヤなど、随所に偉大な初代を思わせるデザインモチーフが散りばめられている。それでいて新しさも感じさせるグッドデザインだと思う。実際に発売した瞬間、世界中で大人気となった。
そのため生産が追いつかず、販売店は多数バックオーダーを抱えている状態だが、ジャガーランドローバージャパンは先日早くも2021年モデルを発表した。一番のトピックは3リットル直6ディーゼル・エンジンターボエンジンが追加されたこと。先日『レンジローバースポーツ』に追加されたのと同じエンジンで、最高出力300ps、最大トルク650Nmを発揮。48V電源を用いたマイルドハイブリッド仕様となる。
本国には2リットル直4ディーゼルターボエンジン搭載モデルもあるため、日本仕様のディーゼルがどっちになるのか注目を集めていたが、新開発の直6ディーゼルエンジン搭載モデルを当面の日本仕様のディフェンダーのトップモデルに据える方針のようだ。さらにレンジローバーやレンジローバースポーツ同様、プラグインハイブリッド仕様が出てくるはず。
このほか新たなグレードとして最上級のXと、タフさやダイナミックさを強調した内外装のX-Dynamicが追加される。グレードによってファブリックルーフも選択できるようになる。
ディフェンダー人気は当分落ち着きそうにない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★★
塩見智|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1972年生まれ。岡山県出身。地方紙記者、自動車専門誌編集者を経てフリーランス・ライターおよびエディターへ。専門的で堅苦しく難しいテーマをできるだけ平易に面白く表現することを信条とする。文章はたとえツッコミ多め、自虐的表現多め。自動車専門誌、ライフスタイル誌、ウェブサイトなど、さまざまなメディアへ寄稿中。趣味ゴルフ。日本カーオブザイヤー選考委員。
ところが今春からのコロナ禍によって“モノ”が全然日本に届かず、メディア向け試乗会の開催や、いち早く注文を入れた顧客へのデリバリーが大幅に遅れた。初めて試乗したのは8月。その時の印象をひと言で言えば“待ったかいあり”。以来、何度か試乗の機会を得たが、最初に感じた印象は深まるばかりで変わらない。
◆終始マイルドな日本にふさわしいセッティング
高剛性なアルミモノコックボディは、ソフトな設定のエアサスペンション、比較的扁平率が高いタイヤと組み合わせられることによって、終始マイルドな乗り心地を乗員にもたらす。ダンピング強めでフラットネス重視のセッティングではないので、ふわふわしすぎと感じる人もいるかもしれないが、制限速度が最高でも120km/hの日本によりふさわしいのはこういうセッティングだと思う。
決してきびきびとしたスポーティーなハンドリングをもちあわせているわけではないが、かといって身のこなしが緩慢というわけではなく、ドライバーの操作に対し正確に反応してくれる。
悪路へ行けば、豊富なホイールアーティキュレーション(足の伸び縮み量)と、アプローチアングル(斜面への進入時にフロント部分が接触しない角度)、ランプブレイクオーバーアングル(亀の子状態になりにくさを示す角度)、デパーチャーアングル(斜面への進入時にリア部分が接触しない角度)といった基本性能の高さに加え、レンジローバーなどへの採用で長年の実績があるテレインレスポンス(車両特性が自動的に路面状況に最適化される電子制御システム)によって、高い走破性を見せるはずだ。
うんちくとして知っておくべきなのは、最大渡河水深は900mmということだけでなく、車内で水深をセンシングしながら走行することができるということ。
◆乗用車として最大級のサイズに高級SUVらしい静粛性
パワートレーンは2リットル直4ガソリンターボエンジン(最高出力300ps、最大トルク400Nm)と8速ATの組み合わせ。試乗前には車両重量2.2トンの車体に対して十分かどうか心配したが、ATのギアリングが適切なのだろう、町中から高速道路まで、痛痒なく動かすことができた。その分、WLTCモード燃費は8.3km/リットルと燃料代がかさむのは覚悟すべき。
全長5018mm、全幅1995mm(ミラー含むと2105mm)、全高1967mmと、乗用車としては最大級のサイズなので、車庫入れや狭い道路でのすれ違いには気を使う。またホイールベースが3022mmと長く、最小回転半径が6mと小まわりは利かない。
路面や速度を問わず、静粛性が高い。車内も広い。装備も充実していて、同価格帯のラグジュアリーSUVと同じだけの快適性が得られる。
ジャガーランドローバーのインフォテインメントシステムはこのディフェンダーから新生代へと移行した。彼らが「Pivi Pro」と呼ぶ新しいシステムは、タッチスクリーンで直感的にさまざまな機能を利用することができる。
同社のモデルはこれまでカーナビやオーディオが弱点で、操作しづらい設計だったのが一気に改善された。SOTA(ソフトウエア・オーバー・ジ・エア)システムが採用されていて、インターネット経由で将来登場する新機能をインストールすることもできるという。
◆早くも2021年モデルが登場
メカニズム面での共通性はないが、丸目2灯のヘッドランプ、水平貴重で四角四面のスタイリング、ルーフ左右に穿たれたアルパインライトウインドウ、背面スペアタイヤなど、随所に偉大な初代を思わせるデザインモチーフが散りばめられている。それでいて新しさも感じさせるグッドデザインだと思う。実際に発売した瞬間、世界中で大人気となった。
そのため生産が追いつかず、販売店は多数バックオーダーを抱えている状態だが、ジャガーランドローバージャパンは先日早くも2021年モデルを発表した。一番のトピックは3リットル直6ディーゼル・エンジンターボエンジンが追加されたこと。先日『レンジローバースポーツ』に追加されたのと同じエンジンで、最高出力300ps、最大トルク650Nmを発揮。48V電源を用いたマイルドハイブリッド仕様となる。
本国には2リットル直4ディーゼルターボエンジン搭載モデルもあるため、日本仕様のディーゼルがどっちになるのか注目を集めていたが、新開発の直6ディーゼルエンジン搭載モデルを当面の日本仕様のディフェンダーのトップモデルに据える方針のようだ。さらにレンジローバーやレンジローバースポーツ同様、プラグインハイブリッド仕様が出てくるはず。
このほか新たなグレードとして最上級のXと、タフさやダイナミックさを強調した内外装のX-Dynamicが追加される。グレードによってファブリックルーフも選択できるようになる。
ディフェンダー人気は当分落ち着きそうにない。
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パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★
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