マツダ3 SKYACTIV-X 6MT 新型試乗 アップデートで“X”の存在感と魅力が増した…片岡英明
走る歓びと優れた環境・安全性能を実現するために、技術のすべてをゼロから見直し、技術革新に取り組んだCセグメントのファミリーカーが『マツダ3』だ。新世代商品の第1弾として登場したのは2019年5月のことである。
軽量かつ高剛性のプラットフォームを開発し、パワートレインも一新した。また、理想の燃焼を追求したSKYACTIV-Xも遅れて発売されている。そして20年11月に定期的な商品改良を行い、走行性能と安全性を向上させ、マツダの自慢である「走る歓び」の進化を図った。
◆エンジンとトランスミッションを制御するソフトウェアをアップデート
ステアリングを握ったのは、マツダが世界で初めて実用化に成功した、独自の燃焼方式「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」とマイルドハイブリッド(Mハイブリッド)、そしてスーパーチャージャーを組み合わせた革新的な圧縮着火燃焼のガソリンエンジン、SKYACTIV-X搭載車である。その中から「ファストバック」を名乗る5ドアハッチバックのFF(前輪駆動)車、それも6速MT車を試乗に引っ張り出した。
どのくらい進化したのかを知るために、SKYACTIV-Xを搭載した旧型を同行させ、同じコースを走っている。ただし、こちらは4輪駆動のAWDモデルで、装着タイヤも違っていた。タイヤはどちらも215/45R18サイズだが、最新モデルはブリヂストンのトランザ、旧型はトーヨーのプロクセスだ。だが、多くの点で違いを発見した。
最大の注目ポイントは、SKYACTIV-X搭載車のエンジンとトランスミッションを制御するソフトウェアをアップデートしたことである。具台的には、シリンダー・プレッシャー・センサーによる燃焼フィードバック制御の精度を高め、応答性を向上させた。また、EGR(a/)の推定制御の精度を高め、旧モデルより多くの空気をシリンダーに送り込むことによってトルクと出力を向上させている。この2つに加え、エンジンとATの応答制御も最適化を図った。
旧型は、最高出力が132kW(180ps)/6000rpm、最大トルクは224Nm(22.8kg-m)/3000rpmだった。これに対し最新型では、それぞれ140kW(190ps)/6000rpm、最大トルクは240Nm(24.4kg-m)/4500rpmに増強されている。どちらも指定燃料はハイオクと呼ぶプレミアムガソリンだ。ちなみにアシストするモーターは、最高出力が4.8kW(6.5ps)/1000rpm、最大トルクは61Nm(6.2kg-m)/100rpmのスペックだ。
◆トルクの出方や細さが改善され、痛快な加速を実現
アクセルを踏み込み、加速する。旧モデルも扱いにくくはなかったが、最新モデルは一段とスムースな変速と気持ちいい加速を披露した。クラッチミートした時のギアのつながり感が絶妙だから、キレのよい加速と滑らかな変速を引き出しやすい。旧型ではシフトアップした時にクラッチの断続によってトルク変動が生じ、ちょっともたつく感じがした。だが、アップデートした最新型はモーターのアシストがうまく働いているのだろう。クラッチを切った時にトルクが落ち込む弱点をモーターが上手にカバーし、気持ちよく伸びのよい加速を見せつける。
そこから先の加速も痛快だ。また、アクセルを戻した時や追い越しなどで再加速する時も、ドライバーの意思を賢く読み取ってくれる。今までも気持ちいいレスポンスを身につけていたが、トルクの出方や細さが気になる走行シーンが何度かあった。最新型はアクセルを踏み込むと、間髪を入れずトルクがスッと盛り上がり、力強い加速に移る。常用する2500回転前後のトルクは驚くほど豊かだ。最大トルクの発生回転は1500回転引き上げられているが、応答レスポンスがいいから逆に扱いやすくなったと感じられる。
