三菱 エクリプスクロスPHEV 新型試乗 電動化の落としどころはここ!だと思う…中村孝仁
◆どでかい「EV」のエンブレムに思うこと
横っ腹にド~ンとでっかくEVと書かれた上に小さくPLUG-IN HYBRIDと記されているエンブレムが今の状況を物語っているような気がした。
ご存知の通り、菅政権では2030年台半ばにガソリン車の販売を中止する方向で調整しているという報道が出ると、ガソリン車×、電気自動車〇的な風潮が俄かに強まった。
しかもガソリン車×の中には、それイコール電気自動車へ移行…のようなニュアンスで報じる向きもあって、こちらとしては「おいおい、ちょっと待てよ。電動化にはHEVだってPHEVだって、もしかしたらMHEVだって含まれるじゃない。なのに多くの人が全部EVになっちゃうように錯覚している。これってまずくない?」という思いが強かった。つまり、EVといえばみんなOKしてくれて、HEVやPHEVだとダメ…的な。
でも、考えてみて欲しい。今だって電気自動車の充電は結構時間もかかるし、何より市中のインフラはガソリンスタンドのように潤沢ではない。それに例えば先日起きた関越自動車道での豪雪渋滞で40時間も止まると、電欠の恐れがあってそれは怖いことになると思うのは多分僕だけではないと思う。
三菱が横っ腹に大きくEVと書いたのは、そんな不安払拭もあってかな?と考えたりもしたが、このEV問題が起きたのは既に『エクリプスクロスPHEV』が出来た後のことだから、そんなのは無関係にこうなっていたんだろうなと思うが、だとしてもこのエンブレムは正解だったように感じるわけである。
◆『アウトランダーPHEV』とほぼ同じ重量でも走りに違い
システム自体は『アウトランダーPHEV』のそれと同じなのだが、まあ制御を変えたりモードの呼び方を変えていたりといった違いがある。エクリプスクロスではそのドライブモードがエコ、ノーマル、スノー、グラベル、それにターマックとなった。アウトランダーではグラベルはロックであり、ターマックはスポーツだった。
実はこの2台、プラットフォームも同じだし、ホイールベースも同じなのだが実際に乗ってみるとずいぶんとこちらの方が良い印象。少し新しい分シャシーにもそれなりに手を入れたのかなとは思うのだが、両車を比較してみるとかなり面白い事実が浮かび上がる。
実はボディはエクリプスクロスの方が全長で150mmほど短い。全幅は5mmだけエクリプスクロスの方が大きいが、全高だって低いのだから当然コンパクト。そして搭載するエンジンもバッテリーの積載量も同じなのだが、なぜか車重には反映されず、ほぼ同じなのである。
今回試乗したのは最も豪華仕様の「P」グレードで、車重は1920kg。アウトランダーの最豪華版は1930kgだからボディが大きい分を考慮すると、例えば音振対策をエクリプスクロスの方がやっているのかな?などという疑問が湧く。
というのも、今回のエクリプスクロスは実に快適かつ静かだったのだ。まあ、PHEVでシリーズ(ハイブリッド)的な走りをするから当然といえば当然なのだが、それにしても路面からの音の遮断やエンジンがかかって唸った時でも透過音が小さく静かなのである。
◆電動化の落としどころは当面PHEVで良い
そう言えば、新しいターマックというドライブモードでは完全にシリーズ状態で走る。つまり、モーター走行のみだ。そしてブレーキ回生が最強のB5になるとのことだ。因みにブレーキ回生の強さはパドルシフトで何段階かに変えることが出来る。B5だとかなり強いがそれでも日産のe-POWERほどではない。
今回は富士山の戦車道に持ち込んで結構走ってみたが、4輪の制御はとても素晴らしく、ウェットだと抜群の制御能力を発揮すると、その状況を走った同業者が言っていたが、ドライ路面でも実に好印象だ。
2.4リットルの直4ユニットと前後60/70kWのモーターという駆動力もアウトランダーと同じ。軽快な走りは見せてくれるものの、電気特有の初期でグワッとくる瞬発力やパーシャルからの加速感は少し物足りなさを感じるし、ターマックモードにしたところでその積み増し量はほんの僅かで、劇的に加速が変化するということはない。体感的にはちょっとだけ速くなるというのが正解。
それにしても静かに走っている限り、大半はモーター駆動だし、ガソリンエンジンが顔を出したところで、場合によっては気付かないほど静々と回るから、大きくEVと謳っても、あながち間違いではない。ピュアEVの充電や電欠を考えると、電動化の落としどころは当面このPHEVで良いのではないかと思う。
それにCO2排出量の問題だって、バッテリーの搭載量が多ければ、それに伴う生産時のCO2排出量が多くなって、さらには電気をどう作り出すかという点でも日本のように火力の依存度が高いと問題有りだし…。どう考えても落としどころがここだと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
