マツダ MX-30 新型試乗 300kmを走ってわかった『MX-30』の実力…中村孝仁
◆300kmを走ってわかった『MX-30』の実力
自動車というのはやっぱりほんの小一時間ほど乗ったぐらいで、そのすべてがわかるというものではないことを痛感した。
雨の中でマツダ『MX-30』に初めて試乗したのは10月末のこと。そして今回じっくり1週間ほど、2WDのモデルに乗せて頂いた。試乗会時にも2WDと4WDを乗り比べてみたのだが、その時の印象は4WDの方が車両の落ち着き感が強くて、2WDはキビキビ感こそあるものの、全体の乗り心地としてはやはり4WDが上という印象だった。
ところが今回は4WD車に5日ほど乗った後すぐに2WD車に1週間乗せてもらった。結論から言って両車の乗り心地にはほとんど違いがないということがわかった。考えられる原因として、試乗会時はまだ走行距離が出ておらず、サスペンションの落ち着き具合やフリクションが2WD車に限って取れていなかったことが考えられる。
そして全体の乗り心地としては僕自身がいつも使う定番の波状走行路を試す限り、MX-30の乗り心地とその動きは間違いなく『CX-30』を凌駕しており、サスペンションの動きもMX-30の方が良いということである。
乗り心地がここまで違う理由をエンジニアに聞いてみると、フリースタイルドアを持つBピラーレスのデザインであるため、よりリア回りの骨格構造を強化して、サスペンションの取り付け剛性を上げるなどしているためだろうとの話。確かに4ドアのCX-30とは構造的にもだいぶ異なるのだが、そもそも基本プラットフォームは一緒なのだから、CX-30の方を何とかして欲しいものである。
◆WLTCモード燃費は15.6km/リットルだが
リアゲートに「eSKYACTIVE G」と表記されるように、このクルマは24VのISG(モーター機能付発電機)を用いたいわゆるMHEV(マイルドハイブリッド)である。ただし、MHEVといっても最近のこの手のパワーユニットからは、従来のガソリンエンジン車とその違いを判別することがほとんどできない。普通にエンジンをかけ、普通に走り出す。勿論アイドリングストップはするのだが、かといって電気でするすると走り出すわけではないから、注意深く乗っていないとまずその違いに気付くことはないと思う。
注意深くするのはアイドリングストップ後のリスタートで、従来のようにセルモーターを使ってクランキングさせるよりずっとスムーズにエンジンが始動する点である。勿論ブレーキ回生などもして当然ながら幾ばくかの燃費的なメリットも享受されるはずなのだが、今回の試乗で約300kmほど走った総平均の燃費は10.9km/リットルと、少々期待外れのものだった。
余談ながらWLTCモードの燃費は15.6km/リットル。もっとも悪い市街地走行の燃費でも12.3km/リットルだから、そこにも届いていない。特に燃費走行をしたわけでもなく、特に過激に走ったわけでもないが少し残念な結果である。まあ、弁護をすれば今回は高速走行は少なく、市街地走行が多かったことを付け加えよう。
◆気になる3つのポイント
いくつか気になる点もあった。一つは、このクルマの特徴であるフリースタイルドア。前回のレポートで前ドアを開けた状態の立ち位置で後席に荷物を積み込んだりできるので便利だと書いた。確かにそれはその通りであるのだが、それはドアを目いっぱい開けられる状態にあることという条件が付く。コインパーキングやショッピングモールの駐車場で、82度も開いてしまうフロントドアを目いっぱい開けられるケースはほぼ無いので、結果的にこのような状態で後席にアクセスするのは非常に難しいこともわかった。
次は「ホールドモード」という、フットブレーキから足を離してもブレーキを踏んだ状態を維持してくれる機構だ。センターコンソールのボタンをプッシュしてそれをセレクトできるのだが、デフォルトはそれがかかっていない状態。従ってエンジンを止めてしまうとホールドモードも同時に解除されてしまう。ボルボやBMWなどはそのホールドモードを一度設定すると、エンジンを切ってもその状態を保持してくれる。個人的にはこちらの方が使いやすいと感じた。