10psのパワーアップより強く印象に残ったのが、常用域での豊かなトルク感だ。これまではディーゼルターボの分厚いトルクが魅力と感じていた。だが、それ以上に力強いトルクを感じさせ、ETCゲートを2速ギアで通過してからの加速も冴えている。もちろん、SKYACTIV-Xならではの高回転域のパンチ力と伸び感は健在だ。その気になれば6500回転まで無理なく引っ張ることができ、6速MTは小気味よい変速も楽しい。
ドライバーの意思に、さらに忠実に応答し、ドライバビリティもよくなっている。マツダが提唱する、操る楽しさと意のままの走りに磨きがかけられ、コントロールできる領域も増えたから6速MT車の魅力が広がった。今回のアップデートにより、ハイオクガソリンを使うSKYACTIV-Xの存在感と魅力が増したと言えるだろう。
◆足の動きが滑らかになり、舵の利きも向上
パワーユニット以外にも進化した部分がある。それはハンドリングと快適性だ。サスペンションなどに手を加えたことにより、足の動きが滑らかになっている。また、舵の利きもよくなった。これはアクセル操作に対して応答レスポンスがよくなったことも貢献しているのだろう。新しいSKYACTIV-X搭載車は、これまでと違いスポーティな走りが似合うクルマに成長している。
旧型と比べてサスペンションの動きがよくなり、リアの追従性も向上した。また、剛性も高いからホットな走りでも安心感がある。操舵レスポンスは、よりダイレクト感を増したように感じられ、軽やかにクルマが向きを変えた。荷重移動は速やかだから旋回しやすく、狙ったラインに乗せやすいのが最新のSKYACTIV-X搭載車だ。
静粛性に加え、乗り心地も上質になったと感じた。また、先進安全装備も使える装備へと進化している。アダプティブクルーズコントロールの車線維持は55km/hが上限だったが、高速域まで拡大しているのはうれしい改善だ。
もう1つ、うれしいニュースがある。このアップデートした進化版のプログラムが、新車だけでなく改良前のSKYACTIV-Xに乗っているオーナーにも提供されそうなことだ。マツダは早い時期の導入を検討している。無償でアップデートされればオーナーは大喜びするだろうし、SKYACTIV-Xの魅力も増すはずだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
軽量かつ高剛性のプラットフォームを開発し、パワートレインも一新した。また、理想の燃焼を追求したSKYACTIV-Xも遅れて発売されている。そして20年11月に定期的な商品改良を行い、走行性能と安全性を向上させ、マツダの自慢である「走る歓び」の進化を図った。
◆エンジンとトランスミッションを制御するソフトウェアをアップデート
ステアリングを握ったのは、マツダが世界で初めて実用化に成功した、独自の燃焼方式「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」とマイルドハイブリッド(Mハイブリッド)、そしてスーパーチャージャーを組み合わせた革新的な圧縮着火燃焼のガソリンエンジン、SKYACTIV-X搭載車である。その中から「ファストバック」を名乗る5ドアハッチバックのFF(前輪駆動)車、それも6速MT車を試乗に引っ張り出した。
どのくらい進化したのかを知るために、SKYACTIV-Xを搭載した旧型を同行させ、同じコースを走っている。ただし、こちらは4輪駆動のAWDモデルで、装着タイヤも違っていた。タイヤはどちらも215/45R18サイズだが、最新モデルはブリヂストンのトランザ、旧型はトーヨーのプロクセスだ。だが、多くの点で違いを発見した。
最大の注目ポイントは、SKYACTIV-X搭載車のエンジンとトランスミッションを制御するソフトウェアをアップデートしたことである。具台的には、シリンダー・プレッシャー・センサーによる燃焼フィードバック制御の精度を高め、応答性を向上させた。また、EGR(a/)の推定制御の精度を高め、旧モデルより多くの空気をシリンダーに送り込むことによってトルクと出力を向上させている。この2つに加え、エンジンとATの応答制御も最適化を図った。
