BMW 2シリーズグランクーペ 新型試乗 “走り屋”にはストライクな「Mスポーツ」…中村孝仁
前回ディーゼルエンジン搭載の『218dグランクーペ』に試乗した時に「お金があればこいつを日常の足にしたい」と思ったことを告白した。
その意味するところは、とにかくサイズ感が良くてBMWはFRでなきゃ…と言うこれまでの常識を覆してくれた見事な走りである。この2点が日常使いにはもってこいだと思われた。今回はガソリンエンジン搭載車に乗ってみたのだが、印象はいささか違った。
◆女房もビビっときたポイントは…
しかし、同じように「お金があればこいつを日常の足にしたい」と感じた人が、我が家にはもう一人いた。我が女房である。彼女は白い218dグランクーペを持ってきた時はほぼ無反応だったのだが、今回の『218iグランクーペ Mスポーツ』は、ビビッと来たようである。
彼女を夢中にさせたのはそのボディカラー。「ストームベイ」と名付けられたグレーのボディカラーだが、どうやらこいつにやられたようだ。だから、いくら以前白の同じクルマに乗ってきたぞと話しをしても聞く耳を持たずというか、とにかくカッコいいの連発。色の違いだけでこれほどクルマに関する印象が変わるのだから…なんだかなぁと感じてしまった。ただ、そうは言っても確かに良い色で、一見ソリッドカラーに見えるのだが、調べてみるとこれはメタリックなのだそうである。
それにシートも良い。アルカンタラ仕上げのヘッドレスト一体型のハイバックスポーツシートがフロントに装備されるが、青のステッチを入れ、タグのように赤と青というBMWモータースポーツ伝統の配色をあしらい、しかもこいつがシートベルトにも入れられていて、BMW好きには相当に好感度が高いのではないかと思われた。見た目にはかなりサポート性がよさそうに見えるが、それはそこそこ。十分に快適性が担保された個人的には好みのシートであった。
◆「Mスポーツ」ならではのステアフィール
「Mスポーツ」といっても搭載されるエンジンはミニと同じ1.5リットルの3気筒。そしてディーゼルと違って、トランスミッションはステップATではなく、7速DCTが採用されているのだが、今やそれがステップATとほとんど差がないほど緻密な制御がなされていて、DCTであることは仕様書を見るまで気付かないレベルである。
パワーに関していえば、頼りなさは全く感じないが、回転が上がっていった時は独特のサウンドを奏で、何となくどうなのよこれ?というイメージになる。時代は変わって今やこれが当たり前ではあるのだが、ハイエンドカーだぞ!という前時代的な考えが抜けきらない。
Mスポーツはサスペンションも異なっていて、ローダウンサスペンションが装備される関係から、乗り心地はそれなりに硬さを残す味付けとなっているが、かといって快適性は損なわれていない。しかもその硬さは却ってボディの強さを印象付けるガッシリ感をも演出する。
やはり印象的だったのはそのステアフィールだろう。足が固められたからなのか、ディーゼルに乗った時よりも遥かにシャープな印象で、攻めのドライビングをした時には非常に頼りがいのあるフィーリングである。
◆エレガントさを求めるならノーマルの218iで十分
今やセダンというボディ形式は本当に人気薄になってしまったが、少なくとも2ドアクーペよりは実用性が高く、しかもグランクーペの場合はそのクーペ風スタイリングを持っていて、デザイン的にもパーソナル感が強く趣味と実益を兼ねるからまあ最高の落としどころといえなくもない。
もっともその形からも想像できるように多少のネガ要素はあって、それは後席の居住空間に制約を受けることだ。やはりなだらかに下るルーフラインの影響を受けて、ヘッドクリアランスはミニマム。4人乗車なら何とかなるが、定員いっぱいになると後席中央は頭がルーフに当たってしまう。
BMWの各車種は、Mスポーツの人気が高いと聞くが、敢えてMスポーツをチョイスするとやはり相当に走り屋のドライバーへのアピールを狙ったクルマになっていて、シャープなステアリングだったり、やや硬めの足回りだったりはそうしたドライバーに対してはどストライクのような気がするが、エレガントさを求めるならノーマルの218iで十分。そして改めて日本の道路にはこのサイズが最も適していると感じられた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
