ルノー キャプチャー 新型試乗 欧州一売れているSUV!その実力とは…南陽一浩

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◆なぜ欧州でキャプチャーが売れているか

昨年2020年の欧州でのモデル別の販売台数を見ると、8代目の投入効果も手伝ってVW『ゴルフ』が28万6000台強を売り上げ、相変わらず不動の1位。以下2~5位まではすべて、ひとクラス下のBセグ・ハッチバックが28万台弱~18万台半ば規模で続く。そして総合6位でクロスオーバーSUVとして第1位となる18万台強を記録したのが、2月25日から日本で発売されるルノー『キャプチャー』、その2世代目だ。

FFベースのクロスオーバーSUVの成否は当然、ベースとなるハッチバックモデルの出来映えにかかっている訳だが、じつは総合2位のハッチバックというのは、日本市場で先に発売されているルノー『ルーテシア』。キャプチャーとは同じCMF-Bベースを共有するので、プラットフォームで数えるとじつに46万台近くに達する。

ライバルのプジョー『208』+『2008』は38万台強、新車効果は薄れつつあるVW『ポロ』+『Tクロス』は28万5000台ほど。欧州でルーテシア(現地名『クリオ』)は2020年を通じて何度かゴルフを単月では上回るほどで、日本でも好評を得ているのは周知の通り。だからこそ新しいキャプチャーは、高い注目度と期待に値する一台なのだ。

新型キャプチャー、ひいてはフランス車のBセグでの勢いには、Cセグに対するBセグ全体の優勢ぶりが底にある。ハッチバックで全長約4m、SUVなら約4.2mが定石となったBセグは、サイズ的にCセグからの乗り換え候補に挙がりやすい。その意味でCセグの敵はもはやCセグですらない。少し余裕あるサイズ感とインテリアで、上位セグメントからダウンサイザーを取り込む手法は数年前からEセグやDセグ、Cセグでも起きていたことだ。その動きがBセグにまで来たのだ。


◆気前よく、でも質感は高く

以上を前提にキャプチャーの外寸を見ていくと興味深い。4230×1795×1590mmというボディサイズは先代比で、全長が95mm、全幅は 15mm、全高は5mm拡大。ホイールベースも2640mmと35mm延ばされた。実車を前にした第一印象はやや大柄に感じるものの、幅が1800mmの大台にのらなかったせいか、街での取り回しは意外と難しくない。

むしろ拡がった分が後席の足元スペースや、荷室容量の広さに直結している。何せトランク容量はBセグ随一の536リットルで、ゴルフ7が380リットルであることを思えば、器の大きさというより大盛りの気前よさながら、圧倒的だ。リアシートは3座まとめてだが前後に16cmほどスライド可能で、荷室フロアはフラットではないが容量的にワゴンキラーでもある。

観は初代キャプチャーのシルエットを継承しつつ、識別点となるのは、サイドウィンドウ下端のラインを強調するクロームモールと、同じくクロームのドアプロテクション。またフロントに回れば、バンパー両端には整流効果を狙ったディフレクターが設けられ、ホイールハウスの中からボディサイドへとエアを抜く。

100%LED化されたヘッドライトや、最近のルノーお約束でCシェイプとなるデイタイムランプと同様、リアのライトセクションもCシェイプで統一される。ツートンカラーを成すフローティングルーフはそのままフロントマスクやサイドプロフィールなど全体的に質感をより高めたデザインといえる。

だがキャプチャーの本領は内装インテリアにある。とくにルノーが「スマートコクピット」と名づけた前席周りは、水平基調のダッシュボードとフレームレスルームミラーによって、高い着座位置による視界の広さを目いっぱい活用。エアコンの3連ダイヤルをはじめ、シフトレバーと操作系の配置やエルゴノミーは自然だし、その下はシフトがバイワイヤであることを利して、宙に突き出る「フライング・センターコンソール」だ。このセンターコンソールまでもが、レザーやソフトパッドで入念に柔らかい触感で包まれる。BセグどころかCセグでも内装のサボりどころなので、Bセグの静的質感としてちょっとした事件でもある。

ちなみに「インテンス テックパック」という装備充実グレードではコンソール下の収納トレイはQi規格のワイヤレス充電機能が備わる。その下の「インテンス」はレザーの電動パワーシートではなくなり、レーンセンタリングアシストも省かれるが、ボディカラーにオレンジを選ぶとインテリアに貼られるソフトパッドも鮮やかなオレンジ・メタリックとなる。折角SUVなのだから外観同様、ぜひ冒険してみることを薦めたい。


◆独特の余裕がある動的質感

肝心の走りについては、首都高レベルの速度で車体をフラットに保つことにかけては、ハッチバックのルーテシアに譲る。だが高めの速度域でも、吸いつくようなフットワークにしっとりしたハンドリングはSUV離れしているし、静粛性もすこぶる高い。1310kgという車重から想像するより、落ち着いた乗り心地だ。

ハッチバックのルーテシアと同じ直4・1.3リットルターボに7速EDCの組み合わせだが、スペック的には+23psの154psかつ30Nm上回る270Nm仕様。体感的には1割増し程度のトルクやパワー感だが、余裕はある。ロングホイールベースと足回りのストロークの長さゆえ、タッチスクリーン内でステアリング設定を「コンフォート」にしてスロー気味にする方が、車のキャラクターにあった動的質感になったと感じた。
難点は駐車時、ダブルクラッチ特有のギクシャク感は抑えられているが、前後の切り替えで少し遅れを感じる時がある。もうひとつはフランス車乗り限定の話だが、ルノー車のステアリング裏8時辺りにステアリングポストから生えていたオーディオの操作リモコン、PSAの車ではクルーズコントロール操作に充てられていたものが無くなり、ADAS関連はステアリングホイール上のボタン配置で日産車と限りなく近くなった。

とはいえ国産車からの乗り換えの人には歓迎されるだろうし、299万~319万円という価格帯含め、そうなるべき車であることは確かだ。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。
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