旧型は、最高出力が132kW(180ps)/6000rpm、最大トルクは224Nm(22.8kg-m)/3000rpmだった。これに対し最新型では、それぞれ140kW(190ps)/6000rpm、最大トルクは240Nm(24.4kg-m)/4500rpmに増強されている。どちらも指定燃料はハイオクと呼ぶプレミアムガソリンだ。ちなみにアシストするモーターは、最高出力が4.8kW(6.5ps)/1000rpm、最大トルクは61Nm(6.2kg-m)/100rpmのスペックだ。
◆トルクの出方や細さが改善され、痛快な加速を実現
アクセルを踏み込み、加速する。旧モデルも扱いにくくはなかったが、最新モデルは一段とスムースな変速と気持ちいい加速を披露した。クラッチミートした時のギアのつながり感が絶妙だから、キレのよい加速と滑らかな変速を引き出しやすい。旧型ではシフトアップした時にクラッチの断続によってトルク変動が生じ、ちょっともたつく感じがした。だが、アップデートした最新型はモーターのアシストがうまく働いているのだろう。クラッチを切った時にトルクが落ち込む弱点をモーターが上手にカバーし、気持ちよく伸びのよい加速を見せつける。
そこから先の加速も痛快だ。また、アクセルを戻した時や追い越しなどで再加速する時も、ドライバーの意思を賢く読み取ってくれる。今までも気持ちいいレスポンスを身につけていたが、トルクの出方や細さが気になる走行シーンが何度かあった。最新型はアクセルを踏み込むと、間髪を入れずトルクがスッと盛り上がり、力強い加速に移る。常用する2500回転前後のトルクは驚くほど豊かだ。最大トルクの発生回転は1500回転引き上げられているが、応答レスポンスがいいから逆に扱いやすくなったと感じられる。
10psのパワーアップより強く印象に残ったのが、常用域での豊かなトルク感だ。これまではディーゼルターボの分厚いトルクが魅力と感じていた。だが、それ以上に力強いトルクを感じさせ、ETCゲートを2速ギアで通過してからの加速も冴えている。もちろん、SKYACTIV-Xならではの高回転域のパンチ力と伸び感は健在だ。その気になれば6500回転まで無理なく引っ張ることができ、6速MTは小気味よい変速も楽しい。
ドライバーの意思に、さらに忠実に応答し、ドライバビリティもよくなっている。マツダが提唱する、操る楽しさと意のままの走りに磨きがかけられ、コントロールできる領域も増えたから6速MT車の魅力が広がった。今回のアップデートにより、ハイオクガソリンを使うSKYACTIV-Xの存在感と魅力が増したと言えるだろう。
◆足の動きが滑らかになり、舵の利きも向上
パワーユニット以外にも進化した部分がある。それはハンドリングと快適性だ。サスペンションなどに手を加えたことにより、足の動きが滑らかになっている。また、舵の利きもよくなった。これはアクセル操作に対して応答レスポンスがよくなったことも貢献しているのだろう。新しいSKYACTIV-X搭載車は、これまでと違いスポーティな走りが似合うクルマに成長している。
旧型と比べてサスペンションの動きがよくなり、リアの追従性も向上した。また、剛性も高いからホットな走りでも安心感がある。操舵レスポンスは、よりダイレクト感を増したように感じられ、軽やかにクルマが向きを変えた。荷重移動は速やかだから旋回しやすく、狙ったラインに乗せやすいのが最新のSKYACTIV-X搭載車だ。
静粛性に加え、乗り心地も上質になったと感じた。また、先進安全装備も使える装備へと進化している。アダプティブクルーズコントロールの車線維持は55km/hが上限だったが、高速域まで拡大しているのはうれしい改善だ。
もう1つ、うれしいニュースがある。このアップデートした進化版のプログラムが、新車だけでなく改良前のSKYACTIV-Xに乗っているオーナーにも提供されそうなことだ。マツダは早い時期の導入を検討している。無償でアップデートされればオーナーは大喜びするだろうし、SKYACTIV-Xの魅力も増すはずだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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