そしてもう一つは逆L字型の操作をするシフトレバーだ。Pの位置からボタンを押して左に移動させるとR。そこからは通常のストレートに動くATレバーと同じで、N→Dとシフトされる。ほとんどのクルマはシフトレバーを前方に押しやって止まったところがPなのだが、MX-30はそこがRポジション。そこに入った状態である種のアラームでも鳴ってくれればそれと気づくのだが、MX-30はそうしたアラーム音は出ない。
そんなわけで、Pに入れたつもりで実はRだったというケースが試乗中2度ほどあった。このシフトゲートにするなら、今試乗中のBMWのように、リバースに入れた際に何らかのアラーム音を出してくれるとわかり易いと思う。
と、細かい点の問題は感じたが、クルマとしての出来はかなり上質で、コストパフォーマンスは非常に高いと感じるクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
自動車というのはやっぱりほんの小一時間ほど乗ったぐらいで、そのすべてがわかるというものではないことを痛感した。
雨の中でマツダ『MX-30』に初めて試乗したのは10月末のこと。そして今回じっくり1週間ほど、2WDのモデルに乗せて頂いた。試乗会時にも2WDと4WDを乗り比べてみたのだが、その時の印象は4WDの方が車両の落ち着き感が強くて、2WDはキビキビ感こそあるものの、全体の乗り心地としてはやはり4WDが上という印象だった。
ところが今回は4WD車に5日ほど乗った後すぐに2WD車に1週間乗せてもらった。結論から言って両車の乗り心地にはほとんど違いがないということがわかった。考えられる原因として、試乗会時はまだ走行距離が出ておらず、サスペンションの落ち着き具合やフリクションが2WD車に限って取れていなかったことが考えられる。
そして全体の乗り心地としては僕自身がいつも使う定番の波状走行路を試す限り、MX-30の乗り心地とその動きは間違いなく『CX-30』を凌駕しており、サスペンションの動きもMX-30の方が良いということである。
乗り心地がここまで違う理由をエンジニアに聞いてみると、フリースタイルドアを持つBピラーレスのデザインであるため、よりリア回りの骨格構造を強化して、サスペンションの取り付け剛性を上げるなどしているためだろうとの話。確かに4ドアのCX-30とは構造的にもだいぶ異なるのだが、そもそも基本プラットフォームは一緒なのだから、CX-30の方を何とかして欲しいものである。
◆WLTCモード燃費は15.6km/リットルだが
リアゲートに「eSKYACTIVE G」と表記されるように、このクルマは24VのISG(モーター機能付発電機)を用いたいわゆるMHEV(マイルドハイブリッド)である。ただし、MHEVといっても最近のこの手のパワーユニットからは、従来のガソリンエンジン車とその違いを判別することがほとんどできない。普通にエンジンをかけ、普通に走り出す。勿論アイドリングストップはするのだが、かといって電気でするすると走り出すわけではないから、注意深く乗っていないとまずその違いに気付くことはないと思う。
注意深くするのはアイドリングストップ後のリスタートで、従来のようにセルモーターを使ってクランキングさせるよりずっとスムーズにエンジンが始動する点である。勿論ブレーキ回生などもして当然ながら幾ばくかの燃費的なメリットも享受されるはずなのだが、今回の試乗で約300kmほど走った総平均の燃費は10.9km/リットルと、少々期待外れのものだった。
余談ながらWLTCモードの燃費は15.6km/リットル。もっとも悪い市街地走行の燃費でも12.3km/リットルだから、そこにも届いていない。特に燃費走行をしたわけでもなく、特に過激に走ったわけでもないが少し残念な結果である。まあ、弁護をすれば今回は高速走行は少なく、市街地走行が多かったことを付け加えよう。
◆気になる3つのポイント
