ホンダ N-ONE 新型試乗 2週間で450km、乗り比べてわかったターボとNAの違い…中村孝仁

  • ホンダ N-ONE プレミアムツアラー
ホンダN-ONE』のターボ車とノンターボ(NA)車を、それぞれ1週間づつ乗り比べてみた。ノンターボは「オリジナル」、ターボ車のグレードは「プレミアムツアラー」である。

軽自動車の使い方は主として街中、あるいは郊外の一般道が多いとの想定で、高速はあまり走らず、もっぱら一般道でその走りの差を比較してみた。結論から言うと、ターボ車はレッドブルではないが、「翼を授かった」クルマであった。


◆ターボ車とノンターボ車の間にある性能の溝

以前から、軽自動車のターボ車とノンターボ車の間にはかなり大きな性能的な溝があって、特にそれが高速道路などでは顕著な差となって表れたものだが、今回先に乗ったノンターボ車では、驚くほどその性能が改善されていて、高速に乗っても非力さを感じさせるところがあまりなかった。

勿論、主眼に置いていたのが一般道路での使い勝手だったので、高速走行区間が短く、特に登坂部がなかったから非力さを味わうことがなかったのかもしれない。いずれにせよ、N-ONEのポテンシャルは、ノンターボであっても性能的にはそれほど不満を感じるものではないと結論付けていたのだが、ターボ車に乗るとやはりその差は歴然であった。

正直なところ、今回のN-ONEは改良のためのリソースをネガ潰しに使っていると言って過言ではなく、デザインは基本ほぼ何も変えていないからもっぱら乗り心地や静粛性といったところにリソースの多くを費やしている印象が強い。

エンジン性能は変わっているわけではないのだが、例えばCVTの最適化などを行ったり、ターボエンジンでは電動ウェイストゲートバルブを採用するなどして、レスポンスの向上を図った結果、従来と比較して判で押したような64psという絶対値や最大トルクなどに変化はないものの、パーシャル領域での改善があったのか、従来車よりもスイスイと走る印象は間違いなく向上している。

それがノンターボ車の印象を押し上げていたのだが、こうした改善は当然ながらターボ車にも当てはまって、別に競争をしているわけではないのだが、信号待ちからなどの加速では明らかに他の普通車よりも前に出る確率が高かった。勿論アクセルの踏み込み具合は至って普通で、でもだ。


◆「オリジナル」と「プレミアムツアラー」の違い

オリジナルとプレミアムツアラーを比較すると、まず外観が違う。グリルなどのデザインが異なりオリジナルがグリルの存在を消したデザインなのに対し、プレミアムツアラーはクロームで縁取られた立派なグリルを持つ点が異なる。また、性能に合わせてタイヤサイズもオリジナルの14インチから15インチに引き上げられ、ホイールはテッチンからアルミに、タイヤはオリジナルのダンロップ・エナセーブからブリジストン・エコピアに変更された。

エコピアというタイヤはてっきり低燃費タイヤだと思いこんでいたが、確かに低燃費を標榜してはいるものの、今やブリジストンのフラッグシップタイヤに登りつめているのには驚いた。つまり総合性能で最も優れているのがこのエコピアだというわけである。

タイヤの影響のよるものかあるいはサスペンションのチューニングが異なるためかはエンジニアと話しをしていないために定かではないが、やはりこのプレミアムツアラーの方がオリジナルと比べて若干ではあるが乗り心地に硬さを感じた。といっても、NVHの収め方などは軽自動車の域を確実に超えて、小型車に近い…否、下手な小型車よりははるかに良い。

さすがに燃費の方はノンターボより悪く、あくまでも車載コンピューターの表示によれば、おおよそ200km走ったオリジナルが17.0km/リットル、250km走ったプレミアムツアラーが15.2km/リットルであった。走行シーンはほぼ変わらず、使った高速道路の距離は一緒である。こと燃費に関していえば、やはり今時のハイブリッド車に軍配が上がるようだ。


◆ターボを選ばずともN-ONEの良さは味わえる

冒頭に述べた通り、性能差は顕著である。ただ、以前と違うのはノンターボ車に我慢を強いたドライビング状況が少なくなった(恐らく登坂路や高負荷時では我慢を強いられる可能性はある)。ターボ車は明確な加速時のアドバンテージがあることと、パーシャルからの加速で普通車並みの瞬発力を披露するシーンもあり、マニュアルギアボックスが用意される「RS」グレードでは面白い走りが期待できるのではないかと思われた。

個人的には敢えてターボを選ばずとも十分にN-ONEの良さは味わえると感じる。しかも内装などはオリジナルとプレミアムでほとんどその差はない。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める
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