その意味するところは、とにかくサイズ感が良くてBMWはFRでなきゃ…と言うこれまでの常識を覆してくれた見事な走りである。この2点が日常使いにはもってこいだと思われた。今回はガソリンエンジン搭載車に乗ってみたのだが、印象はいささか違った。
◆女房もビビっときたポイントは…
しかし、同じように「お金があればこいつを日常の足にしたい」と感じた人が、我が家にはもう一人いた。我が女房である。彼女は白い218dグランクーペを持ってきた時はほぼ無反応だったのだが、今回の『218iグランクーペ Mスポーツ』は、ビビッと来たようである。
彼女を夢中にさせたのはそのボディカラー。「ストームベイ」と名付けられたグレーのボディカラーだが、どうやらこいつにやられたようだ。だから、いくら以前白の同じクルマに乗ってきたぞと話しをしても聞く耳を持たずというか、とにかくカッコいいの連発。色の違いだけでこれほどクルマに関する印象が変わるのだから…なんだかなぁと感じてしまった。ただ、そうは言っても確かに良い色で、一見ソリッドカラーに見えるのだが、調べてみるとこれはメタリックなのだそうである。
それにシートも良い。アルカンタラ仕上げのヘッドレスト一体型のハイバックスポーツシートがフロントに装備されるが、青のステッチを入れ、タグのように赤と青というBMWモータースポーツ伝統の配色をあしらい、しかもこいつがシートベルトにも入れられていて、BMW好きには相当に好感度が高いのではないかと思われた。見た目にはかなりサポート性がよさそうに見えるが、それはそこそこ。十分に快適性が担保された個人的には好みのシートであった。
◆「Mスポーツ」ならではのステアフィール
「Mスポーツ」といっても搭載されるエンジンはミニと同じ1.5リットルの3気筒。そしてディーゼルと違って、トランスミッションはステップATではなく、7速DCTが採用されているのだが、今やそれがステップATとほとんど差がないほど緻密な制御がなされていて、DCTであることは仕様書を見るまで気付かないレベルである。
パワーに関していえば、頼りなさは全く感じないが、回転が上がっていった時は独特のサウンドを奏で、何となくどうなのよこれ?というイメージになる。時代は変わって今やこれが当たり前ではあるのだが、ハイエンドカーだぞ!という前時代的な考えが抜けきらない。
Mスポーツはサスペンションも異なっていて、ローダウンサスペンションが装備される関係から、乗り心地はそれなりに硬さを残す味付けとなっているが、かといって快適性は損なわれていない。しかもその硬さは却ってボディの強さを印象付けるガッシリ感をも演出する。
やはり印象的だったのはそのステアフィールだろう。足が固められたからなのか、ディーゼルに乗った時よりも遥かにシャープな印象で、攻めのドライビングをした時には非常に頼りがいのあるフィーリングである。
◆エレガントさを求めるならノーマルの218iで十分
今やセダンというボディ形式は本当に人気薄になってしまったが、少なくとも2ドアクーペよりは実用性が高く、しかもグランクーペの場合はそのクーペ風スタイリングを持っていて、デザイン的にもパーソナル感が強く趣味と実益を兼ねるからまあ最高の落としどころといえなくもない。
もっともその形からも想像できるように多少のネガ要素はあって、それは後席の居住空間に制約を受けることだ。やはりなだらかに下るルーフラインの影響を受けて、ヘッドクリアランスはミニマム。4人乗車なら何とかなるが、定員いっぱいになると後席中央は頭がルーフに当たってしまう。
BMWの各車種は、Mスポーツの人気が高いと聞くが、敢えてMスポーツをチョイスするとやはり相当に走り屋のドライバーへのアピールを狙ったクルマになっていて、シャープなステアリングだったり、やや硬めの足回りだったりはそうしたドライバーに対してはどストライクのような気がするが、エレガントさを求めるならノーマルの218iで十分。そして改めて日本の道路にはこのサイズが最も適していると感じられた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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フットワーク:★★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来43年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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