マツダ CX-5 新型試乗 「ほぼ完成型」たゆまぬ改良に頭が下がる…中村孝仁
◆これが現行モデル最後の改良か
2012年に初代が登場したマツダ『CX-5』。誕生以来、ある意味ではマツダ最大のヒット作といっても過言ではないほど堅調な売れ行きを示している。
現行モデルは2代目。2017年登場であるが基本骨格は初代から引き継いだもので、改良はされているものの全とっかえではなかった。基本スタイルも先代のキャリーオーバー。それでも販売は非常に好調で、コロナ禍だった昨年こそへこんだはずだがこのクルマが販売されているほぼすべての国で非常に良い販売を継続している。特に北米は2019年が過去最高の販売だった。
だが、マツダは2020年11月に中期経営計画の見直しを発表し、その中でラージ商品群の投資を進め市場投入をすると公表している。実はCX-5はそのラージ商品群に含まれ、次期モデルは縦置きのアーキテクチャに変更されることが明らかになっている。
つまり、横置きFWDをベースとするCX-5はこれが最後というわけで、アメリカオートモティブニュースによれば、CX-5のフルモデルチェンジは2022年、つまり来年予定されているのである。こう考えると今回の商品改良は、恐らく最後の商品改良になるのではないかと思われる。
◆アクセルペダルの最適化と出力向上は実感できるか?
それにしてもこれまで一体どれほどの商品改良が行われてきたか。マツダのたゆまぬ努力にはホントに頭が下がる。しかし、ことCX-5に関していえばやりつくした感があって、今回の商品改良も見た目でわかるのは大型化されたディスプレイくらいなもの。それ以外のポイントとなると、実際に試乗してみても「ふーん」という反応しかできなかった。
とりあえず変更点を列記してみると、センターディスプレイが新たに10.25インチに拡大した。もっともこれは最高グレードの「エクスクルーシブモード」と「Lパッケージ」及び100周年特別記念車には標準で、他のモデルはオプション設定である。それでも他モデルのディスプレイも従来の8インチから8.8インチへと拡大されている。すべてのモデルで設定されたのはコネクテッドサービスの車載通信機が標準装備されたことだ。機構的な面では2.2リットルディーゼルのパワーが200psへと10ps引き上げられたことと、アクセルペダルの操作力を最適化したこと。以上が今回の改良点だ。
操作力の最適化とは、具体的にはアクセルを踏む踏力を少しだけ重くしたこと。これによって加減速をより意のままに出来るようになったそうだ。その重さを確かめるためにまずは従来型のCX-5に試乗。そのアクセルの感触を体に叩き込んだうえで、重くなった新しいモデルに乗ってみた。確かにほんの少しだけ重いことは体感できた。
日本人のドライバーにはバンと踏み込んであとは空走させるような走り方の人が多いのだろうか。そうした人には有効な策なのかもしれないが、これで劇的にコントロール性が上がったかと言われても、こちらとしては前述した通り「ふーん」という反応しかできなかった。
エンジンパワーにしてもそうだ。確かに10psの恩恵はあるのかもしれないが、それが発揮されるのはエンジン回転にして4000rpm。果たしてディーゼルを4000rpmまでブン回す機会がどれだけあるかと言われたら、ほとんどない。試乗の間も場面場面で試しては見たものの、体感できるレベルではなかった。
一方でパワーだけでなくトルクカーブにも手が加えられ、おおよそだが3000rpm~4500rpm手前までの厚みが増している。もっともピークトルクに変更はない。これとてディーゼルにしたらかなりの高回転域だから、なかなか実感としては湧かない。
◆たゆまぬ商品改良には頭が下がるが…
というわけで、今回の改良は体感レベルではほとんど変化なしというのが個人的な印象であった。そもそも、このクルマはほぼ完成型だと言って過言ではなく、むしろお買い得な「スマートエディション」のようなモデルに目が行ってしまう(今回FWD車で試乗した)。
CX-5の場合はパワーリフトゲートまでつけた『CX-8』ほどのお買い得感はないものの、ベース車に対し360度ビューモニターを含む5つの装備が追加されて320万1000円。これ、『マツダ3』の「XD Lパッケージ」よりも安い。まあ、この2台を比較する人はいないかもしれないが、そのレベルの値段である。これは非常に費用対効果が高いモデルだと感じる。
ただ、正直なところモデル末期のモデルにたゆまぬ努力で商品改良を加える姿勢には頭が下がるものの、そろそろリソースを次期モデルに投入して頂きたいというのがこちらの本音。たゆまぬ商品改良も、ユーザーが実感してなんぼだと思う。だから、例えばトランスミッションなどの大物を、次期型では6速から8速にするといった変更をして頂きたいと思うわけである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
2012年に初代が登場したマツダ『CX-5』。誕生以来、ある意味ではマツダ最大のヒット作といっても過言ではないほど堅調な売れ行きを示している。
現行モデルは2代目。2017年登場であるが基本骨格は初代から引き継いだもので、改良はされているものの全とっかえではなかった。基本スタイルも先代のキャリーオーバー。それでも販売は非常に好調で、コロナ禍だった昨年こそへこんだはずだがこのクルマが販売されているほぼすべての国で非常に良い販売を継続している。特に北米は2019年が過去最高の販売だった。
だが、マツダは2020年11月に中期経営計画の見直しを発表し、その中でラージ商品群の投資を進め市場投入をすると公表している。実はCX-5はそのラージ商品群に含まれ、次期モデルは縦置きのアーキテクチャに変更されることが明らかになっている。
つまり、横置きFWDをベースとするCX-5はこれが最後というわけで、アメリカオートモティブニュースによれば、CX-5のフルモデルチェンジは2022年、つまり来年予定されているのである。こう考えると今回の商品改良は、恐らく最後の商品改良になるのではないかと思われる。
◆アクセルペダルの最適化と出力向上は実感できるか?