横っ腹にド~ンとでっかくEVと書かれた上に小さくPLUG-IN HYBRIDと記されているエンブレムが今の状況を物語っているような気がした。
ご存知の通り、菅政権では2030年台半ばにガソリン車の販売を中止する方向で調整しているという報道が出ると、ガソリン車×、電気自動車〇的な風潮が俄かに強まった。
しかもガソリン車×の中には、それイコール電気自動車へ移行…のようなニュアンスで報じる向きもあって、こちらとしては「おいおい、ちょっと待てよ。電動化にはHEVだってPHEVだって、もしかしたらMHEVだって含まれるじゃない。なのに多くの人が全部EVになっちゃうように錯覚している。これってまずくない?」という思いが強かった。つまり、EVといえばみんなOKしてくれて、HEVやPHEVだとダメ…的な。
でも、考えてみて欲しい。今だって電気自動車の充電は結構時間もかかるし、何より市中のインフラはガソリンスタンドのように潤沢ではない。それに例えば先日起きた関越自動車道での豪雪渋滞で40時間も止まると、電欠の恐れがあってそれは怖いことになると思うのは多分僕だけではないと思う。
三菱が横っ腹に大きくEVと書いたのは、そんな不安払拭もあってかな?と考えたりもしたが、このEV問題が起きたのは既に『エクリプスクロスPHEV』が出来た後のことだから、そんなのは無関係にこうなっていたんだろうなと思うが、だとしてもこのエンブレムは正解だったように感じるわけである。
◆『アウトランダーPHEV』とほぼ同じ重量でも走りに違い
システム自体は『アウトランダーPHEV』のそれと同じなのだが、まあ制御を変えたりモードの呼び方を変えていたりといった違いがある。エクリプスクロスではそのドライブモードがエコ、ノーマル、スノー、グラベル、それにターマックとなった。アウトランダーではグラベルはロックであり、ターマックはスポーツだった。
実はこの2台、プラットフォームも同じだし、ホイールベースも同じなのだが実際に乗ってみるとずいぶんとこちらの方が良い印象。少し新しい分シャシーにもそれなりに手を入れたのかなとは思うのだが、両車を比較してみるとかなり面白い事実が浮かび上がる。
実はボディはエクリプスクロスの方が全長で150mmほど短い。全幅は5mmだけエクリプスクロスの方が大きいが、全高だって低いのだから当然コンパクト。そして搭載するエンジンもバッテリーの積載量も同じなのだが、なぜか車重には反映されず、ほぼ同じなのである。
今回試乗したのは最も豪華仕様の「P」グレードで、車重は1920kg。アウトランダーの最豪華版は1930kgだからボディが大きい分を考慮すると、例えば音振対策をエクリプスクロスの方がやっているのかな?などという疑問が湧く。
というのも、今回のエクリプスクロスは実に快適かつ静かだったのだ。まあ、PHEVでシリーズ(ハイブリッド)的な走りをするから当然といえば当然なのだが、それにしても路面からの音の遮断やエンジンがかかって唸った時でも透過音が小さく静かなのである。
◆電動化の落としどころは当面PHEVで良い
そう言えば、新しいターマックというドライブモードでは完全にシリーズ状態で走る。つまり、モーター走行のみだ。そしてブレーキ回生が最強のB5になるとのことだ。因みにブレーキ回生の強さはパドルシフトで何段階かに変えることが出来る。B5だとかなり強いがそれでも日産のe-POWERほどではない。
今回は富士山の戦車道に持ち込んで結構走ってみたが、4輪の制御はとても素晴らしく、ウェットだと抜群の制御能力を発揮すると、その状況を走った同業者が言っていたが、ドライ路面でも実に好印象だ。
2.4リットルの直4ユニットと前後60/70kWのモーターという駆動力もアウトランダーと同じ。軽快な走りは見せてくれるものの、電気特有の初期でグワッとくる瞬発力やパーシャルからの加速感は少し物足りなさを感じるし、ターマックモードにしたところでその積み増し量はほんの僅かで、劇的に加速が変化するということはない。体感的にはちょっとだけ速くなるというのが正解。
それにしても静かに走っている限り、大半はモーター駆動だし、ガソリンエンジンが顔を出したところで、場合によっては気付かないほど静々と回るから、大きくEVと謳っても、あながち間違いではない。ピュアEVの充電や電欠を考えると、電動化の落としどころは当面このPHEVで良いのではないかと思う。
それにCO2排出量の問題だって、バッテリーの搭載量が多ければ、それに伴う生産時のCO2排出量が多くなって、さらには電気をどう作り出すかという点でも日本のように火力の依存度が高いと問題有りだし…。どう考えても落としどころがここだと思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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