いくつか気になる点もあった。一つは、このクルマの特徴であるフリースタイルドア。前回のレポートで前ドアを開けた状態の立ち位置で後席に荷物を積み込んだりできるので便利だと書いた。確かにそれはその通りであるのだが、それはドアを目いっぱい開けられる状態にあることという条件が付く。コインパーキングやショッピングモールの駐車場で、82度も開いてしまうフロントドアを目いっぱい開けられるケースはほぼ無いので、結果的にこのような状態で後席にアクセスするのは非常に難しいこともわかった。
次は「ホールドモード」という、フットブレーキから足を離してもブレーキを踏んだ状態を維持してくれる機構だ。センターコンソールのボタンをプッシュしてそれをセレクトできるのだが、デフォルトはそれがかかっていない状態。従ってエンジンを止めてしまうとホールドモードも同時に解除されてしまう。ボルボやBMWなどはそのホールドモードを一度設定すると、エンジンを切ってもその状態を保持してくれる。個人的にはこちらの方が使いやすいと感じた。
そしてもう一つは逆L字型の操作をするシフトレバーだ。Pの位置からボタンを押して左に移動させるとR。そこからは通常のストレートに動くATレバーと同じで、N→Dとシフトされる。ほとんどのクルマはシフトレバーを前方に押しやって止まったところがPなのだが、MX-30はそこがRポジション。そこに入った状態である種のアラームでも鳴ってくれればそれと気づくのだが、MX-30はそうしたアラーム音は出ない。
そんなわけで、Pに入れたつもりで実はRだったというケースが試乗中2度ほどあった。このシフトゲートにするなら、今試乗中のBMWのように、リバースに入れた際に何らかのアラーム音を出してくれるとわかり易いと思う。
と、細かい点の問題は感じたが、クルマとしての出来はかなり上質で、コストパフォーマンスは非常に高いと感じるクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
最新ニュース
-
-
トヨタ、ピックアップトラックにも高性能ハイブリッド「i-FORCE MAX」搭載!『タコマ TRDプロ』登場
2024.12.20
-
-
-
これで全部か? スバルが 東京オートサロン2025 出展概要を発表
2024.12.20
-
-
-
『フロンクス』がワイルドに変身!? “最後の“スイスポも登場、スズキ「東京オートサロン2025」出展
2024.12.20
-
-
-
日産『ノートオーラ』、新グレード「AUTECH SPORTS SPEC」登場…パフォーマンスダンパーをヤマハと共同開発
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『bZ4X』、最大6000ドル価格引き下げ…EV初の「ナイトシェード」も設定
2024.12.20
-
-
-
トムス、アルミ削り出し鍛造プレミアムホイール「TWF03」に60系『プリウス』サイズを追加
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『タコマ』のオフロード性能さらにアップ! 冒険志向の「トレイルハンター」2025年モデルに
2024.12.19
-
最新ニュース
-
-
トヨタ、ピックアップトラックにも高性能ハイブリッド「i-FORCE MAX」搭載!『タコマ TRDプロ』登場
2024.12.20
-
-
-
これで全部か? スバルが 東京オートサロン2025 出展概要を発表
2024.12.20
-
-
-
『フロンクス』がワイルドに変身!? “最後の“スイスポも登場、スズキ「東京オートサロン2025」出展
2024.12.20
-
-
-
日産『ノートオーラ』、新グレード「AUTECH SPORTS SPEC」登場…パフォーマンスダンパーをヤマハと共同開発
2024.12.20
-
-
-
トヨタ『bZ4X』、最大6000ドル価格引き下げ…EV初の「ナイトシェード」も設定
2024.12.20
-
-
-
トムス、アルミ削り出し鍛造プレミアムホイール「TWF03」に60系『プリウス』サイズを追加
2024.12.20
-
MORIZO on the Road