それにしてもこれまで一体どれほどの商品改良が行われてきたか。マツダのたゆまぬ努力にはホントに頭が下がる。しかし、ことCX-5に関していえばやりつくした感があって、今回の商品改良も見た目でわかるのは大型化されたディスプレイくらいなもの。それ以外のポイントとなると、実際に試乗してみても「ふーん」という反応しかできなかった。
とりあえず変更点を列記してみると、センターディスプレイが新たに10.25インチに拡大した。もっともこれは最高グレードの「エクスクルーシブモード」と「Lパッケージ」及び100周年特別記念車には標準で、他のモデルはオプション設定である。それでも他モデルのディスプレイも従来の8インチから8.8インチへと拡大されている。すべてのモデルで設定されたのはコネクテッドサービスの車載通信機が標準装備されたことだ。機構的な面では2.2リットルディーゼルのパワーが200psへと10ps引き上げられたことと、アクセルペダルの操作力を最適化したこと。以上が今回の改良点だ。
操作力の最適化とは、具体的にはアクセルを踏む踏力を少しだけ重くしたこと。これによって加減速をより意のままに出来るようになったそうだ。その重さを確かめるためにまずは従来型のCX-5に試乗。そのアクセルの感触を体に叩き込んだうえで、重くなった新しいモデルに乗ってみた。確かにほんの少しだけ重いことは体感できた。
日本人のドライバーにはバンと踏み込んであとは空走させるような走り方の人が多いのだろうか。そうした人には有効な策なのかもしれないが、これで劇的にコントロール性が上がったかと言われても、こちらとしては前述した通り「ふーん」という反応しかできなかった。
エンジンパワーにしてもそうだ。確かに10psの恩恵はあるのかもしれないが、それが発揮されるのはエンジン回転にして4000rpm。果たしてディーゼルを4000rpmまでブン回す機会がどれだけあるかと言われたら、ほとんどない。試乗の間も場面場面で試しては見たものの、体感できるレベルではなかった。
一方でパワーだけでなくトルクカーブにも手が加えられ、おおよそだが3000rpm~4500rpm手前までの厚みが増している。もっともピークトルクに変更はない。これとてディーゼルにしたらかなりの高回転域だから、なかなか実感としては湧かない。
◆たゆまぬ商品改良には頭が下がるが…
というわけで、今回の改良は体感レベルではほとんど変化なしというのが個人的な印象であった。そもそも、このクルマはほぼ完成型だと言って過言ではなく、むしろお買い得な「スマートエディション」のようなモデルに目が行ってしまう(今回FWD車で試乗した)。
CX-5の場合はパワーリフトゲートまでつけた『CX-8』ほどのお買い得感はないものの、ベース車に対し360度ビューモニターを含む5つの装備が追加されて320万1000円。これ、『マツダ3』の「XD Lパッケージ」よりも安い。まあ、この2台を比較する人はいないかもしれないが、そのレベルの値段である。これは非常に費用対効果が高いモデルだと感じる。
ただ、正直なところモデル末期のモデルにたゆまぬ努力で商品改良を加える姿勢には頭が下がるものの、そろそろリソースを次期モデルに投入して頂きたいというのがこちらの本音。たゆまぬ商品改良も、ユーザーが実感してなんぼだと思う。だから、例えばトランスミッションなどの大物を、次期型では6速から8速にするといった変更をして頂きたいと思うわけである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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